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こんなご時世だ。

ずっとずっと愛しい人と共にいれる、なんてことはほとんどない。


巨人に食い殺される死別か、それがなくとも貧困でどちらかが先に飢えで死ぬか・・・


どんなに想い合っても、お別れというヤツの影はすぐ傍にある。

幸せに笑いあうその隣にはお別れがある。






「カイト・・・話があるんだ」





思いつめた表情でそう言った、愛しい恋人のベルトルトに俺はどきりとした。

深刻な表情。一瞬にして思い浮かぶのは『お別れ』の言葉。


まさか、別れようとかじゃないよな?


そんなこと言われたら、俺きっと泣く。冗談じゃない、きっと号泣する。

プライドも何もかもを捨てて、ベルトルトの足にすがりついて泣き叫ぶだろう。



鬱陶しいと蹴られたとしても、俺は離れずに・・・


それでも離れることになったのなら、俺は次の壁外調査でわざと巨人の口の中に飛び込むだろう。








「ベルトルト・・・」

ベルトルトに連れられて、人気のない場所へ行く。

どうやら、誰にも聞かれたくない話らしい。



まぁ、そもそも周囲には俺とベルトルトの関係は明かしてはいない。

ベルトルトと一番仲が良いっぽいライナーは知っているかもしれないが、それ以外は知らない。


誰にも聞かれたくない話・・・やっぱり、お別れなのだろうか。




怖い。お別れなんて嫌だ。だったらいっそ、俺を殺してくれ。

独りぼっちは嫌だ。





「カイト・・・落ち着いて、聞いてほしい」


落ち着けるわけないじゃないか。

今にも涙腺が崩壊しそうなんだ。


ベルトルト、嫌だ、お別れなんて・・・




「僕、実は・・・」










――巨人なんだ。










静かに告げられたその言葉に、俺はぽかんとした。

ベルトルトはそんな俺を見て、悲しげに眉を下げる。




「ベルトルト、お前・・・」

「ごめんっ、カイト・・・やっぱり、嫌だよねッ、ごめんね・・・」







「そんな話かよ」




「え?」







「良かったぁぁぁあッ、別れようって言われるのかと思ったぁ!」


その場で脱力する俺に、唖然とするベルトルト。

良かった。俺の考えすぎだった。



「そんな話って・・・」

「俺にとっちゃ、ベルトルトにさよなら言われる方が嫌だって・・・マジで勘弁してくれよ・・・本気でびびったんだからな」


俯く俺にベルトルトは「ご、ごめん」と言う。




本当に良かったっ・・・巨人?何ソレ、別にどうでも良いわ。それよりベルトルトと俺の今後のが大事だ。

俺が大きく息を吐いたとき、目の前にベルトルトがしゃがみ込んだ。

どうしたんだ?と声を掛けようとすると・・・







「良かった・・・」

ボロボロと泣き始めるベルトルトにぎょっとする。







「ど、どうした、ベルトルト!」

「っ、カイトに・・・嫌われっ、ぅ・・・ちゃうかと、思ってた、から・・・」


「〜〜〜っ、あぁクソ!可愛いぞベルトルト!」

俺はベルトルトをがばっと抱き締めた。

ベルトルトも泣きながら俺に抱きつき返してくる。




あぁ、可愛い!好きだ!大好きだ!




「ぅっ、ひっく、僕の故郷に、来て、くれる?カイトっ」

「もちろん!ホントは俺の故郷に連れて帰りたいけど、俺の故郷はもうぶっ壊れちゃってるから、ベルトルトの故郷に行く!」


泣きながら問いかけてきたベルトルトに、俺は特に考えずにそう返事をした。だってベルトルトの故郷なら、きっと良いところだと思ったから。



もしも俺にとって悪い環境でも、ベルトルトがいるなら良い環境だ。

あぁ!お別れじゃなくて良かった!!!!!























ドォォオオンッ!!!!!


激しい衝撃音と叫び声。



「・・・超大型巨人」

ぽかんっとしながら目の前の光景を見る。


周囲が騒がしい。だが、俺は超大型巨人を見つめたまま動けないでいた。



あ、ベルトルト、巨人になっても普通の巨人より大きいなぁー、あはは・・・


・・・わぁお。

ぽかーんっとする俺に、超大型巨人の手が迫ってくる。



周囲が「カイト!逃げろ!」と叫んでいるが、何で逃げる必要がある?




「ベルトルト!」




俺は笑顔で腕を広げた。



超大型巨人の目が少し柔らかく笑ったような気がしたと思えば、俺は超大型巨人の手の中だった。







幸せの隣にお別れ



(目が覚めたら滅茶苦茶高い木の上でベルトルトに膝枕してもらってた。同期のエレンとユミルのドン引きの目が忘れられん。だがやっぱりベルトルト愛してる)


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