きおくをたべられるはなし

私は全てを失ったのだ。と、自己確認する。
友達、親、兄弟、先生、近所のお姉さんとお兄さん。おばさんにおじさんにおじいちゃんにおばあちゃん。
みんな居なくなってしまった。
私の記憶から、全部抜け落ちてしまった。
目の前に居る大人は私の両親なのだという。
でも私は知らない。
そう言うと女の方が泣き出してしまった。男の方は何ともいえない複雑な表情をした。
そして、男の方が誰かを部屋に招き入れる。
私はその男の名前を知っていた。どんな性格か、どんな風に一緒に過ごしていたのかを知っていた。
「露伴先生」





君の記憶を消したのは僕のスタンドだった。
どうしても君を手に入れたかった。だから僕のスタンドで君の記憶から全ての人間関係を削除した。
僕を見てほしかった、僕を見てほしかった、僕を見てほしかった。たったひとり、僕だけを。
どうやらそれは成功したようで、しかも彼女は僕を恋人だと『知っている』。
僕が書き変えた記憶はそのまま、彼女の記憶になっている。
完全に彼女は僕の思い通りになってくれた。
僕を見てくれている。僕だけを。他らなぬ僕を。
「露伴先生」
その声は僕以外を紡ぐ事はない。そして、僕以外が彼女の名前を口にする事はない。何故ならば、僕は彼女に関わっていた人間全ての記憶から彼女を消したからだ。
これで全部僕のもの。僕のための彼女で、彼女のための僕である。

うん、割と上手くいったな。
我ながら満足した。

2013/07/12 00:23



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