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近所の男の子が可愛い。ヒーローを目指しているその男の子は僕を見るとすぐに「ヴィランだ!ぶっ潰せ!」と殴りかかってくるけれど、そういうところも可愛い。

小さいとはいえ全力で殴られると痛いし、発現したての爆発をモロにぶつけてくるからたまにヒヤッとするけれど、それでも子供のすることだ。「わー、やられたー」と言えば満足するのだから、まだ可愛いものだと思う。



「あ!出たなヴィランめ!」

「こら勝己!・・・ごめんなさいね、名前くん」

「いえいえ。勝己くんが今日も元気いっぱいで僕も嬉しいです」

僕の姿を認識するとすぐに飛びかかろうとしてきた勝己くんをゲンコツ一発で大人しくさせた勝己くんのお母さんは申し訳なさそうな顔で僕に謝ってくる。

謝らなくたって、僕は大して気にしていない。むしろ、勝己くんの遊び相手がしっかりできているようで安心すらしている。


「個性のおかげでこういうのもへっちゃらなんで。全然大丈夫ですから」

笑いながら「ね、勝己くん」と声をかける。不満そうな目に睨まれた。

勝己くんとお母さんは買い物の帰りみたいで勝己くんのお母さんの手には買い物袋が握られていて、勝己くんの手にはオールマイトの顔がでかでかと載ったスナック菓子の袋が握られている。確かオールマイトが好きなんだっけ?


「この子ったら、名前くんを見るとすぐに飛びかかってっちゃって・・・鬱陶しい時はガツンと言ってくれて良いのよ?名前くんだって、忙しいんだし」

「はははっ、未来のヒーローの訓練相手になれるなら、むしろ本望ですよ」

「ほら見なさい勝己、名前くんは良い人なんだから、迷惑ばっかりかけちゃ駄目よ」

お母さんに怒られたせいか、勝己くんの睨みに強くなる。睨まないの!とお母さんに注意された。



「おいヴィラン!今日こそ俺に退治されろ!」

「もう勝己!」

「はははっ、勝己くんのお母さん、僕なら平気ですから。勝己くん、退治されるのは良いけど、そろそろ夕飯の時間だよ。おなかがすいたら力が出ないんじゃないかな?」

「そんなの関係ねぇ!」

「元気だねぇ。じゃぁちょっとだけね、ちょっとだけ遊んであげる」

そう言うと勝己くんはパッと目を輝かせ、手に持っていたスナック菓子の袋をお母さんに押し付けると「おらー!」と飛びかかってきた。僕はそれを両手を広げて受け止めようとする。

バンッ!と小さな子供がやったにしては中々威力のある爆発が目の前で起こる。耳がキーンッとするけれど、鼓膜に問題が起こるレベルではない。


「ふふっ、この程度かな?」

「あ!個性使ったな!きたねーぞ!」

腕を広げていた僕に抱き留められ、そのまま抱っこされた勝己くんの頬が膨れる。

「そうでもしないと勝己くんに負けちゃうよー」

僕の個性は『吸収』。相手の攻撃の衝撃を吸収することが出来る個性で、そのおかげで勝己くんの遊び相手が出来ている。でも勝己くんは自分の攻撃が全く効いてないのが気に入らないらしい。むすっとした顔で今度は顔面にパンチをしてきた。



「これでもくらえ!」

「あいたたたっ」

べしべしと頬や鼻にパンチが決まる。爆発の威力よりは小さいから個性は使用せず、そのまま受ける。ずっと個性を発動させると、流石に反動が来るからだ。

モロに受けてあげれば、勝己くんは満足したのか「参ったか!」と言ってくる。参った参ったと言いながら地面に勝己くんを下ろそうとすると「敗者が何勝手なことしてんだよ!」と怒られた。


「敗者なんて言葉、よく知ってるなぁ」

「敗者は勝者の言うこときけ!」

「はははっ、じゃぁ勝者のヒーロー様、僕はどうすれば良いのかな?」

「家まで抱っこしろ!」

「はははっ、仰せのままに」

勝己くんを抱っこしながら勝己くんのお母さんの傍によれば「今日もごめんねぇ」と謝られる。


「どうせだから、このままうちでご飯食べていかない?なんだかんだで勝己は名前くんに懐いてるし」

「懐いてねー!」

「じゃぁお言葉に甘えて。勝己くん、今日のご飯なんだろうね」

僕の問いかけに勝己くんは「ハンバーグに決まってんだろ、そんなことも知らねーのかよ!」と笑った。うん、可愛い。






可愛いクソガキ様






「昨日のニュース凄かったね!反射ヒーロー 名前!敵の攻撃を食らっても涼しい顔して、一気に敵確保!」

「相手の攻撃の威力を全部吸収して、吸収した威力を相手に跳ね返せるんでしょ?よくテレビにも出てるし、格好良いよねー」


小さい頃から近所にいる、よく遊んでくれた男。勝己が中学生になる頃には、メディアでもよく取り上げられるヒーローへと成長していた。

教室にいると、時折女子たちが名前の話題を口にしている。勝己はそれが面白くなくて顔を顰める。

何が凄いんだ、何が格好良いんだ。あいつは餓鬼の自分に負けてもへらへらしてるような情けない奴なんだ。それに・・・

「俺が負かしたんだから。俺のもんだぞ・・・」

その呟きは誰も拾うことなく、教室の騒がしさに掻き消えた。



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