規則は守るためにある | ナノ
過去の代償



 校門を出たところで珍しい組み合わせに出会った。

「おっす。みょうじ」
「丸井、それに柳生…」
「部活やってねぇのに随分と遅い帰りだな」
「そのうちやる校紀検査を代表者だから忙しくて」
「へー。つか、柳生は手伝わなくていいのかよ?」
「みょうじさん以外の委員はサポート役に回るだけですので」
「んなもんか。…あ!比呂士、俺のついでにみょうじにも奢ってやれよ」
「え、」

 丸井はにやにやと柳生に笑いかけ、肘で柳生の脇腹をつつく。ちらりと私に寄せた眼差しが意味あり気に弧を描いていた。

「いや、悪いし、いいよ。奢ってもらうなんて」
「遠慮すんなよ。一人で仕事やってたならご褒美も必要だろい」
「奢るの柳生なんでしょ…」

 いいじゃん、なー?と柳生に肩を回して言う丸井。自分が奢るわけではないから簡単に言ってくれる。

「――私は別に構いませんよ」

 やんわりと肩に乗る丸井の手を払いながらそう言い、私の耳元に顔を近づけて、丸井に聞こえないように小さく呟く。

「放課後デート、ですね」

 妖しく微笑む柳生にあいた口が塞がらない。だけど私はなぜか冷静に丸井もいるよ、と声に出していた。

「ならば、今度是非別の日に」
 
 柳生は私の手を優しく掴み、少しだけ力を入れる。

「…おーい。俺のこと忘れられちゃ困るぜい」
「すみません、丸井くん。では行きましょうか」

 そのまま手を引かれ、私は丸井たちについていくことになった。





「ところで何を奢ってもらうの?」

 丸井に聞いて見れば、顔をしかめてメロンパンと一言答えた。

「ああ…仁王に取られたやつか…」
「はあ?仁王じゃなくて比呂士だし」
「……、その節は本当に…」

 仁王は柳生に化けて丸井のメロンパンをかっさらっていった。丸井は未だに騙されたままらしく、取られたメロンパンの責任を柳生に取ってもらうつもりらしい。

「やっぱり私、今日はやめておくよ」

 柳生のせいでないのに丸井に奢る羽目になって、さらに流れで私に奢ることになるなんてあんまりだ。

「遠慮しないでください。私があなたに奢って差し上げたいんですから」
「でも…」
「それに、私の家の近くのパン屋さんのメロンパンはとてもおいしいんですよ」
「そーそー。もらえるもんはもらっとけ。つか、みょうじ来ないならお前の分も俺が喰うし」

 あー、腹減ったー
 ずんずん進む丸井に柳生はふふふと含み笑いをもらす。

「気遣ってもらったのかな」
「おそらくそうでしょう。ああ見えて丸井くんは一家の長男ですからね。――そしてみょうじさんは来てくださるのでしょうか?」
「うん、丸井に2個も食べさせたら、真田にたるんどるって丸井が怒られちゃうだろうからね」

 クスクスと二人で笑う。私は丸井と柳生の優しさに心が暖かくなった。

「おーい!早くこねえーと、店にあるやつ全部食って、柳生に請求書押し付けるぞー!!」

 丸井の大声にまた二人で笑いあってから、私たちは前へと進み出した。



(20121014)
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