私は焦燥感に包まれていた。
丸井くんから真田くんとみょうじさんが二人っきりで生徒会室にいると聞いて居ても立ってもいられなかった。
二人が付き合っている
そんなことがありえないのは分かっている。みょうじさんの真田くんへの憧れは至極純粋なもので、それは真田くんのみょうじさんへの信頼にも言えることだ。
でも、万が一その気持ちが些細なことで違うものに変わってしまったら?
私は自分に問いかける。
喜ばしいことじゃないですか、誰かと誰かが交際をする。愛が育まれるのは素晴らしいこと。
あぁ、なのに、どうして私の気持ちはこんなにもどろどろしているのか。
二人の幸せを想像するだけで黒い感情がどんどん沸き上がってくる。私は最低なやつだ。でも止められない。
「柳生」
聞きなれた声に振り替えれば、そこには夕日色に染まった銀髪。
仁王くん、と想像以上に消え入りそうな声が出た。プリッとお決まりの返事が返ってくる。どうしてここに、と疑問が頭をもたげたが、質問する前に仁王くんが話し出した。
「よう考えてみんしゃい」「一体何を…」
「柳生の気持ちじゃ」
「私の…」
仁王くんに言われて自分の気持ちに向き合ってみる。でも答えはひとつしかなかった。
私は、二人が付き合ったとしたらそれを手放しで喜べない。
「それが答えじゃろ。怖がることはなか、自分でそれを認め、享受し、あとはみょうじにぶつければいい」
「私は、…」
「そう、柳生は」
「みょうじさんが好き」
仁王くんらわざとらしくため息をついて、肩をすくめた。
「やっと認めたかのう」
「仁王くん、もしかして今までのは…」
「さあ?…全部ただの気まぐれじゃ。――ほれ、早く生徒会室に行きんしゃい」
「はい!ありがとうございます」
私はみょうじさんにこの気持ちを伝えるために生徒会室へ走った。
たとえ、あなたが私のことをなんとも思ってなくとも、やっと気付けたこの気持ち。結果なんかどうだっていい。私は今それを伝えたいのです。
「ったく…世話の焼けるやつらぜよ…」
友人Mはにやりと愉しそうに笑った。
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20120721