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※『好きで大好き』続編



目の前の扉を二三度ノック。直後開かれた扉の向こう側に飛び込んだ。


「セブルスさぁぁんっ!」

何時もの真っ黒なローブを纏ったその身体に抱き付く・・・というよりも泣き付けば、セブルスさんは小さく笑いながら「今日もか」と呟いた。はい、今日もです。


「よしよし、紅茶を淹れてやるから取りあえず離れろ」

頭を優しく撫でられ「はいぃ」と若干の涙声で返事をし、セブルスさんの自室のソファへと腰かける。



セブルスさんはそんな俺に「良い子だ」と言いながら紅茶を淹れ始める。

その姿をぼんやり見つめながら、俺はため息を吐いた。



ホグワーツに入学してから既に数年が経過。にも拘らず、俺の友達が出来ない問題は未だ解決していない。

どういうことだろうか。弟のハリーにはあんなに友達が出来ているのに。


ホグワーツに入学してから父さん譲りの好奇心旺盛さがレベルアップしたらしく、たまにお友達共々先生に叱られているのを見かける。そんな弟が羨ましくてしかたない。あ、別にマクゴナガル先生に叱られたいわけではないが。





「ほら」

「有難う御座います・・・」


温かな湯気が立ち上るカップを受け取れば、紅茶の良い香り。

軽く息を吹きかけてから一口飲めば、心が少しだけ軽くなった気がした。



「落ち着いたか?」

隣に腰かけているセブルスさんに問われ、俺はこくりと頷く。


「・・・セブルスさんの紅茶って凄いや」

実は魔法の紅茶なんじゃないだろうかって何度思ったことか。

それを素直に伝えれば、セブルスさんがくすっと笑った。


「茶葉が良いのかもしれないな」

「セブルスさんが淹れてくれるからに決まってる」


同じ茶葉でも、たぶん他の人が淹れたらこうはならないだろう。セブルスさん以外が淹れた紅茶なんて母さんが淹れてくれたものぐらいしか飲んだことはないが、確信を持ってそう言える。


俺の言葉にセブルスさんが「嬉しいことを言う」とまた笑ってくれた。セブルスさんの笑顔を見てると、胸がきゅぅっと痛くなる。痛いは痛いでも、つい口元が緩んでしまいそうになる痛みだ。






子供の頃から変わらず俺に優しくしてくれるセブルスさん。そんなセブルスさんが、俺だって変わらず大好きだ。

因みに幼い頃「セブルスさんをお嫁さんにする」とご本人の前で誓ったことも忘れていないし、気持ちも変わっていない。変わってはいないのだけれど、友達が出来ないからと泣き付いてくるような男をセブルスさんは受け入れてくれるだろうか。・・・男としてではなく『世話の焼ける子供』としてなら全面的に受け入れてくれてはいるけれど。



セブルスさんは本当に優しい。

けれども不思議なことに、ホグワーツではセブルスさんは生徒からそれはもう怖がられているらしい。


正直セブルスさんが生徒から怖がられている意味がわからなくって、同級生に「セブルスさんって凄く優しいよ?」と言った。その同級生は実は俺のお友達候補だったのだが、翌日から若干の距離を置かれるようになった。





「あーあ・・・」

「まだ悩んでいるのか」


「んー、今のため息は違う。友達が出来ないのも悩みだけど、どうしてセブルスさんの優しさを皆理解しないのかなって」

こんなに優しいのに、とセブルスさんを見ればその顔にはきょとんとした表情が浮かんでいた。あ、可愛い。



「優しい、か。そうだな、我輩はお前にそう思われるだけの態度を取っているから、当然と言えば当然か」

きょとんとした顔から困ったような表情に変わったセブルスさん。




「俺だけにじゃなくて、ハリーにも優しい」

「そのハリーについ先日罰則を与えたのは他でもない我輩だが?」


「それはハリーとそのお友達の悪戯が過ぎたからだ。ホグワーツの教師として、セブルスさんの行為は間違いじゃない」

「・・・ホグワーツの教師なら、こうやって濫りに生徒を自室に招いたりはしないがな」


ふぅっとセブルスさんの口からため息と取れる息が零れた。







「はっきり言ってしまえば、名前に友人が出来ない一番の原因は我輩だ」







今度は俺の方がきょとんとしてしまった。まさかそんな言葉を耳にするなんて思いもしなかったからだ。



「俺に友達が出来ないことと、セブルスさんは関係ないよ」

「我輩と名前が通常の教師と生徒よりも些か親密なのは、お前自身の言動から伝わるだろう。苦手としている教師と仲が良い相手と、そう軽々と会話をするだろうか。もし仮に我輩の耳にでも入ればと思うと、つい距離を置いてしまうだろう」


普段俺に優しく言葉をかけてくれる時とは違う、何処か淡々とした様子で言うセブルスさんに俺はついつい押し黙った。



確かに友達になろうとした相手にセブルスさんの話題を出せばあまり良い顔はされないし、知らない相手から「あぁ、スネイプと仲が良いあの・・・」と何処か含みを感じる言葉をかけられたこともある。

でもそれとこれとは関係ない。俺に友達が出来ないのは俺自身のせいであって、セブルスさんのせいでは断じてない。




「気付いた時にすぐ教えてやればよかった」

「セブルスさん、そんなのセブルスさんの思い違いだよ。俺、セブルスさんのせいで友達が出来ないなんて、思ったことない」


左右に首を振って何とか否定するも、セブルスさんは普段の様な優しい表情を浮かべてはくれない。

沈んだような、心底落ち込んでいるような雰囲気。今すぐにでも抱きしめたい。




「・・・名前を独占したいと思うがあまり、お前の一番の枷になってしまった」

「独占?」


その言葉に思わず食いついてしまう。




「名前は友人が出来ないから我輩の部屋にくる。けれど友人が出来たら?もう我輩のところには来てくれないかもしれない。そう思うと、我輩は・・・」

「・・・じゃぁ、セブルスさんは俺が離れてくのが嫌だったから?」


「昔、子供の言葉だとはいえプロポーズしてきた相手が、他の誰かのところへ行ってしまうのは、耐えられない」


子供の言葉?プロポーズ?

あぁ、セブルスさんは俺が言った「セブルスさんをお嫁さんにする」という言葉を覚えていてくれたんだ。


あんな餓鬼んちょからの言葉を今まで大事に取って置いてくれたんだ。

そう思うと、目の前でセブルスさんが心底落ち込んでいるのについつい口元に笑みが浮かんでしまう俺は酷いだろうか。



・・・意を決した方が良いのだろうか。早すぎはしないだろうか。

俺はごくっと息を飲み、それから深く深呼吸。落ち込んでいるセブルスさんの顔を見て、ようやく口を開いた。





「セブルスさん」

「・・・何だ」


あぁ、セブルスさんの声に覇気がない。表情だって暗い。

けれどそうなってしまうぐらい、セブルスさんは俺を想ってくれたんだ。それが嬉しくないわけがない。





「母さんみたいに豪快で、父さんみたいに格好良い大人になってから、それからセブルスさんにもう一度『お嫁さんになってください』って言うつもりだったけど・・・」


だって俺はまだ母さんみたいに豪快でもないし、父さんみたいに格好良い大人じゃない。セブルスさんからしてみれば、どうしようもない子供なのに。

でもセブルスさんはそんな子供の言葉を覚えててくれた。俺と離れたくないって思ってくれた。





「セブルスさんのところに来てたのはさ、友達が出来ないからって理由も確かにあるけど・・・セブルスさんと二人きりになれて、こうやって優しくして貰えるし・・・酷い話かもしれないけど、セブルスさんが他の生徒からは怖がられてるって聞いて、セブルスさんが優しくするのは俺だけなんだなって勝手に満足してた。だって、好きな人の特別なんだって思えて、幸せで・・・ごめんなさい、俺全然豪快でも格好良くもない。姑息で、自分でも引いちゃうぐらい馬鹿だ・・・」


告白と言うよりは懺悔に近いその言葉を耳にしたセブルスさんは驚いたような表情で俺を見詰めていた。それから・・・




「そうか・・・」

ほんのりと笑ってくれた。




「子供の言葉を真に受けるなんてと馬鹿にされるかと思ったが、そうか・・・お前も、大概馬鹿者だな」

そっと抱き締められて、すぐに俺はその身体を抱き締め返した。




「・・・これって、両想いってことで良い?」

「それ以外に何になる」


くすくすと笑うセブルスさんにほっとする。漸く何時ものセブルスさんに戻ってくれた。





「じゃぁさ、近々・・・ううん、明日にでもさ、母さんと父さんに、会いに行かない?その、報告したいし」

「・・・そうだな。我輩も、リリーに説明しなければ」


セブルスさんは軽く父さんの存在を無視してるけど、今の俺はそんなの気にする暇もなく、思わず「母さんたち、きっと喜んでくれるよ」と呟いた。






翌日、煙突飛行でポッター家へとやって来た俺とセブルスさんが両親に報告をすれば、母さんは「まぁ!良かったじゃない!」と喜んでくれた。


父さん?父さんは・・・

発狂したのち、母さんにコブラツイストをかけられ気絶し、床の上に放置されていた。ごめんね、父さん。








二回目のプロポーズ









「あぁ、スネイプと仲が良いあの・・・」

「あいつって頭良いし気が利くし、大分良いヤツなんだけどなぁ」

「俺、この間あいつに喋り掛けようとしたんだけど、少し離れた場所から凄い眼光でこっちを見てるスネイプ教授見つけちゃって・・・あれ、下手にポッター兄に話しかけたら、呪われるぞ」

「知ってるか?ポッター兄に告白しようとした後輩、ポッター兄からスネイプのべた褒め話めちゃくちゃ聞かされて目が死んでたよ」

「スネイプの話題になると、あいつも見境ないからなぁ・・・」

「要は、お似合いカップルってことだろ?下手にスネイプに恨み買わないように、遠くから見守っとこうぜ」

「だなー」



影でそんな会話があったなんて、きっと彼は一生知らないままなのだろう。



あとがき

友達が出来ない原因は教授の嫉妬の目のせいもあるけど、たぶん本人のせい。付き合ってからはセブルス自慢が悪化する。
教授は付き合い始めたら本妻の余裕から若干余裕が出てくるけど、でもやっぱり嫉妬の目で相手を睨むのは止めなさそう。

・・・愛する人相手にだけデレデレな教授も良いと思います。



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