学パロ | ナノ


▽ 隣の席の神永くん4


さっきからクラスの違う女の子と神永くんが楽しそうに会話している。その子は日曜日にデート現場を目撃したときの相手の女の子ではなくて、疑っていたわけじゃないけど本当に特定の一人はいないんだと思った。
今隣で笑っている彼女はショートボブのふわふわした雰囲気に薄目のメイクが可愛らしい、けどこの間デートしてた子は、遠目ながら見た限りではロングヘアの巻き髪にばっちりメイクの、少し年上でもおかしくなさそうな綺麗な感じの女の子だった。てんで正反対なタイプの二人なわけだけれど、神永くんは本当に可愛ければ何でも良いんだろうか。

「ねえ」
「ん?」

可愛らしい彼女が袖から少しだけ出された手を、これまた可愛らしく小さく振りながらばいばい、と神永くんに別れを告げて教室を出ていったタイミングで話し掛ける。

「神永くんってどんな子がタイプなの」
「タイプ?んータイプかあ……そうだな……」

目を閉じてうんうん唸り始めた姿がおかしくて少し笑ってしまった。そんなに悩むことなんだろうか。暫くそうして考える素振りを見せてから、ん!と閃いた様に目を開けた神永くん。

「可愛くて、あと俺のことを好きでいてくれる子かな」
「……大体当てはまるんじゃない?」
「ホント?なら若宮さんも?」
「ごめん前言撤回するね……」
「何だよー」

正直神永くんとのこんな会話にも慣れてきた。神永くんは軽永くんではあるけど、私の何気ない今みたいな質問にも真剣に答えてくれたり、あと女の子大好きな言動とは別にしてちゃんと男子にも優しいところとか、隣にいたらそういう面もたくさん見えてきて素直に良い人だって分かってきたのだ。

「可愛い、の方は問題ないから……俺を好きじゃないわけだ」
「……ねえそれに何て返せばいいの」
「ん?素直に受け取ってよ」
「でもそれって誰にでも言うんでしょ?無理だよ」
「えー?」

へらりとだらしなく笑う顔も何ならもう見慣れたもの。これ、今度から軽永スマイルって呼ぼう。

「ま、でも俺のことを好きになってくれたら若宮さんも完璧だな」
「ねえ怖い」
「何で」
「せっかく頭は良いんだから将来結婚詐欺師とかやめてね……」
「頭は、って何だよー」

本日二度目の軽永スマイルを浮かべたかと思うと急に思い付いたように、あ!と声を上げる神永くん。

「若宮さんは?好きなタイプ。教えてよ」
「えー……」
「平等にいこ?」
「そう言われても……ちょっと待ってね……」

突然振られたらなるほど、確かに結構悩んでしまう。好きになった人がタイプ、って良く言うけどなんとなく今の会話の流れではそれは許されない気がする。から何とか絞り込んだ。

「……ん、わかった。普通の人」
「?何それどういうこと」
「何って、普通だよ。普通に優しくて普通に話が合って、普通に付き合っていける人」

……言った後でこれも大分漠然としてるなと思ったけど他に思い浮かばなかったんだからしょうがない。理解不能なのか、神永くんも珍しく真顔で私を見つめてる。

「……ねえ若宮さん、それって結構ハードル高くない?」
「え、そう?」
「普通、って若宮さん基準の普通ってことでしょ?その為には若宮さんのことをよーく理解してないといけないってわけだ」
「う……そうかな」
「世の中にはたっくさん人がいてさ、けどその中で知り合えるのってほんの一握りなわけじゃん。そこから君にぴったり合う人を見つけ出すってことじゃないの?」
「……そんな言い方するから余計に難しく感じるだけじゃないの?」
「けど今までそんな奴いなかったんだろ?」
「んー……」
「な?」
「……んー」
「何かそんな歌あったよね。何億人の中から見つけてみせるーってやつ」
「ああ……あるね」
「若宮さんって結構ロマンチックなんだな」
「もー……からかわないでよ」
「いやいやそんなつもりは」

そう言って目を伏せてゆっくりと首を左右に大きく振る。相変わらず大手企業のやり手の社長みたいなジェスチャーをするなこの人。

「けどま、了解。若宮さんに好きになってもらうには普通になれば良いんだ?」
「無理でしょ。あなた天才だもん」
「なら天才に不可能があると思う?」
「うわー、天才っていうの否定しないんだ」
「そりゃー若宮さんからの有り難いお褒めの言葉だし?」
「え、褒めてないよ?」
「またまたー」
「すぐそうやって調子に乗る……」
「お調子者の神永くん。皆好きだろ?」
「……何それ意味わかんない」
「だな」

あははと笑う神永くん。……ほんと、意味わかんない。


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