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相澤先生が授業中、教科書で指を切った。

席が前の方だった僕は一瞬先生が眉を寄せたのも、指先の小さな傷からじわりと血が滲んだのもよく見えていた。





「先生、指大丈夫ですか?」

授業が終わった後の休み時間、教材を手に廊下を歩いていた先生に声をかけると「あぁ」と短い返事が返ってくる。





「見せてください」

先生が返事をする前にその手をとって傷口をじっと見る。


先生の男にしては細い指先にある赤くて細い線。

小さな傷だったからか既に血は止まっていて、傷口も閉じかけていた。



「痛いですか?」

「いいや。見ての通りだ」

突然手を取った僕に驚きはしているものの、大して気にしている様子も無い。


既に痛みもないらしい、ただそこにあるだけの傷。

それをじっと見ていると、何やら変な欲求が湧いてくるような気がした。



「おい、何時まで握って・・・」

「先生」

「あ?」



「消毒、させてください」



ぱちりと先生の目が瞬き、それから呆れたように細められた。

言葉通りの意味じゃないことなんて、僕の表情を見れば丸わかりだったらしく「そこに入れ」と今はまだ使われていない相談室へと促された。











「ん・・・」

椅子に座った先生の足元に跪くようにしゃがみ、先生の手を取り指先を口に含む。


軽く舐めて、先生が逃げないことが分かればちゅっと軽く吸って、また舐めて・・・

舌先を傷口を押し付ければ、折角閉じかけていた傷口が開いてじんわりと血が滲む。


先生の血の味。ただの鉄っぽい味のはずなのに、先生のだと思うと少し興奮した。

舐めたり吸ったり、先生の指に熱中している僕を先生が見下ろしているのが何となくわかり、ちらりと視線を上げれば案の定僕を見下ろしていた先生と目が合った。




「犬みたいだな」


「ん、ちゅっ・・・ですね、僕もそう思います」

一旦先生の指から口を離して返事をする。



先生の指は僕の唾液で湿っていて、先生はその指をしげしげと眺めかと思えば唐突に口に入れた。

えっと驚く僕の目の前で先生が自分の指をしゃぶる。


ちゅぱっと指から口を離した先生が「お前があまりにも熱心にしゃぶるから、美味いのかと思った」とまるで何でも無いような表情で言うものだから、僕は顔を抑えて俯いた。




「恥ずかしいんでそういうの止めてください」

「先に恥ずかしいことしてきたのはお前だろうが、クソ餓鬼」

俯いて丸出しになっていた頭頂部をぺしりと叩かれる。




「もう十分か?エロ餓鬼」

「思春期故の過ちです。先生の指がエロ過ぎたのがいけない」


「ぬかせ」

そう言って鼻で嗤った先生が「ところで」と漸く顔を上げた僕の頬に手を添える。





「舐めるのは、指だけで満足か?」





「・・・思春期の幼気な男子生徒を虐めないでくださいよ、先生」

何処か挑発的に笑う先生に僕は観念したように情けない声を上げた。







凶悪ペーパー







全部あの教科書が悪い。




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