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僕はジャンが好き。

でもジャンはミカサが好き。


僕はジャンが好きだから、ジャンに幸せになってほしい。

ジャンが幸せになるにはミカサと結ばれなきゃいけないけど、そしたらジャンは僕のにならない。


僕のにしてしまいたいけど、ジャンはそれを望んでない。


でもでも、ジャンが好きなミカサはエレンのことが好きで、ミカサは絶対ジャンを見ない。






「・・・どーしたら良いんだろ」




「どうしたんだ?カイト」

「んー・・・恋の悩みー、みたいな?」



「は!?お、お前、好きなヤツいたのか!?」

「うん。まぁね」


というか君だよ、とかは口が裂けても言わない。




だってジャン、完全にノンケだし。


折角苦労してマルコと同等レベルの親友ポジション手に入れたのに、こんなことでオジャンになったら駄目だ。ジャンだけに。・・・うん、僕、今ちょっと動揺してるかもしれない。





「誰だよ!水臭いじゃねぇか!どの女子だ?教えろよ」


・・・ざぁーんねん。女子ですらないんだよねぇ。






「秘密」


「何でだよ!お前は俺が、み、ミカサのこと好きだって知ってる癖に・・・」




ほんのり頬を赤くして言うジャンが可愛らしくて仕方ない。


あぁ可愛いなぁ。愛おしいなぁ・・・



何でこんなに愛おしい子を、欲望のままに自分の手の中に収めてしまうことが出来ないんだろう。



ジャンを愛してるからこそ、一番幸せになってほしい。

僕といることがジャンの幸せに直結してくれないんだから仕方ない。



うん、仕方ないんだ・・・仕方な――






「お、おいっ!」


「え?どうしたの、ジャン」

突然僕の方を掴んだジャンに驚く。





「どうしたのじゃないだろ!何で・・・何で泣いてるんだ、お前」

「・・・?」



ジャンに指摘され、自分の頬に触れる。



吃驚だ。

僕の頬は濡れていた。頬の上にある眼からとめどなく涙が流れているせいだ。





「そ、そんなに悩んでるのか?俺で良かったら話聞くから、言ってみろよ」


心配そうに僕を見るジャン。



あぁ、こんな優しさも僕は好きになったんだ。


けれど今は、その優しさが辛くて辛くて辛くて・・・





「・・・ううん、何でもないんだ。ちょっと目にゴミが入っただけ。ジャンが気にするまでもない」


「っ・・・俺じゃ、頼りにならないか?」

「違う。僕は何よりジャンを頼りにしてるよ。けれど・・・この件は勘弁して」



ジャンが悲しそうな顔をしてしまっているのに気付いて、僕はつい目を逸らした。





「・・・そぅ、か・・・悪い。無理に聞き出そうとして・・・」

俯いたジャンが小さな声で言う。


その声があまりに悲しそうだったから、胸がギュッと締め付けられた。





何やってるんだろう、僕。


ジャンに幸せになってほしいから黙っているのに、そのせいでジャンを悲しませたら、本末転倒じゃないか。



これじゃいけない。

このままじゃいけない。


僕は今の状況を、どうにかしないといけないんだ。




でも、本当の事を言ってしまえば、ジャンは僕に失望するだろう。


親友だと思っていた相手が、まさかただのホモ野郎だったなんて・・・






「ジャン・・・」

「俺・・・お前には、一番幸せになってほしいんだ・・・だから、お前が悩んでる姿なんて、見てらんねぇよ・・・」


「・・・!!!!」




嗚呼ッ・・・




「ジャン」

僕はジャンの腕を掴んで引っ張る。


驚いたようにこちらを見たジャンに、僕は笑みが浮かんだ。



僕は笑った。泣きながら、笑った。





「・・・僕は幸せ者だね」

ごめんね。こんな僕で、ごめんね。


僕はジャンの頬に手を伸ばし、するりと撫でる。



ジャンはそれを無言で受け入れてくれて、僕はもっと泣きたくなった。




ごめんね。本当に、ごめんね。

僕は君が好き。好き過ぎるほど好き。好き過ぎて、愛おしい。



「ジャン・・・ぁのね」

「あぁ・・・」


ジャンの目を真っ直ぐ見る。


此処で目を逸らしちゃいけない。

逸らしたら、どんな言葉だって嘘になってしまうから。











「僕の幸せは・・・ジャンが一番幸せになってくれることだよ」










だから・・・


――君への想いは、ずっと胸に押し込めておくね。




愛してるよ、ジャン。



君を想うが為の悲劇



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