知られざる恋「なぁ、名字」
俺の問いかけに「何?」と返事をした途端に名字の動きが止まる。
「鉛筆を握れ」
名字が俺の言うとおりに鉛筆を握り、個性の発動が成功したことがわかった。
「これに、今のお前の気持ちを書け」
こっそり用意しておいたノートを破いた紙切れを渡せば、名字は素直にそれを書き始めた。
書き始めてしばらく。そろそろ授業が始まるなと名字の手元から紙を奪い、個性である洗脳を解いた。
ぱちぱちと目を瞬かせている名字に「授業始まるぞ」とその肩を叩けば名字は慌てたように前を向いた。
ちらりと手元の紙切れを見る。
『心操くんが好き。愛してる』
紙切れに書かれているのは俺のことが好きだとか愛してるだとかそればかり。
一か月前のことだ。放課後の教室で、ほんの少しの悪戯で名字に個性を使った。
人の良い名字をからかうネタでも入手して、洗脳を解いたらネタ晴らししてやろう。そんな軽い気持ちで「お前の隠しておきたい秘密をこれに書け」と自分のノートを差し出した。
そのノートに名字が書いた文字に俺は驚き、それがこんなことを繰り返す理由となった。
『心操くんに恋をしてしまったこと』
絶対に隠しておきたいことがまさか自分への恋心なんて思うはずもない。
そしてあの時の文字通り、名字は俺に告白しようとする様子はない。
今回書かせた紙を授業中こっそり読むと、やはり今日も最後にこう書いてあった。
『けど言わない』
いや、言えよ。
そんな言葉はもちろん口には出さない。
もちろん、そのうち洗脳無しで言わせる気ではいるけれど。
(バレバレな恋)
あとがき
直接口から言わせたいと思う分には心操くんも主に気がある。
因みに心操くんが主が書いた恋文?を毎度大事に取ってて、そのうち主にそれが見られて個性を使ってたことがバレる。