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駄目だ。

何も考え付かない。


正直、私は何をすれば良いのだろう。


人生なんとかなるとか言ったヤツ誰だ。

おかげ様で私は何をどうやってこれから生きていけば良いのか路頭に迷っているぞ。どうしてくれる。

いや、私が何もしないのがいけないのだが・・・




「名前・・・生きてるか」




ほら、今日も私と違って毎日が忙しい幼馴染が私の安否を確認しにきた。

床に寝そべりながら「あー、生きてる」と返事をすると幼馴染の消太は呆れたようにため息を吐きながらこっちに近付いてきた。


「相変わらず汚い部屋だな」

足でゴミを掻き分け漸く私の傍に辿り着いた消太の言葉に私は「んー」と唸る。




「掃除とか、どうすれば良いのかわかんないし・・・」

「・・・駄目人間」


「だよねー」

私もそう思うよ、と笑ったら頭を叩かれた。痛くないから手加減はしてくれたんだろう。




「ほら、せめて起き上がれ」

「起き上がってどうすれば良い?」


「ソファに座れ」

「ソファに座ったら?」


「飯持って来たから、それを食え」

「あー、うん、わかった」


よろよろと床から起き上がり、ソファに座った。当たり前だけど、床より柔らかい。



消太は私がソファに座ったのを見届けると台所の方へ向かう。

しばらくすると電子レンジのチンッという音がして、消太が戻ってきた。


戻ってきた消太の手には、温かな湯気を放つ弁当と冷たそうなお茶のペットボトルが。





「ほら、とっとと食え」

「有難う消太」

受け取った弁当を開けて食べる。美味しい。



「あ、食べたら何すれば良い?」

「まずは食べろ」

「うん」

消太が来なければ食事もまともに取らないから、私は消太のおかげで生きていると言っても過言ではないし、まさにその通りだ。


弁当をもぐもぐと咀嚼しつつお茶をごくごく飲みつつ、そんな私を無言で見つめる消太を無言で見つめ返す。

私がちゃんと弁当を食べきるのを確認すると漸く「食ったら次は風呂だ」と指示してくれた。


私は消太の言うとおり風呂に行き、風呂から上がれば「着替えろ」と投げ渡された服を着る。

着替えたら「ソファに座れ」と言われソファに座ると「少し待ってろ」と指示はそこで止まった。


ソファに座っていると消太が部屋を片付け始める。




「片付けろって言えば私やるけど」

「何を何処に片付けるか一々指示しろってか?」


「あ、面倒臭いね」

仕方なく消太が部屋を片付けて行く様子を黙って見つめる。



「・・・あーあ」

昔はこんなんじゃなかったんだけどなぁ。










両親が生きている頃は、両親が私の行動を全て指示してくれた。

物心つく頃にはそうだった。

何をするにも両親は私に指示をし、指示通りに動く私を褒めた。


褒められれば嬉しい。指示に従いさえすれば私をうんと可愛がってくれる両親のことを私は愛していたし、指示に従う私を両親も愛していてくれたと思う。



両親は私が大人になっても指示してくれた。

この会社に就職しなさい、この時間に帰って来なさい、休みの日はこれをしなさい。

全て指示があった。指示指示指示指示・・・


なのに、そんな日は終わりを迎えた。



両親が事故にあったのだ。

飛行機事故。それが原因で両親はこの世を去った。


突然家族を失ってしまった私は当然悲しかったが、それを超える困惑があった。両親がいなくなったということは、私に指示をしてくれる人がいなくなってしまったということなのだ。



私はどうすれば良いのかわからなくなった。

指示が無いから何も出来なくなって、気付いたら仕事をクビになってて、次の仕事を探すべきなのかどうするべきなのかわからなくて・・・

気付けばこうなっていた。



異変に気付いた消太が訪ねて来なければ、私はきっと死んでいただろう。それほど酷い状態だった。

それから私の身を案じて毎日様子を見に来てくれる消太には感謝している。来れない時には前日にまとめて指示をしてくれるのだから、本当に消太は出来た人間だと思う。






「おい名前、ちょっと足上げろ」

「あ?あぁ、うん」


どうやら私の足の下にゴミが合ったらしく、言われた通り足を上げると消太がさっさとゴミを回収した。



「何時もごめんね、消太」

「・・・気にすんな」

ゴミが粗方片付いたのか、ゴミ袋を片手に消太が玄関の方へ歩いて行く。



消太には本当に迷惑かけてばかりだ。

貯金も無限じゃない。何時までもこんな生活をしていれば、限界が来るだろう。

その時が来たら、私はどうすれば良いのだろうか。




「消太が『働け』って言えばちゃんと働くんだけどなー」

私の呟きは聞こえなかったのか、消太からの返事はなかった。







無職で何も出来ない幼馴染








「言う訳ねぇだろ」

相澤消太の小さな呟きは名前には当然聞こえなかった。



あとがき

小さい頃から何をするにも指示されてたせいで、大人になっても指示されなきゃ生きていけなくなってた相澤幼馴染主。
相澤先生は当然幼馴染の家が異常だったことを知ってるし、一時期は幼馴染を助けてあげようとしたけど、結局救えぬまま大人になった。
でも幼馴染を指示する両親が他界してから自分が幼馴染を指示する存在になるとその気持ちも一変。
自分が指示しないと何も出来ない幼馴染が愛おしくてたまらなくなってしまった。

そんな、若干歪んでる相澤先生の話。




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