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▽ 隣の席の神永くん1


クラスメートの神永くんを見ていると、さぞおモテになる人生なんだろうなと思う。かっこよくて成績優秀、スポーツ万能でコミュニケーション能力も高くて女子の扱いも上手い。弱点なんてものが凡そ見つからない彼と、この度の席替えで隣同士になった。
よろしくねーなんて軽く声をかけてくれるのはとても有難いんだけど、同時に少し、いや大分不安になる。生まれてこの方、平々凡々な人生を歩いてきた私にとって彼は些か眩しすぎる、気がする。きらきらと太陽みたいに愛想を振り撒く神永くんは異世界の住人としか思えなくて、特に人付き合いが苦手という意識は持っていなかった筈の私だけれど何だろう、上手く付き合っていく想像が出来ない。

「やっぱり窓際って気持ちいいね。俺もう一生この席で良いな」

机にごろんと寝そべって悪戯っぽく見上げられると素直にあ、かっこいいと思った。爽やかで凛々しいその顔立ちに、これでモテない筈ないよねとひとり納得する。

「もし俺が授業中寝ちゃってたら先生に怒られる前に起こしてよ」

女子だけじゃなく教師受けもばっちりな神永くんは授業中よく色んな先生からいじられている。クラスの中心人物でムードメーカー、という印象の割りに成績は大変優秀だから、先生達からしたら付き合いやすいんだろうな。これほどまでに皆に好かれるなんてまさに人生イージーモードというかんじで羨ましい。だから。

「保証は出来ません」
「あれ、もしかして若宮さんって結構冷たい?」
「……」

失礼なこと言うときでも軽いなあ、何だかもう色々と軽そうだ。というか勉強できるんだからきっと授業中寝たりなんかしないくせに。この調子がずっと続くのか……とますます漠然とした不安が大きくなったので、何となく逆隣の小田切くんに視線を向けると、ん?と優しく小首を傾げるものだから今学期は彼を癒しに何とか生きていこうと密かに決心した。


一限目から英語の小テストがあって、採点は隣と交換して行えと指示が出される。はい、とわざわざ目映い笑顔でプリントを差し出してくる神永くんに内心たじろぎながら赤ペンを手にした。

「若宮さんって字綺麗だね」

そんなことをわざわざ褒めるとはやっぱりモテる人は違うなーなんて思いながらえ、普通だと思うけどと当然のように全問正解のプリントを手渡す。というか神永くんだって、むしろ神永くんの方が綺麗な字を書いているじゃない。そうなるともう嫌味にしか聞こえない。

「女の子の字って良いよなー」

ん、字フェチ?完璧に見える神永くんの変な性癖発見しちゃったのかな、なんて一瞬考えてしまうけどきっとそうじゃない。神永くんは特別女の子の字が好きなんじゃなくて、きっと女の子そのものが好きなんだ。そして今の席である限り一番近くにいる女子は私だから、その興味の対象になってしまっているんだ。ああ、いよいよ本格的に先が思いやられる。今学期は石のように過ごそう。……出来るのかな。


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