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第七班が羨ましい。

僕は少し離れた場所で楽しそうに修行している七班の子達を見て、ため息を零した。





無事に下忍になることが出来た僕含む元アカデミー生は班ごとに分かれ、上忍が一人つくこととなった。

まだ下忍だからそれほど難しい任務はなくって、任務中他の班の姿を見ることがある。


そのたまに見る班の中で、僕は第七班が羨ましくて仕方がなかった。

第七班を担当しているのは、はたけカカシ上忍。あぁ、羨ましい。


羨ましいなんて言ったら勘違いされてしまうかもしれないけれど、別に今の班の上忍に不満があるわけではない。僕の班の上忍は、自他共に認めるほど引っ込み思案な僕に嫌な顔一つせず、真摯に向き合ってくれる良い先生だ。

そんな良い先生に恵まれたにも関わらず何が羨ましいかって、それはまぁ、僕の個人的な『好意』の問題だ。




僕はカカシ先生に好意を抱いている。




見かける度に胸がときめくんだ。

出来ることなら言葉を交わして、ちょっと欲張りかもしれないけど「名前」なんて名前で呼んで貰えたら、そしたら天にも昇る気持ちになれる。それぐらい好き。


でもカカシ先生は大人の人で、とっても格好良くって・・・僕みたいな子供、相手になんかされないと思う。

それでも僕、カカシ先生のことが好きなんだ。とっても、とっても。




「・・・もうちょっと、僕が積極的だったらなぁ」


この引っ込み思案な性格はどうにかしなくちゃと思ってる。

今までの人間関係でも苦労してきたし、戦い方にも影響が出ちゃってるし・・・


班の皆には迷惑をかけているはずなのに、皆が僕を励ましてくれる。もっと頑張らなくちゃ。頑張ってこの引っ込み思案をどうにかして、班の皆の役に立って自信を付けて、それから・・・カカシ先生に、声をかけてみたいなぁ・・・

今はこうやってこっそりカカシ先生の姿を記憶に刻み込むしか僕には――







「なーに見てるの?」







「えっ・・・ひょわっ!?」

「おー、良いリアクションだねぇ、君」


隣から突然声がして驚いて顔を向けて、更に驚いた。

つい先程まで七班の修業を取り仕切っていたはずのカカシ先生が、何故だか僕の真横に!


あまりに吃驚し過ぎて逃げ出そうとする僕の肩に手を置いて「まーまー、落ち着いて」と言うカカシ先生は素敵過ぎて死んでしまいそうだ。僕が。




「か、カカシ先生、あの、僕、えっと・・・ごめんなさいっ」

「何で謝ってるのかわからないけど、君気配消すの上手だね。気付くのに少しかかったよ」


アイツ等は気付いてないみたいだけどね、と言いながらちらりと七班の子達を見るカカシ先生。流し目、素敵。



「で?他の班の君が何の用?」

「よ、用があるわけじゃ・・・え、えっと・・・」


ただでさえ引っ込み思案なのに、相手はあのカカシ先生だ。

僕はもじもじしたまま、上手く言葉を発することが出来ない。


えっとえっとを繰り返して、これじゃカカシ先生にも呆れられちゃう。





「んー、怖がらせちゃった?」


違います!怖がってるんじゃなくって緊張してるんだす!という言葉は口から出ない。代わりに出たのは「あ、えと・・・」という蚊の鳴くような小さな声。

自分が情けなさ過ぎて泣いてしまいそうだ。泣いたら本当に僕のまだ始まってすらいない恋は終わるだろうけど。


若干目に涙が浮かんできたのが自分でも分かる。

耐えろ、耐えるんだ僕。耐えなきゃ嫌われちゃう・・・




「・・・ゆっくりで良いよ。ごめんね、吃驚させちゃって」

ぽんっと肩に置かれていた手が頭に置かれ、ぐりぐり撫でられた。


息が止まるかと思った。代わりに、涙が引っ込んだ。

先生がっ、優しい・・・


全然話したこととかなかったけど、想像よりずっとカカシ先生が優しくて、僕はたぶん今もう一回恋をした。同じ人に二度恋をした。

何時かこの人と喋りたかった。名前って呼んで欲しかった。


でも何時かって?今がチャンスだ。今しかない。カカシ先生に、僕を覚えて貰うチャンスは、今しかないんだ。





「カカシ先生がっ」

「うん」


「その・・・」

「ゆっくりで良いよ」


どんどん声が小さくなっていく。ちゃんと聞こえてるかな、ちゃんと言えてるかな。






「カカシ先生がっ、見たくて・・・」


僕は囁くよりも小さな声で、けれどもはっきり言っていた。

言った直後、ぶわりと身体が熱くなる。



違う!言いたかったのはコレじゃない!

見てたって何?まるでストーカーみたいじゃないか。こんな台詞じゃ、カカシ先生に呆れられるどころか嫌われちゃう。


もうカカシ先生の顔を見るのが怖くて、気付けば足が動いていた。







火事場の馬鹿力という言葉があるけれど、僕はこの時普段の自分では考えられない程俊敏な動きでその場を去って行った。

途中ですれ違った自分の班の子に、後で「あの時の名前は凄かった!やっぱりお前は凄い!」と褒められ、嬉しい反面複雑だった。








彼は純朴なままでいられるか







「・・・へぇ」

美味しそうに熟れた林檎のような、真っ赤な真っ赤なお顔。

傍にいるだけでも緊張しているのが分かる、ぷるぷる震えた身体。


見た目は自分が担当する下忍たちと同じ子供。それも気弱な類の子供。けれどもその瞳は子供に似つかわしくない程熱っぽく情熱的で・・・





「名前、ねぇ」

知り合いの上忍が「あの子は引っ込み思案だが、優秀な子だ!」と手放しに褒めていた生徒の名前をふと思い出したはたけカカシは、マスクの下でにたりと笑った。



あとがき

おそらくこのままいけば大人しいショタ主にカカシ先生という大人の魔の手が・・・
大人しいショタには押せ押せな大人のお姉様的な相手を添えたくなるのは、異音だけでしょうか。



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