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※USJ編。



突然の大爆発に思わず目を瞑ってしまった僕は悪くない。



得意なのは闇の魔術に対する防衛術、苦手なのは魔法薬学。

見た目は完全に文系なのに、実際は結構な実践派である僕を冷ややか且つ恐ろしい目つきで睨んでいた魔法薬学の教授。彼に言い渡された魔法薬学の補習が、まさかこんな事態を引き起こすなんて思ってもみなかった。


慎重さとか正確さとか、そういったことが大事な魔法薬学。

見た目は大人しそうだとか神経質そうだと言われるのに、やることは大分適当だ。


葉の大きさ?これぐらいで良さそう。分量?んー、目分量?回す回数?たぶん二回か三回、いや、四回だったかも。

そんな感じに作れば当然完成された薬は酷い状態だ。完成せず、途中で爆発するなんてしょっちゅう。


けれども今回の爆発はあまりに大きすぎた。


丁度魔法薬学の教授が席を外していたから教授には被害がないだろうが、おそらく爆発音を聞けば飛んで帰ってくるだろう。

あぁ、あの恐ろしい教授からの説教が始まるかと思うと心臓がぎゅっと掴まれているかのような気分になる。そのまま握りつぶされないことを祈るしかない。





「・・・あ?」

激しい爆風が無くなり、そっと目を開ける。そこで僕は違和感に気付いた。


何時の間にやら、僕は屋外にいた。

補習があった場所は地下だ。こんな空が見える場所じゃない。まさか、さっきの大爆発は壁とか天井とかを吹き飛ばしたのか?まさかまさかそんなわけ・・・

そこまで思考したところで、僕は更に気付いた。




怪物がいる。




脳味噌が飛び出た、屈強な体格をした怪物。

そしてその下にはボロボロの男の人が一人。


なんと怪物が男の人の身体に乗り上げ、酷い攻撃を浴びせていたのだ!

よく考えるより先に手は杖へと伸びた。よく考えないのはお前の悪い癖だと割と頻繁に注意されていたが、今回ばかりはこれが正解だと思う。



「エクスペリアームス!」

本来武器を奪う呪文だが勢いを付ければ本人をぶっ飛ばすことも可能なソレを相手にブチ当て、男の人の上から怪物を退かし、さっと近づく。


ボロボロの見た目だった男の人はやはりボロボロで、見れば骨もバッキバキに折れている。

これ以上身体に負担を掛けては大変だと思いながら、割れ物を扱うようにそっと優しく抱き上げ男の人を保護。



男相手に随分と優しい行為だと思われるかもしれないが、杖も持っていない彼がマグルであることは何となく理解している。杖も魔力も無いマグルが怪物に襲われていたんだ、優しくしたくもなる。


僕の両腕に抱えられた男の人は、ぱちぱちと目を瞬かせて僕を見ていた。

僕はそんな彼に一言「大丈夫、僕が守るよ」と言って笑う。


相手が何者かは知らないけれど、弱いマグルを守るのは良い魔法使いとして当然だと思う。ちなみに僕の実家は、過度のマグル贔屓だ。






先程エクスペリアームスでぶっ飛ばされた怪物はどうやら全くダメージを受けていないらしく、こちらへ突進してくる。

僕は男の人を抱えたまま杖を振り上げ「インカーセラス!」と叫んだ。拘束呪文。これで足を縺れさせ、可能ならこのまま拘束を・・・



「わっ、丈夫だなこの怪物」

足を縛ったのに全く意に反してない。


じゃぁこれならどうだ?と「ステューピファイ!」と失神呪文をかける。どんな屈強な怪物だって、意識が無くなれば怖いものなんてない。

狙い通り、怪物はその身体をぐらりと揺らし、バターンッと倒れる。




「よし、次は貴方の治療を始めよう。まずは腕かな」

ぽかんとして僕と怪物の戦いを見ていた腕の中の男の人。今気付いたけど、男の人以外にも少し離れた場所に何人かの人間がいたらしい。でも誰も杖を持っていない。・・・もしかして、あの大爆発で僕はマグル界に飛ばされてしまったのだろうか。姿現しの呪文みたいに。



「・・・おい、手前何者だ?脳無を殺りやがって」

「いや、死んでないから。気絶させただけだし」


少し離れた場所にいた、何やら不思議な装飾品を身に纏っているマグルに有らぬ殺人容疑を掛けられ慌てて否定。

否定しつつ、腕の中の男の人の治療を始める。マダムピンスじゃないから上手くいかないかもしれないけど、少し痛みを和らげるぐらいは出来るはずだ。


腕の中の男の人が「お前は、一体・・・」と口を開くけれど、その唇にちょんっと指を置いてそれを止めた。




「大丈夫だから喋らないで。もう怖いことなんてないよ、僕が治してあげる」

マグルには優しく!がうちの家訓だ。力があるものが力のないものを守って何が悪いのか。だからマグル嫌いの純血主義者とは馬が合わないんだ。


治療中邪魔が入ったら嫌だからと結界呪文を張れば、あの不思議な装飾品を身に纏うマグルが突っ込んできても全然問題なかった。




「よしよし!上手くいくかわからなかったけど、結構上手くいった」

完治とまではいかないけれど、大分怪我が治ったはずだ。


一人満足していると、どうやら治療中に周囲の状況は一変していたらしい。

謎の屈強な男が結界越しにじーっと見つめてて「あ、やっと気付いてくれた」とその屈強さに見合わない茶目っ気たっぷりな言葉を口にした。












「いや、助かったよ!君が何者かは知らないが、君のおかげで厄介な敵は気絶してるし、相澤くんは無事だし、残った敵は私が追い払っておいたから安心して欲しい!」


ばんばんっと僕の肩を叩いてお礼を言うオールマイトと名乗った屈強な男。肩が痛い。

相澤くんというのは僕が助けた男の人の名前らしく、僕に支えられながら静かに立っていた。



「えっと、はい、無事で良かったです。とりあえず、僕はこれで失礼するんで、後は皆さんで・・・」

相澤さんという人をオールマイトという人に渡そうとすれば、ぎゅっと手を握られた。相澤さんだ。



「あ、まだ何処か痛い?ごめんね、攻撃呪文は得意なんだけど防御とか治療とかがあまり得意じゃなくて・・・」

って、あ!マグル界で魔法使いまくっちゃったけど、大丈夫なんだろうか。このままじゃ、魔法省に捕まってしまう。

ば、バレる前に逃げれば大丈夫かな?


よし逃げよう。




「・・・何処に行く」

「えっと、帰らないといけなくて、その・・・」


そうだ、忘却呪文で此処にいる全員の記憶を消して行ったらどうだろうか。目撃者がいなければ、バレる可能性も少なく・・・



「・・・守るんじゃなかったのか」

「えっ」


「途中で投げ出すのか?」

「・・・・・・」

どういう意味だろうか。怪物はもう倒したし、完治はしていないがある程度治療もした。投げ出すとは?

ハッ!まさか、まだ敵が隠れている?彼はそのことを言っているのだろうか。




「・・・まだ敵は、存在するんですか?」

僕の問いかけにオールマイトという人が何かを言いかけたけど、それに被せる様に相澤さんが口を開いた。



「あぁ。また何時敵が来るかわからない」

「それは大変だ!貴方がまたこんな目にあったら気が気じゃない!」



「お前が守ってくれるんだろう」


「もちろん!貴方は僕が守ります!」

手を両手でがしっと掴んで宣言。

マグルを守らなきゃ!と思わず宣言してしまったけれど、魔法省に見つからないだろうか。そもそも、魔法薬学の教授は今頃大激怒しているはずだ。怖い。




「・・・あぁ、よろしく頼む」

いろいろ心配だけれども小さく笑った相澤さんを見ると、マグルを救えた満足感とかがいろいろ湧きあがってきて、僕は思わず満足気に笑った。






ダイナミック登場した魔法使い







金髪に青い目、美しい顔立ち。儚げで大人しそうな見た目をしたその青年は、その見た目とは想像も出来ないような男前な発言を連発した結果、自身が守った相澤消太というヒーローに並々ならぬ執着を抱かれることとなる。



あとがき

針ポタとMHAの混合。

魔法薬学で大爆発起こした結果MHAの世界にトリップ。
男主は自身がトリップしているとは気付いてない。マグル界に来ちゃった!ぐらいの認識。
おそらくこの後、自分に帰る場所がないことを知り、半強制的に相澤先生のお世話になる。

自分を腕に抱えて「もう大丈夫!」とか「僕が守るよ!」とか言う美青年・・・完全に王子様ですね、わかります。




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