過去短編 | ナノ




我が儘王子降臨




夕陽が覗く夕方、黄昏の時間にひっそりと悪魔が笑う。

「君、名前は?」

私の目の前には学校でも有名中の有名、沖田総司が私に話しかけている。嘘だ嘘だ嘘だ。こんな平凡で有名の“ゆ”の字もかすらないような私を視界に入れるなど。

『え、あの、わ、私ですか?』

「君以外に誰がいるの」

確かに。今は放課後で、残っているのは私たちだけだろうってぐらい静かで。要するに私の周りには人がいないのだ。1人を除いて。
そもそも何故こんなことになったかと言うと、今日の運のせいになるのだが。

今日は運悪く席替えで廊下側になり、運悪く日直で新しい席順を作らなくちゃいけなくて、運悪く同じ日直の人が休みだった。この運の悪さが重なり、結局ここまで残るはめになったのだ。ある意味、沖田総司に会ったのも“運悪く”だろう。
しかし、沖田総司は逆のようで、今日は運の良い日なんだそうだ。だから、私にあったのも“運良く”と言うわけで。

「ねぇ、人の話聞いてる?早く答えないと殺すよ」

何を物騒なことを言っているんだ。この王子様は。だが、目が!目が笑っていない!口元は怖いぐらい三日月を形作っているのに。言わなきゃ殺される、もう本当にそんな感じ。

『みょうじ…なまえ…』

「なまえちゃんね。じゃあ今から僕の彼女だから」

『は…え…?』

じゃあ、の意味がわからない。つか何を考えているのかすらわからない。彼女?冗談?いや、これは悪い夢だ。右ほっぺを抓ってみる。うん、痛い。

『夢…じゃない…』

「頭大丈夫?」

毒舌だ。こんな綺麗な、それこそ見ほれるような整った顔をしてるのに勿体ない。実に勿体なさすぎる。

「なまえちゃんって結構失礼だね」

『沖田総司さん。あなたが変なこと言うからです』

どうしてくれるんですか、と言えば「うーん…」と考えた後出てきた答えは、

「僕の彼女になればいいよ」

どうしても、彼が私を彼女にしたい理由が見つからない。寧ろ、疑問しか出てこない。つか、あなたの彼女になったら、私が殺されますよ。あなたのファンに。それだけは避けたい。

「大丈夫だよ。僕が守ってあげるから」

この人は人間だろうか。否、人間の皮を被ったモンスターだろう。だって、人の心を読めるとか、一瞬にして言葉で心臓を撃ち抜くとか、人間の出来る技じゃない。

「ははっ!変な顔!」

『沖田総司さん…私に関わる理由はなんですか』

「好きだから」

『いつから』

「さっき」

もう唖然とするしかなかった。




一目惚れって信じる?
「僕は信じるよ」
『言葉がでてきません。ノーコメント』
「なまえちゃんにはおしおきが必要みたいだね」
『すんごい嫌な予感しかしない』













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