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※IF『もし主がハリポタ世界にトリップしちゃったら』



本気で僕の自我は崩壊するのではないかと思った。


尾崎先生がいない。静信さんがいない。宗貴兄さんがいない。父さんがいない。徹ちゃんがいない。夏野がいない。定文さんがいない。沙子ちゃんがいない。辰巳さんがいない。


皆みんな、誰もいない。

僕を愛してくれるはずの人たちが誰一人として、その世界には存在しなかった。



これを絶望と言わずに何と言えば良かったのか・・・






「あ゛あぁぁぁああァあ゛あァァあァアあぁぁぁぁあああああああアあッ!!!!!!!!!!!!!」






全く知らない森の中で蹲った僕は・・・



「――誰だ!?そこにいるのはっ!」

「ぁあ゛ぁ・・・ァ・・・」


「人か・・・?おい貴様、大丈夫か・・・」




「ひ、と・・・りに、しなぃ・・・で・・・よ」




朦朧とする意識の中で、僕は僕に駆け寄ってきた誰かの服の裾をぎゅっと握った。











――・・・




「キョウ!おはよう」

「ん。おはよう・・・ハリー」


「おはようキョウ。あ、この間の課題終わった?よかったら見せて欲しいなぁーって」


「ロン!キョウに頼ってばっかりじゃ駄目よ!ぁっ、キョウ!この間薦めてくれた本、本当に面白かったわ。有難う」


朝、笑顔で駆け寄ってくる彼等にキョウは小さく微笑んだ。

そんなキョウにハリー達は嬉しそうに笑い、更に話しかけようと――





「やぁ」


ハリー達が「げっ」と顔をしかめた。

キョウはそれに気づきつつも全く気にせず、声を発した人物の方を見る。


そこに立っていたのは、グラップとゴイルを引き連れたドラコ。




「キョウじゃないか。そんなグリフィンドールの馬鹿達と一緒で楽しいかい?」

「おはようドラコ。うん、楽しいよ」



厭味ったらしく言うドラコにキョウは笑顔のままさらっと返す。




「っ!キョウ!そ、その・・・僕、今度父上に頼んで新しい箒を買ってもらうんだ!だ、だからっ、そのっ、キョウの分も頼んでおいてやっても良いぞ!」


「ドラコの気持ちは嬉しいよ、有難う」



微笑みながらドラコの頭を撫でれば、ドラコは恥ずかしそうにしながらもその手を甘受した。

それが気に入らなくなってきたハリー達が「キョウ!」と声を上げる。




「早く大広間に行こう!キョウは僕の隣ね!」

「僕もキョウの隣!」

「じゃぁ私は正面ね。絶対よ」



三人に引っ張られるように連れて行かれるキョウは、気に入らなさそうな顔をしているドラコに手を振った。





「またね、ドラコ」


「〜〜〜っ、こ、今度僕の家に招待してやるっ!有難く思うんだな!」




「うん。楽しみにしてるね」


引きずられるままに大広間へ連れて行かれたキョウは、すとんっと椅子に腰かけた。



すると背後からぎゅーっと抱きついて来る人影が二つ。





「「キョウ〜」」

「おはようございます、先輩方」


「「おはよー」」



キョウは穏やかに微笑みつつも目の前にあった皿からサンドウィッチを手に取って食べ始める。


一通りべたべたしていったウィーズリーの双子は「またねー」と言いながら自分の席に戻って行く。





「キョウ。僕、この間クィディッチの練習で先輩に褒められたんだ」

「そう。流石はハリーだね。次の試合が楽しみだなぁ」


「キョウ。ママがキョウにセーター編んで送ってきたんだ・・・貰ってくれる?」


「ロンのお母様に『有難う』ってお手紙書かなきゃね。有難く着させて貰うよ」



「キョウ。また何か良い本を紹介してもらって良いかしら」

「もちろんだよ、ハーマイオニー。ハーマイオニーが好きそうな本をこの間見つけたんだ」




三人が次々に話しかけてもキョウは一切動じない。


穏やかな笑みのままに三人の言葉に頷き応える。







ある日突然ホグワーツに編入と言う形で入学してきたキョウは、その人当たりの良さから寮に関係なく人気だった。


何事も冷静で、穏やかで、少し大人びていることも人気の一つだ。






「Mr.ムラサコ」


突然、キョウの頭上から声がした。



ハリー達が再び「げっ」という顔をするが、もちろんキョウは気にした風もなく「はい」と言いながら上を見る。


自分に声をかけた人物が誰であるかを確認すると、キョウはにっこり笑った。






「何の御用ですか?――スネイプ先生」

「少々話がある。共に来て貰おう」


明らかに食べている途中であるにも関わらず、キョウは腕を掴まれ立たされる。





「スネイプ先生っ、キョウはまだご飯をほとんど食べてません!」

「そうですよ!食べてからでも良いじゃないですか」


ハリーとハーマイオニーが抗議するが、セブルスは完全無視でキョウを連れて行く。



セブルスがいなくなった後でロンが文句を言いだしたのは此処だけの話だ。









連れて行かれた魔法薬学の地下教室の扉がバンッと閉じられると、キョウは視界を真っ黒なものに包まれた。


それがセブルスによって抱き締められているからだと気づくのはそう難しいことではない。





「・・・クスッ。嫉妬?」

「・・・・・・」


ぎゅうぎゅうと抱き締められるキョウは頭上にある顔を見上げて笑う。




この世界に来てしまって、最初に見た顔もこの顔だった。


既に狂っているキョウの精神が崩壊しかけていたその時に、セブルスが現れたのだ。




禁じられた森の中で叫びながら蹲っていたキョウを発見したセブルスはキョウをダンブルドアの元へと連れ帰った。


その間、ずっと自分の服を握ったまま離さなかったキョウに、不思議と庇護欲を掻き立てられたのも事実。







「・・・グリフィンドールの奴等とべたべたしすぎだ」


「だって僕、グリフィンドールだから」



「・・・お前は絶対スリザリンに入ると思っていたのに」

恨みがましい目で見つめられたキョウはクスクスッと楽しそうに笑う。





「セブルスがあんまりにも僕の事必要としてくれるから、ちょっと意地悪したくなっちゃって」


「・・・やっぱりお前はスリザリンだな」




「中身はそうかもね。けど、皆僕の事、優しくて良い人って言ってくれるよ」


「・・・ふんっ」

むすっとした顔でキョウを抱き締める腕の力を強めるセブルスに、キョウは「ねぇ」と声を上げる。






「僕の事好き?」

「あぁ・・・好きだ」


キョウの目が嬉しそうに輝く。





「誰よりも?何よりも好き?愛してる?」


「ぁ、あ」



少し照れくさかったのか、セブルスはふぃっと顔を逸らした。



キョウの顔に満面の笑みが浮かび、突然セブルスの両頬に手を添えると、チュッとその唇にキスをした。

ブワッと赤くなるセブルスを気にせずにもう一度キスをすれば、セブルスはギュッと目を閉じながらそれを受け入れる。






「嬉しい。僕もセブルスのこと――狂おしいほど愛してる」


にっこりと笑ったキョウは他から見れば随分と禍々しい雰囲気を放っているはずなのに、セブルスは何処かうっとりしたようにその笑顔を見つめていた。





愛が無ければ生きられない







あとがき

【屍鬼の主人公キョウさんがもしハリポタに行ったらを書いて貰いたいです】
何処の世界に行っても愛されキャラな感じにしてみました。

・・・キョウ君よりも、逆に残された尾崎先生たちが発狂しそうで怖いです。←



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