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▽ 隣の席の神永くん2


神永くんが寝ている。右手にはシャーペンを持ち左手は頬杖をついていて、おそらく遠目には……どころか近くても注意して見ないと寝ていることはわからないと思う。居眠りの時ですら器用なのか……というか本当に授業中に寝るんだ。なのにどうして学年トップなんだろう、やっぱり納得できない。だからほんの数時間前に彼から言われた言葉は聞かなかったことにして、先生に起こされるまで放置することにした。
……窓際の一番後ろだからか、もしくは神永くんの偽装の賜物か。とにかく先生はなかなか気付かない。ツキもあるのか、結局注意されることもなく神永くんはその授業をやり過ごした。

「何で起こしてくれなかったかなー」

授業が終わって早速責められた。気付かれなかったんだから良いじゃないと返すとそういう問題じゃないんだよと項垂れる。じゃあどういう問題なんだろう。

「意味わかんない。っていうか羨ましいよ、私なんてちょっと居眠りしたらすぐ内容分からなくなるのに」
「いやいやいや、それは違うよ若宮さん」

ぶんぶんと大袈裟に首を振る神永くん。

「授業中寝るから分からなくなるんじゃない、分かるから寝るんだ」

なにそれ哲学ですか。偏差値が10違うと会話が成立しなくなる、なんて話を聞いたことがあるけど今ってまさにその状態じゃないのかな。頭が良すぎる人ってやっぱりその作りから違うんだと思った。

「若宮さんだって一度クリアしたゲームの攻略法をもう一回誰かの口から聞きたいなんて思わないだろ?」

それと一緒、とさも当然の様に例えた神永くん。良くわからない。勉強は出来ても教える方は向いてないんじゃないだろうか。

「……それなら授業中寝てる神永くんはいつ新しいゲームをクリアしてるの」
「そりゃあさ、見えないとこで努力してんの」
「神永くんがこっそり努力するのって女子にモテる為のことだけだと思ってた」
「それはほら、兼ね合いもあるから。頑張る男って女の子は好きだろ?」
「じゃあ授業中も頑張ったら良いのに」
「そしたら若宮さんにもモテるようになる?」
「ならない」
「じゃあ頑張らない」
「ならもうそれでいいよ……」

結局はどの教科だって寝たところでトップなんでしょ。つくづく羨ましい限りだ。神永くんと逆隣の小田切くんも相当成績優秀なわけだけど、彼はきっと授業中真面目に内容を聞いているからこその秀才だ。少なくとも今日一日は居眠りなんてしていない様だし。まあ先程の神永くんのは居眠りだなんて可愛らしいものじゃなかったけど。ふと隣を見て、神永くんが目を瞑っているのに気付いたのは授業が始まってわりと早い段階のことだった。そこからほぼ丸々眠っていたのだから、もはやあれは居眠りではなくれっきとした本眠だった。なんなら冬眠だ。
……下らない例えは神永くんのが移ったかなあなんてひとり悶々としているとおーい若宮さん、とかるーい声。

「ただの口実なんだけどな。可愛い子に起こしてもらいたいじゃん」
「うわあ軽い……」
「重いよりはマシだろ?」
「どっちもどっち」
「厳しいなー」

眉を下げて肩を竦める神永くん。少し情けない様なその表情すら眩しい。これが真のイケメンというやつか。こんな人と暫く接していくとなると、学期が終わる頃には私の目は日光に焼かれた様に相当なダメージを受けているんじゃないだろうか。成る程、巷で良く言うイケメンがこわいなんて言葉の意味が理解出来なかったけど、今なら少しわかる気がする。イケメン、こわい。というか神永くんがこわい。


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