ミックスマインド
ラテン系の血を引き継いでいる温和なそいつは相当見つけやすい。
彼の隣を見れば、丸井はおらず、暇を持て余しているように見えた。ならば!
「ジャッカルー!奢ってー」
「…なまえ!?」
ジャッカルが一度捕まればもうこっちのもの。お前の運命は私が握ったり。
にやにや笑う私にジャッカルは引きつった笑みを浮かべるが、もう遅い。
*
「はあ…俺の財布事情になりふり構わずブン太と赤也は集ってくるし、終いにはお前かよ」
ぼやきながらも奢ってくれるジャッカルはとても優しい。私はジャッカルのそういうところが大好きだ。
自販機の前に立ち、ジャッカルは渋々とポケットから財布を出そうとする。
けれどそれよりも早く自然な動きで財布から100円玉を取り出した私は、自販機へ挿入。
呆気にとられるジャッカルに「何飲みたい?」と聞けば、「ミックスオレ?」と疑問系で返ってきた。「お、私もミックスオレ大好き」ジャッカルと好みが被っていたことがなんだかうれしかった。
ガタンッ
「はい、お望みのミックスオレ」
私が自販機からジュースを取り出してジャッカルが受け取った頃にようやく状況を理解したのか、「は?」とジャッカルは呟いた。
「奢り」
「え?だって奢んのは俺で、…え?」
「いつも丸井と後輩君に奢らされているジャッカルに私からのプレゼント」
「そ、うか…」
手元のミックスオレが信じられないのか、手の上でじっと見つめている。
「よし、」
何かを決めたような口振りで、一瞬私を見たジャッカルは再度、自販機に向き合った。
そしてこれまた慣れた手つきでお金を入れてボタンをぽちり、ガタンッ。
「ほら、じゃあこれはそんな優しいなまえに俺からの奢り」
私がそのミックスオレを受け取ったとき、ジャッカルの溢れ出るいい人オーラに圧倒され、感謝よりも顔が真っ赤になるのが先だった。
言い換えれば、惚れた弱味をさらにぎゅっと掴まれたということだ。
「お、おい?なまえ?」
「もうっ!!何でそんなに男前なの!!私を殺す気!?」
「はあ!?」
こんないい人、私の目で見えるこの世に他にいないわ!!
―――――
20120828
20121001呼び方変更
長編にちょい役で出たジャッカルにあてられて出来た
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