過去短編 | ナノ




あなたのせいで





『平助ぇー!』


朝。お隣さんの家へ行き、幼なじみの平助を起こしに行くのは日課。毎日毎日行っている。

全く、毎日行っているこっちの身にもなってほしいものだ。


『起ーきーろー』

「んー…」

『遅刻するー』

「おー…なまえ…はよ…」

『おはよ!あと2分で起きないと遅刻だよ!』

「もう少し…」


これってずっと起きないパターンじゃない?!それは困る。遅刻して怒られるのは私もだから。そんなリスクを犯してまで一緒に行きたい理由はただ一つ。


『(畜生…寝顔可愛すぎる…っ)』


っと、そんなこと考えている暇はない。


『いや、まじで遅刻するから!』

「なまえ…」


ぎゅ。


『なぁっ?!』


ななななな何してんだこいつ!ぎゅって、抱きつ…えぇえぇぇええええええ???!


『へ、へい、平助!おき、起きてください…!』


どもるわ、顔は真っ赤だわ、どうしたらいいかわからないわで動きが挙動不審。
だって仕方ないってか!


『お願い…起きてぇ…!』

「んぅ…え…あれ?…なまえ…?うぇえ?!」


ご、ごめん!って謝ってくるからにはわざとじゃないんだろうけど…。心臓に悪いわ…。


『いいから…支度して…』

「え?うっわ!時間やべぇ!」


もう気力も元気も覇気も何もかもを吸い取られた私は、正直遅刻なんてどうでもよかった。


『はぁ…』


平助の支度が終わり、急いで玄関を飛び出す。飛び出したところで平助の足が止まって。何してんだろうって思ったら。


「さっきの慌てて真っ赤にしてるなまえ可愛かったぜ」


わ ざ と だ っ た。
ニヤって笑って言って、そして、ダッシュ逃げたあいつ。言い逃げよくない。


『ば、馬鹿平助!』


学校行って顔赤いって言われたら、全速力で走ったからと言っておこう。




確信犯は逃げる
「おせーぞ!」
『誰のせいだと思ってんだ!』
「あれ?平助君、顔赤い…?」
「は、走ったせいだ!」
『…ぷぷ』













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