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僕は人とは違う。


幼稚園の頃の話。

僕ははやと君という同じひまわり組の男の子が好きになった。


何時もにこにこ笑ってて、遊ぶ時は「名前!一緒に遊ぼーぜ!」と手を引いてくれる。

お友達は他にも沢山いたのに、当時の僕の目には誰よりはやと君が輝いて見えた。


ずっと一緒にいたいな、大人になっても傍にいたいな。そんなことを一人思ってははやと君への大好きを日々膨張させていった。



しかしそんなある日、もも組のみくちゃんがはやと君が好きだと言った時、自体は一変した。

みくちゃんの言葉に思わず「僕も好き!」と言うとみくちゃんのお友達のはなちゃんが言ったのだ。



「男の子が男の子を好きなんて変なのー」



それは何気ない言葉だった。純粋な言葉だった。

けれどその時の自分はそれはもう衝撃を受けたのだ。


そうか、僕が男の子を好きになるのは、可笑しいのか。

僕は可笑しい。その事実が胸にすとんと落ちてきた。


それと同時に、僕の初恋は静かな終わりを迎えたのだ。



もう顔も覚えてないけれど、あの時のみくちゃんとはなちゃんには感謝しているのだ。

僕が可笑しいことを気付かせてくれて有難う。もし彼女達がいなければ、僕は何か大きな間違いを犯してしまっていたことだろう。


あの時の経験がなければ、僕は身の程知らずにも相手に好意を伝えてしまってたかもしれない。そんな恐ろしいことにならずに良かった。

おかげであの頃から高校生になった今まで、僕は間違いを犯さなくて済んでいる。



けれども残念なことに、僕が可笑しいのは変わらない。

小学生、中学生、僕は懲りずに恋をして、その恋を静かに終わらせた。


そして高校生になった今も、僕はまた恋をした。






「名字、次の授業は何だったっけ」


「数学だよ、心操くん」

「そうか、有難う」

「ううん。全然」

隣の席の心操くんが好きだ。



もちろんこの気持ちを口にするつもりなんて一切ない。

心操くんは僕と違って可笑しくない。そんな彼に、可笑しい僕から向けられる気持ちなんて迷惑なだけ。


本当は恋をするつもりもなかったけれど、馬鹿な僕は叶うわけのない勝率ゼロの恋を繰り返す。




切欠は、心操くんの机から転がり落ちた消しゴムだった。

偶然僕の足元まで転がってきたそれを拾いあげて「落としたよ」と差し出すと、当然心操くんはそれを受け取ろうとした。


その時、指先が振れた。

少しひんやりとしたその手に触れた瞬間に、僕は恋をしてしまった。


我ながら単純だ。ただ手と手が触れただけなのに。




隣の席だから会話する機会は多くて、自然と仲良くなることが出来た。

自惚れじゃなければ、彼は僕の事を友達だと思ってくれていることだろう。


僕が本当は友達よりももっと薄汚れた想いを抱いていることなんて知らずに。

これからだってそう、僕の気持ちなんて知らなくて良い。


この馬鹿げた恋を終わらせる覚悟はある。だからせめて、せめて友達として仲良くして欲しい。





「なぁ、名字」

「何?――」


突然声をかけてきた心操くんに「何?どうしたの?」と返事をするつもりだったけれど、気付けば授業が始まろうとしていて、更には心操くんが「授業始まるぞ」と僕の肩を叩いたから慌てて前を向いた。







知られざる恋







「なぁ、名字」

俺の問いかけに「何?」と返事をした途端に名字の動きが止まる。


「鉛筆を握れ」

名字が俺の言うとおりに鉛筆を握り、個性の発動が成功したことがわかった。



「これに、今のお前の気持ちを書け」



こっそり用意しておいたノートを破いた紙切れを渡せば、名字は素直にそれを書き始めた。

書き始めてしばらく。そろそろ授業が始まるなと名字の手元から紙を奪い、個性である洗脳を解いた。

ぱちぱちと目を瞬かせている名字に「授業始まるぞ」とその肩を叩けば名字は慌てたように前を向いた。


ちらりと手元の紙切れを見る。



『心操くんが好き。愛してる』



紙切れに書かれているのは俺のことが好きだとか愛してるだとかそればかり。


一か月前のことだ。放課後の教室で、ほんの少しの悪戯で名字に個性を使った。

人の良い名字をからかうネタでも入手して、洗脳を解いたらネタ晴らししてやろう。そんな軽い気持ちで「お前の隠しておきたい秘密をこれに書け」と自分のノートを差し出した。


そのノートに名字が書いた文字に俺は驚き、それがこんなことを繰り返す理由となった。



『心操くんに恋をしてしまったこと』



絶対に隠しておきたいことがまさか自分への恋心なんて思うはずもない。

そしてあの時の文字通り、名字は俺に告白しようとする様子はない。


今回書かせた紙を授業中こっそり読むと、やはり今日も最後にこう書いてあった。



『けど言わない』



いや、言えよ。

そんな言葉はもちろん口には出さない。


もちろん、そのうち洗脳無しで言わせる気ではいるけれど。



(バレバレな恋)



あとがき

直接口から言わせたいと思う分には心操くんも主に気がある。
因みに心操くんが主が書いた恋文?を毎度大事に取ってて、そのうち主にそれが見られて個性を使ってたことがバレる。




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