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「名前は俺の親友だ!」

「名前は俺の事を何でもわかってくれる!俺が演技で困っている時も的確なアドバイスをしてくれて、この間なんて俺と一緒に居残ってずっと練習に付き合ってくれたんだ」

「名前は優しい奴だ!俺が悲しんでいる時は誰よりも早く気付いて、隣に立ってくれる。気の利いたこと言えなくてごめんなって言うけど、隣にいてくれるだけで救われる人間もいるんだってことを名前は理解しても良いと思うんだ!まぁ、そこが名前の魅力でもあるんだが!」

「名前はとても温かい奴なんだ!頼み込んで頼み込んで漸く名前の家に連れていって貰ったら、名前の家族がそれはもう素晴らしい人たちで・・・あぁだから名前はこんなに素晴らしい人間なんだろうなって俺は理解した!たった数時間だったのに俺は名前の家族の虜になっていて、何だか帰りたくなくなってしまって・・・そしたら名前が言ったんだ!『しょうがないから、今日は泊まる?カラ松がごねたせいでもう外真っ暗だし・・・』って!もちろん速攻で頷いたさ!名前も名前の家族も『しょうがないなぁ』と言いながら美味しいご飯も温かいお風呂もふわふわの寝床も全部全部提供してくれて、本当に幸せで・・・あ!ちなみにふわふわの寝床は名前のベッドだったらしく、一人用のベッドで二人してぎゅうぎゅうになって眠った。何だか修学旅行みたいで楽しかった!」

「一晩名前と一緒にいると何だかもっと名前の事が好きになった。そのことを名前に伝えると吃驚したような顔をしたけどすぐに笑って自分もだって頷いてくれた。嬉しかった!・・・俺はそこで気付いたんだ。もしかすると俺は、もはや名前のことを家族のように愛してしまっているのではと。いや!それどころか、俺はもう名前の家族の一員なのではないかと!名前の家族と一緒に食事をとってテレビを見てお喋りをして、もはやこれが家族以外の何になる?名前のお母さんも俺のことを『カラ松ちゃん』って呼んでくれたし、お父さんも『息子が増えたみたいだ』って言ってくれたし、名前の妹なんて『カラ松お兄ちゃん』って呼んでくれたんだ!もう家族だろこれ!」

「家族だったらもういろいろ遠慮することないだろ?親友とはいえただの友達だった名前には、今まで我慢することが多かったから俺はとても嬉しかった。例えば名前の飲みかけのジュースを一口貰ったり、食べかけのパンを齧らせて貰ったり・・・ほら、他人の唾液が付いた食べ物なんか口にいれたくないだろう?けど名前は家族だから全然平気なんだ!銭湯も家族で行くところだから、当然名前を誘って二人で銭湯に入ったんだ。そしたら名前が『銭湯なんて初めてだなぁ』なんていうから俺は心底驚いた!あ、銭湯上がりのコーヒー牛乳はもちろん二人で半分こしたぞ。美味しかったなぁ。名前が何故か『カラ松って何だか最近凄く親しげだよね』と言うが、家族だから当然だろう?」

「名前と家族になれて俺は本当に幸せなんだが、何故俺と名前は未だに家が別々なんだろう。一度名前と一緒に家に帰ってきて『ただいま』って言ったら、家族に笑われてしまった。お母さんなんて『いらっしゃいカラ松ちゃん』って余所余所しく言うもんだから、何か怒らせてしまったのかと不安になった。しかも夕方になると今日は何時帰るかなんて聞いてくる!我慢出来なくて泣きながら俺は何かしてしまったのかと聞いたら、名前は困った顔で『カラ松が家に帰ってこないと、家族が心配する』って言うんだ。可笑しくないか?俺と名前は家族で、俺の帰る家は此処だろう?不思議で不思議でたまらない俺に『此処は名字家で、カラ松の家は松野家』って・・・あ!成程!って俺はついに理解した!今やっと理解した!」

「名前と俺は家族だが、まだ正式な家族にはなっていなかったんだ!うんうん、そうだなそうだな、親友から家族になる前に、段階が残っていた!そう、それは恋人だ!俺としたことがすっかり忘れていたぜ。名前の家族として名字家に住むなら、まずは俺自身が名字カラ松にならなければならなかったんだ。だから名前たちは俺が何時帰るのかとか、帰らなくても良いのかと心配していたんだ。でもよく考えたら、親友として過ごしてきた日々がもはや恋人同士の日常と置きかえれも遜色ないような・・・はっ!ならばすぐに名前に結婚して貰わなければ!結婚するには何がいる?婚姻届?印鑑?確か、印鑑は拇印でも良いんだよな?じゃぁ婚姻届とペンを持って名前のところへ行って来よう!名前ならすぐにサインしてくれるはずだ!じゃぁ行って来るぜ、チビ太!」



「・・・おー、行ってらー」


高校が別々になった友人と街で偶然会い喋りはじめてからしばらく。

もはや考えるのすら億劫になったチビ太は、意気揚々と走り去って行くカラ松の背に手を振りながら、その『名前』という人物に同情した。




今からそちらに、サイコパスが参ります。






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