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※忍たま×屍鬼



「・・・え?」

徹ちゃんと一緒に学校から自宅へと歩いていた夕方。


一瞬だけ目を閉じ、目を開けた直後。

突然の突風で目にゴミが入って、ほんの少しだけ目を閉じただけ。ただそれだけだった。



気付けば目の前には、僕に向かって刀を振り上げる知らない男がいた。










「名前さーん、僕A定食にしまーす!」

「はいはい、ちょっと待っててね。おばちゃん、A定食一つ追加です」


お昼の時間になり食堂が生徒達で賑わう。

最初の頃は何をするにも戸惑ってしまっていたけれど、最近じゃ随分慣れたものかもしれない。




あの日、僕は死にかけた。


時代劇でしか見た事無いような、足軽の格好をした知らない男が振り上げるボロボロの、けれど人一人の命を奪うには十分過ぎるぐらい鋭利な刀。

悲鳴を上げる暇も、ましてや逃げる暇もなく、僕はその刀を見詰めていた。



その直後、男は死んだ。



首から赤を噴きださせ倒れた男のその後ろに、彼は立っていた。


真っ黒な、忍者らしい忍者の服装。手や顔の大半を覆った白い包帯。

僕の頬は飛んできたぬるりとした赤で汚れていて、そんな僕を見てにたりと笑うその目は「良い物を見つけた」と雄弁に語っていた。







助けてくれたのか、生かされたのか、此処なら安全だよと言われて連れて来られたのが、この『忍術学園』という場所だった。


この学園の長、学園長先生は不思議な人で、明らかに不審な僕を「面白そうだから」という理由で保護してくれた。

ただ住まわせて貰うのも悪いからとお手伝いを申し出てから、掃除をしたり食堂のお手伝いをしたり、割と充実した生活を送っている。




「名前君、注文頼めるかな」

生徒達よりも遅れてやって来たのはこの学園の先生の一人、土井先生。


僕がにこりと笑って「もちろんです」と言えば、先生もにこりと笑って「じゃぁB定食をお願い」と言う。




土井先生は僕がこの学園に来て、一番に僕に『優しく』してくれた人。

最初は僕の監視役だったのは知ってる。けれど今は違うでしょ?



「先生、どうぞ」

「あぁ、有難う」


差し出したおぼんに手を伸ばしてくる先生。

その時ぴとっと指と指が触れ合って、先生が「あ、すまない」と慌てて手を離した。


謝る先生のその顔がほんのり赤く染まるのを見て、僕はついつい笑ってしまう。





「先生、緊張し過ぎ」

「えっ、あ、いや・・・」



「・・・可愛いなぁ、先生」

つんっと先生の頬をつつけば、先生の顔の赤みが増した。


先生は『優しい良い人』だから、この世界で一人ぼっちになってしまった可哀相な僕を邪険にするわけがない。

僕を見るその目はほんのり熱っぽくって、そんな先生の可愛らしい反応に満足していたら、おばちゃんから「そろそろ休憩してきても良いよ」というお言葉を貰った。おばちゃんも優しいから好き。





食堂から出て廊下を歩いてると「名前さん!」と声を掛けられる。


「あ、鉢屋くん」

僕より少しだけ年下の鉢屋くんは嬉しそうな笑みを浮かべて僕に近付いてきた。



「食堂のお手伝いはもうお済みですか?」

「うん。おばちゃんが、休憩しておいでって」


「じゃぁ、私もお付き合いして良いですか?」

期待したような顔で言いながら、そっと僕の身体に身を寄せてくる鉢屋くんは可愛い。



最初の頃は鉢屋くんも僕のことを凄く警戒してたなぁ・・・

けれどある日の夜、鉢屋くんと『お喋り』してから、鉢屋くんも僕に優しくなってくれた。


僕を見ると嬉しそうな顔をして、甘えたように話しかけてくれる。

鉢屋くんのお友達の皆も僕に優しい。皆揃うと、僕のことを「名前さん」って呼んで、皆で構ってくれるんだ。





「・・・名前さん?」

「ん。あ、ごめんね」


他の皆のことを思い出していたら、つい返事が遅れてしまった。

鉢屋くんを見ればさっきまでの笑みが消えていて「何を考えていたんですか」と低い声で尋ねられた。



その様子に僕はつい笑い出してしまいそうになる。

だってだって、その目にあるのは確かな狂気で、僕に対する執着でぎらぎらと光っていたから。


最初の頃、僕を警戒していた様子なんて微塵も感じられない。僕だけを見ている鉢屋くん。


「ふふっ、鉢屋くんとそのお友達のことを考えてたんだよ」

「・・・今、貴方の目の前にいるのは私です」

「でも、鉢屋くんのお友達のことだよ?」

「それでも・・・嫉妬、します」


あぁ、可愛い。


僕は堪え切れない笑みを浮かべながら「鉢屋くん、可愛いね」と鉢屋くんの頬を撫でた。

かっと赤くなった鉢屋くんは「か、可愛いなんて、そんな・・・」と小さな声を上げる。




「可愛い嫉妬しいの鉢屋くんからのお願いだから、今は鉢屋くんと一緒にいてあげる。嬉しい?」

「はいっ、嬉しいです・・・」



うっとりと僕を見つめる鉢屋くんに僕はにっこりと微笑みかけた。







彼は狂わせるばかり








何時か君を迎えに行くね。


あの日、僕を助けた男の人は言っていた。

僕を最初に見つけたからか、僕の命を救ったからか、僕が自分のものであると信じて疑わないその人が面白くて仕方なくって・・・


もしあの言葉通り迎えに来たとして、僕が冗談でも「嫌です」と言ったら、どんな顔をしてくれるんだろう。

今は想像するそれだけでも楽しいから、会いに来るのが遅くたって許してあげる。



あとがき

相手の指定がなかったので、取りあえずこの御三方にしました。
キョウ君の命を救ったのは言わずもがなタソガレドキのあの人です。

狂気を感染させる能力に長けてるキョウ君にしてみれば、割と良い環境かもしれません。忍者っていろいろ闇抱えてそうですから、簡単に感染しちゃいそう・・・
何気によくある天女モノに出てくる天女よりも性質が悪いかもしれません。



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