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※フグネタ注意



「えぇー!?おそ松就職決まったのー?うっそだー」

スーパーからの帰り道、偶然出会った幼馴染からの報告に、僕は「嘘だ嘘だ!」と連呼した。



「嘘じゃねぇよ!というか、俺だけじゃなくって六つ子全員就職決まったし」

「うっわぁ、何ソレすっごー。僕なんてまた面接落ちちゃったのにさー」


「お前も頑張れよ、ニート様」

「うっぜ!おそ松うっぜぇ!」



何となくおそ松含む六つ子は僕と同じくずっとニートだと思っていたから、何だか拍子抜けだ。


就職かぁ。じゃぁもう、好きな時間に遊びに行ったり、好きな日に飲みに行ったりが出来なくなるんだ。

そう思うと、何だがとても寂しくなる。




「御祝いに飲みに行こうよ!」

わざと明るい声で言うと、おそ松は「あー」と申し訳なさそうな顔で頭を掻く。



「悪い。今日は家族でお祝いやるから、また今度な」

「そっか。まぁ六人全員が同時に就職だしね。どっか食べに行くわけ?」

「いや、家でお祝い。就職しちまったら、それぞれ別々の場所に行くからさ。もしかしたら家族全員揃うの、これが最後かもしれねぇし」


「何だか寂しいね」

「・・・まぁ、就職するってそういうことだもんな」

少し寂しそうに、けれど真っ直ぐと前を見据えるおそ松は普段よりずっと格好良くて・・・


「頑張れよ、オニーチャン」


「おぅ」

照れたように笑うおそ松は、その日一番輝いていた。







「一家全員、フグで中毒死ですって。怖いわねぇ」







真っ黒な服。手に持った数珠。静かで重々しいお経の声。

真っ白な服。四角い箱。同じ顔が六つの写真。無言。

八つ並んだ棺桶。幼馴染が眠る六つの箱。


僕は静かに目を伏せた。























「おっはよー、クズニートの皆さん!」

お邪魔しますの言葉も無しに家に上がり込む。


六つ子はそんな僕に大して驚きもせず、ただし若干嫌そうな顔をしてこちらを見た。



「んだよ名前、ハイテンションで人を貶すな」

「ふっふー!クズでニート!社会の汚点な皆さんに、ビックニュースでーす!」

「おい、酷くなってんぞ」



「僕、就職決まっちゃいましたー!」



ぱんぱかぱーん!とセルフBGMを流しながら採用通知を見せると六つ子が唖然としてその紙切れを見つめるのがわかった。


「はぁ!?お前が就職!?」

唖然とした状態からいち早く復活したおそ松の言葉にピースサイン。



「来週からばりっばりの社会人でーす!」

「嘘だろー、名前が就職するなんて・・・」


「まぁ、僕が本気を出せばこれぐらい当然だけどねぇ!」

「俺、何となくお前は俺達と一緒で一生ニートだと思ってた」

心底残念そうな声を上げるおそ松に僕は「お生憎様ー!」とけらけら笑う。




「・・・仕方ねぇな。お祝いしてやるよ、お前の金でな!」

「おそ松マジでクズニートぉ。まぁ良いけどねぇ」


僕の言葉に気を良くしたおそ松が笑みを浮かべた。つい先程残念そうな声を上げていたのが信じられないぐらいの、満面の笑み。



「お!太っ腹!じゃぁ、普段は食えねぇようなの食おうぜ!フグとか!」


「フグー?僕、フグ嫌ーい」

きょとんとした顔でおそ松が僕を見つめる。



「そうなのか?食ったことあんの?」

「無いけど嫌ーい」


「食わず嫌いかよ。まぁ、一応はお前のお祝いだし、代わりに寿司でも取るか!」

「いえーい!寿司は好きだよー」



チョロ松、電話してー!と頼むと「仕方ないなー」とチョロ松が電話をしに行って、他の兄弟達は「特上な!特上!」と声を上げていた。六つ子は遠慮という言葉を知らない。



電話からしばらくして届けられた寿司は当然のように特上で、人数が多いからあっという間になくなった。

寿司を食べたらお酒も飲んで、隣に座っていたおそ松が「あー、満足満足」と声を上げる。


他の兄弟はどうやら酒の飲み過ぎでダウンしてしまったらしく、現在起きているとは僕とおそ松だけ。





「フグも食ってみたかったなー」

「高いよー?」


「今度競馬で勝ったら食おうかなー。名前は誘ってやんねぇけど」

その言葉に僕は少し黙る。



「ん?どうした名前」

「止めた方が良いよ」


「はぁ?フグ食うのをか?」

「止めた方が良いよ」


「何だよソレー」

おそ松が怪訝そうに眉を寄せる。



「聞いた話だけど、フグって高い割にあんま美味しくないんだってさ。折角のお金、ドブに棄てる様なもんだよ」

「え、そんなに?そう言われるとなんか勿体ない気がしてきた」


「でしょー?だったら、お酒とかの方が良いって」

ほら、お酌してあげる。

そう言いながら、空になっていたおそ松のグラスに酒を注いでやれば、おそ松は上機嫌にそれを煽った。



「あ、でもどうしてもフグ食べるんだったら、僕を呼んでね」

「何だよ!何だかんだ言ってお前も食いたいのかよ」


「食べたくないけど、おそ松たちが食べるなら食べるってこと」

「うっわ、良い歳こいて甘えたかよ」

うげぇっという顔をするけれど、意外と嫌がっていないのは知っている。傍にいるのが当たり前だと感じるぐらい、長い付き合いなんだからそれぐらいわかる。




「おそ松だけ高いもん食うなんて許さないからー」

「わかったよ。食う時はお前も一緒だ」


「・・・死ぬ時もねぇ」

「こっわ!お前、突然そんなメンヘラちっくなこと言うんじゃねぇよ!」


「はっはー、確かに今の発言は怖いねぇー」

酔っちゃってるのかも、と言いつつ自分も酒を飲めば少しくらりときた。うん、やっぱり酔ってる。



「ほんとにな!マジで怖かったぞお前」


「ふふ・・・」

頭がくらくらするなと思いつつ、僕は堪え切れず笑った。







つよくてにゅーげーむ









本当に怖いねぇ。



一度目の世界で幼馴染を亡くした彼の二度目の人生。



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