過去短編 | ナノ




クリスマス




『真弘先輩ー!クリスマスです!リア充共の浮かれ日です!』

「後半悲しいなっ!」

『うふふ…本当ですよね…爆破すればいいですよね…』

「それも怖ぇ…」


12月25日、クリスマス。
恋人がいない、しかも片思い中の私にはチャンスでもあり、寂しい日でもある。

だが、チャンスなどやって来ないとわかっているので、必然的に後者になってしまう。


『さ、珠紀ちゃん家にケーキ作りに行こーっと』

「え、ケーキ作れるのか?」

『作れますー』


なんだ、その信じられないような目は。


『私だって料理ぐらい出来るんだから』

「まぁ、美鶴がいるから安心か…」

『残念、ケーキ作るのは私だけ。後の2人はご飯組です』

「うっわ!まじかよ!」

『…真弘先輩は食わなくていいですよ』

「嘘だって!」


ふくれっ面で帰路を歩く。

好きな人にそんなこと言われると頭にくるより悲しくなる。

真弘先輩が好きなのは珠紀ちゃんだってことも知ってるし、叶わない恋なのも知ってるんだけどね。


『諦めが悪いなぁ…』

「何が諦め悪いの?」

『うわっ珠紀ちゃん!びびった!』


後ろにいたとはつゆ知らず。
なんて言い訳しようか迷っていた。


「もしかしたら真弘先輩のこと?」

『えぇ?!んなこと、ねぇ?』

「ふふっわかりやすいな」

『えぅ…』


なんかもう、最悪なクリスマスですね…。
穴の中で冬眠したいわ…。


「大丈夫だよ、頑張って?」

『頑張って…?』

「うん、なまえちゃんなら」


何が大丈夫だと?
真弘先輩は珠紀ちゃんのことが好きなのに。
珠紀ちゃんの前では真弘先輩は顔を真っ赤にさせて話しているのに。


「行こ?」

『う、うん!』


あぁ吐きそうだ。
誰か、この気持ちをどうにかしてくれ。


「なまえ、ちゃん…?」

『え…?』


我に返ると頬に雫が伝っていて、泣いているとわかると私は一目散に逃げた。

そのまま珠紀ちゃんといると全てが爆発しそうで。


『私、最悪だな…』


こんな時まで貴方を想うの。
苦しくて苦しくて、胸が張り裂けそうなんて嘘じゃなかった。


「ーっ!」


ほら、真弘先輩の声が聞こえる。


「なまえっ!」


どんどん近くにくる。

やめて、幻聴が、


「なまえっ何やってんだ!」

『あ、れ…?現実…?』


「何がだっ!珠紀から聞いて、」


また珠紀ちゃん、か。


『私なら平気だから、珠紀ちゃんのとこ行きなよ』

「平気なわけないだろっしかもなんで珠紀なんだ」

『だって先輩は珠紀ちゃんのことが好きなんでしょう?』

「…はぁ?何勘違いしてんだよ」

『え?』

「俺が好きなのは、なまえ、だ」

『へ、嘘』

「嘘じゃねぇ」


思考がまるっきりついてこない。
誰が?誰を?好きって?


「おまえが好きだ」

『なん、えぇー?』


気付いたときには真弘先輩の腕の中で、その温もりが私に現実だと教えてくれている。


『ま真弘先輩…大好きですー…っ』

「な…っ!あ、あぁ…」


リア充になったクリスマス

(珠紀ちゃんとは何話してたの?顔真っ赤にしちゃってさ)
(それは…なまえのこと聞いてたんだよ…)





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クリスマスネタ第二弾。
ちょい長くなりました。
…リア充なんて…。












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