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※次男愛され。兄弟たちがカラ松に依存してます。



僕には怖いものが沢山ある。

学校に行く途中にある古い空家のひび割れた窓の向こう側が怖いし、真夜中のトイレが怖いし、人から嫌われたりするのも怖いし、何でもかんでも『怖い』に繋がってしまうから怖い。


そんな僕がこの世で一番怖いものが最近出来た。




「名前!一緒に帰ろう!」

「ひぇっ・・・け、結構です」


同じクラスの松野カラ松くん。にこにことした笑顔で近付いてきた彼に、僕はがくがくと震えた。

この様子からもわかると思うが、僕がこの世で一番怖い物は彼だ。



何処が怖いって?いや、別に彼単品だとそうでもないんだ。逆にこんな怖がりな僕に親しく接してくれる存在を、通常なら喜ぶはずだ。

けれど何が怖いって・・・





「ひぃっ!」

「どうしたんだ名前!また何か怖がっているのか!?」


「ややや、止めて松野くんっ、近づかないで・・・!」

「そんなに震えているのに何を言っているんだ!」


がくがく震える僕の肩を掴んで「大丈夫か!」と声を上げる松野くん。その向こう側には・・・





恐ろしい目で僕を睨む彼の兄弟がいた。






最初は僕も気付かなかったんだ。

怖がりな僕に「怖いなら一緒に居てやろう!」と言ってくれた松野くんは神々しさすら感じ、僕はすぐに松野くんに心を許した。


移動教室は一緒に行くし、昼は一緒に食べるし、帰りは一緒に帰るし・・・

けれどそんな中で僕は気付いてしまった。

僕に向く、10個の目に。


松野くんが六つ子だというのは有名な話で、松野くんとの会話の中でも彼の兄弟の話題は何度かあった。

でもしかしまさかそんな、松野くんの兄弟がこんなに恐ろしいものとは聞いていない。



どうやら彼等は自分の兄弟が兄弟以外の相手に優しくするのが非常に気に食わないらしい。

後から知ったのだが、松野くんに好意を抱いていた演劇部の女子生徒が援助交際をしているという噂が流れそのまま女子生徒は学校に来なくなったり、松野くんを可愛がっていた先生が生徒に手を出したと言う噂が流れて学校を辞めたり、後は松野くんに喧嘩を売った生徒が満身創痍にされたりなんやらかんやら・・・


知れば知るほど、僕は松野くんが・・・その後ろに控えている彼の兄弟が怖くなった。

あの10個の目に睨まれてから、僕は松野くんを避けた。避けようとした。


松野くんには悪いけど、僕は怖いことが嫌なのだ。

松野くんは悲しむかもしれない。怒るかもしれない。・・・そう思っていた時期が僕にもありました。


可笑しいことに、松野くんは僕が避けると逆に寄ってきた。避ければ避ける程僕に構って、僕に「大丈夫だぞ!」と声をかけるもんだからあの恐ろしい視線は恐ろしさを増すばかり。




実は松野くん、わかっててやってるんじゃないだろうか。


兄弟に嫉妬されるのが嬉しくって、そのダシに僕を使っているのではないだろうか。

優しい松野くんが実は腹黒な説が僕の中で浮上しはじめている今日この頃だ。






「名前が遠慮がちなのはわかっている!前に、帰り道にいる大型犬が怖いと言っていたじゃないか。遠慮せず、俺を頼ってくれ!」

いや、大型犬の話したのはもう随分前だし。僕が松野くんの怖さを知らなかった頃の話だし。犬よりもむしろ松野くんと一緒の方が怖いし!



「ほ、ほんとに大丈夫だから」

「・・・そうか」

お願いだから肩から手を放してと訴えようとしたところで、松野くんが俯いた。





「俺はただ、名前に頼ってほしいだけなんだが・・・」

「うぐぅっ」


止めて。僕の良心に訴えかけないで。

そんなことされたって、少し離れた場所から僕を睨みつけている松野くんの兄弟の誰かは変わらず怖いし、そもそも僕が怖がっているのは松野くんのせいだし・・・!」




「ぼ、僕の事は気にしないで。兄弟は?兄弟と一緒に帰った方が良いんじゃない?ほ、ほら、兄弟仲良くが一番良いと思うし・・・」

だから僕を解放して!




「兄弟にはちゃんと言ってあるぞ!親友と帰るってな!」

あ、死んだ。




どーりで今日は兄弟の視線がいつもに増してコワイと思ったよー、全部松野くんのせいだったんだー、わー、怖いよー、怖い・・・怖いよ!!!!!



「何で!?何でそういうこと言うの!?僕が怖がりって知ってるじゃん!止めてよそういうの!」

僕はついに声を上げた。がくがく震えながら半泣きで叫ぶ僕はさぞ無様だろう。嗤ってくれて構わない。構わないから手を放して。



「何を怖がって・・・はっ!そうか!」

松野くんがハッとした顔をして、それから満面の笑みを浮かべた。





「名前が怖がっているのが何かわかったぞ!名前は・・・俺が誰かに盗られるのが怖いんだな!」

「もう殺して・・・」


いっそ死んで楽になりたい。どうしてそうなったの、何がどうして?そういう結論に達するような要素なくなかった?僕が可笑しいの?もう僕どうすれば良いの?死ねば良いの?



「親友なんてなかなか出来るもんじゃないからな。俺も、名前という親友が出来たときはとても嬉しくて、名前の親友の座は誰にも渡したくないと思った。だから名前もそうだったんだな!俺は演劇部だから友達が出来る機会は多いし、何時か親友の座を脅かされるかもしれないと名前は怖くなったんだろう?本当に怖がりだなぁ名前は。でも安心してほしい、俺の親友はこの世の何処を探したって名前だけだ」

サイコパスだ。もう鈍感とかそういうの通り越してサイコパスだ。松野くん腹黒説がぶっ飛んで、サイコパス説が浮上してきた。


もうしゃくり上げながら泣く僕を松野くんがギュッ!と抱き締めた。あぁ、松野くんの兄弟が携帯を耳に当てて何か話してる。あぁ、他の兄弟を呼んだのかな?僕死ぬのかな?そうなのかな?





「名前!怖がらなくても良いぞ!俺がずっと一緒にいてやるからな!」

つまりは一生怖がれってことですね、わかります。







たすけてかみさま








「名前は本当に怖がりだ。今日も無理やり引っ張って行かないとなかなか歩いてくれなくて大変だった。泣きじゃくって『一人で帰るから』なんて、本当に遠慮っぽいんだ俺の親友は。なぁ兄さんはどうすれば名前がもっと素直になってくれると思う?」

「・・・さーねぇ。一発殴って言う事聞かせれば?」


「名前は怖がりだって何度言ったらわかるんだ!名前は優しくって繊細なんだ!俺が守ってやらないと!」

「へー、そぉ、ふーん」



あーあ、弟達がどんどん殺気立ってるのに気付かないのかよ、この次男様は。

可哀相になぁ、あの名前ってヤツ。ま、俺も殺気立ってるんだけどね。



あとがき

次男の惜しみない優しさは兄弟だけの特権なのに!と同級生主に嫉妬しまくりで殺しそうなレベルの兄弟松たち。同級生主は完全に被害者。
そのうちカラ松が『このドキドキ・・・まさか俺、あいつのこと・・・』な展開になって、兄弟たちに相談⇒同級生主の死亡率あっぷ

個人的にカラ松が幸せならまぁそれで良いやと思う今日この頃です。それからもう一つ、これは本当に個人的な話ですが、カラ松総攻めって良いなと思います。こんな話書いといてなんですが。あっ、モブカラの幸せな話も大好物です(こそこそ)



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