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※妊夫ネタ注意



カラ松が妊娠した。

それを告げられたのは突然だった。




「妊娠したんだ」




「え?」

「妊娠したんだ、お腹にお前の子がいる」

「えーっと・・・ん?」


「やっぱり受け入れられないよな・・・けれど俺は、名前の子を産むつもりだ。無理に認知して欲しいとは言わない。だが、どうか産むことは許してほしい」

「いや、ちょっと待って、カラ松ちょっと落ち着こう!泣かないでって!」


困惑で言葉も出なかった俺に何を勘違いしたのか、カラ松はその目からぽろぽろ涙を流しお腹を押さえている。




冷静に考えて今この状況は可笑しい。

カラ松は男で俺も男。所謂ほもっぷるな俺達の間に子供が出来るはずがない。

けれどカラ松はふざけてそういうことを言うタイプではないし・・・




「あのさ、カラ松・・・詳しい話を聞かせて。カラ松が妊娠したのを受け入れられないんじゃなくってさ、どうやってっていうか・・・」


「名前が俺の中に出したからだろう」

「いや、真顔で言われても・・・」

確かに記憶には残ってるけどさ。



あの日は何だかカラ松がやけに積極的で、官能的な表情で「中、出して?」なんて言われればホイホイ従ってしまうのは男の嵯峨・・・あ、やばいちょっと冷静になろう、今はそういう場面じゃないから落ち着けよマイサン。




「これが診断書だ」

診断書まであんの!?と驚きつつカラ松が差し出してきた書類を見る。


ふむふむ、松野カラ松、男、妊娠一ヶ月、デカパン研究所、デカパン・・・ん?デカパン研究所?

書類の一番下に記載された不穏な単語を二度見三度見する。


デカパン研究所と言えば、赤塚でも有名なデカパン博士が住む場所だ。何でも相手の本心が分かる薬が作れたりして、最近ではイヤメタルという謎の物質を発見し学会で発表したらしい。その後世界の大富豪ミスターフラッグが大量生産に成功してぼろ儲けしているらしいが、庶民の俺には無縁の話だ。

デカパン博士という人物に実際に会ったことは無いが、カラ松とその兄弟達は昔からの知り合いらしく時折話題に上がっている。





「・・・デカパン研究所って、産婦人科もやってたっけ」

「万能だよな」


「いや、万能とかそういう問題じゃなくって・・・え?デカパン研究所で何したの?何があったの?」

恐る恐る聞いてみると、カラ松は先程涙を流していたのが嘘のようにケロッとした顔で言った。




「名前の子供が欲しいって言ったら、薬くれた」

「母体に何かあったらどうする!?」


そんな怪しい薬飲んで何かったら、俺絶対許さないからな!?

・・・あ、今カラ松が妊婦っていうか妊夫なの普通に受け入れてた。カラ松もなんか嬉しそうな顔してる。


しかしまぁこれではっきりしたのは、カラ松が言っているのは嘘でも冗談でもなく、そのお腹には本当に新たな生命が宿っているということだ。

いるんだ、俺の子が・・・




「・・・ちょっとお腹触らして」

「まだ触っても分からないと思うぞ」


とか言いながら嬉しそうに俺の方に腹を寄せてくるカラ松をそっと抱き寄せ、その腹を右手でするすると撫でる。

くすぐったそうに身を捩るカラ松のお腹は本人も言ったようにまだ全然わからなくって、けれど何となく普段より温かいような気がして・・・



「男の子かな、女の子かな」

「気が早いぞ、ダーリン」


「・・・ごめん、ちょっとホントごめん、泣きそう」

「俺も妊娠が分かった時、泣いたんだ。お揃いだな」


じわりと目に涙が浮かぶのがわかって慌てて顔を背けようとする俺の首にカラ松の腕が回って、ぎゅっと抱きしめられる。





「名前の子、産んでも良いか?」

「・・・むしろ、是非産んでください」


「勝手なことして、怒ってないか?」

「驚いたし、事前に言ってほしかったかもだけど・・・嬉しいから許す」


「名前は名前が考えてくれないか」

「・・・後で本屋行ってくる。俺、すっげぇ良い名前考えたいから」


カラ松の首筋に顔を埋めながらズズッと鼻を啜る。




「本屋に行くなら、俺も連れて行ってくれ。子育ては初めてだから、俺も本を買っておきたい」

「ん・・・一緒行こうな」


そうだよな、当然ながらカラ松は妊娠も出産も子育ても全部が初めてだし、正直男の身体で妊娠するなんて常識じゃ考えられないし・・・カラ松もカラ松なりにいろいろ葛藤して、その結果俺の子を妊娠してくれたのだろう。





「・・・カラ松、愛してる」

「俺も愛してるぞ、ダーリン」


「どうか俺の子を産んでください」

「喜んで」

心底嬉しそうに笑うカラ松に、俺は情けなくもぼろりと涙を零した。







ベイビーベビー








・・・本屋行った帰り、ベビーグッズのお店にも行こうかな。



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