蒼い古き服装
あれから何日が経過したのだろうか。
案外、あまり日付は経っていない。
相変わらず夜になるとやってくるリーマスを、○○は相変わらずの笑顔で受け止める。
膝の上に座っているリーマスが、徐に「ねぇ、○○さん」と呼びかけてくる。
「○○さんは着替えを持ってないの?」
「ぅーん・・・そうだね」
曖昧に笑った○○は、何時も同じ格好をしている。
赤毛の少しだけ長い部分を青い紐でくくり、黄土色のツギハギだらけのズボンと、まるでローブのような深い蒼の上着を着ている。
その上着も、何処かくたびれたようで、ところどころ穴も開いている。
見る人から見れば、○○の格好は酷くみすぼらしい。
「僕の服をあげようか?」
親切心から、リーマスが何気なく口にする。
「・・・たぶん、サイズが合わない」
それもそうだ。
リーマスは「そうだね」とちょっと笑う。
「今はまだ良いけど、もうそろそろ冬がくる。この叫びの館・・・寒いでしょう?」
「俺は大丈夫」
笑顔でいう○○に「でも・・・」とリーマスが渋ったような顔をした。
「じゃぁ、せめて毛布だけでも持ってこさせてよ。僕、○○さんの役に立ちたい」
「気持ちだけで大丈夫だから」
「・・・お願い」
ギュゥッと○○に抱きつきながらいうリーマス。
そんなリーマスを優しく撫でながら、○○は「じゃぁ・・・お願いしようかな」と笑った。
「うん!」
嬉しそうに頷くリーマスをそっと抱きしめ、○○は微笑む。
「ついでに、食べ物沢山持ってくるよ」
「あまり無理はしないで」
「無理なんて、してない。○○さんに喜んで欲しいから・・・」
純粋な言葉。
リーマスはちらっと○○を見る。
本当は、拒絶されてしまわないか不安でしかたない。
その感情を読み取ったかのように、○○は笑って「有難う」と言った。
その一言に、リーマスは安心させられる。
○○は不思議だ。
リーマスを心の底から安心させる。
ホグワーツに入って、友人も出来たリーマス。
けれど、まだ自分が人狼であるということは話していない。
大切な友人だからこそ、話したら離れていってしまうかもしれないという不安で一杯なのだ。
その不安も、○○と一緒にいれば、幾分かほぐれてくれる。
「○○さん・・・」
「なんだ?」
「・・・呼んでみただけ、です」
「フフッ・・・」
○○の腕の中でそっと目を閉じたリーマス。
しばらくして聴こえる寝息。
「・・・あぁ・・・寝てしまったのか」
ちょっとだけ困ったような顔をした○○は、眠っているリーマスの頬をなでる。
「どうしたものか・・・」
困ったような表情のまま、○○は呟く。
「・・・しばらくしたら起こそう」
一晩を此処で過ごさせてしまったら、誰かが不信に思うかもしれない。
穏やかな表情で寝ているリーマスには悪いが、いくらかしたら起こすしかない。
しかし今は・・・リーマスを優しく抱きしめてやっていた。
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