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004




やけに温かかった。

良い香りもする。



「ん・・・」

ゆっくりと目を開けた僕は、少しだけ驚いた。


僕は何時の間にベッドまで来たのだろうか。

あんなに酷かった傷の上には、どれもこれも綺麗な治療が施されている。





ガチャッ

「起きたか」


「!・・・誰だ」

部屋に入ってきたのは、良い香りのする器を持った男だった。

穏やかな微笑みを浮かべ、僕を見つめている男が、そっとこっちに近づいてくる。


僕はハッとしてベッドの端まで逃げた。





「く、来るな・・・」

「大丈夫。心配することは何もない」


「ぁ・・・」

差し出されたのは、温かなスープだった。



「さぁ、温かいうちに」

そっとベッドに戻される。

優しい、温かな手だった・・・



震える手でスープを掬う。

そのまま口に入れて、飲み込んだ。


「おい、しぃ・・・」

「良かった」

穏やかに笑った男が、そっと僕の頭を撫でた。


それが酷く優しくて、何だか懐かしさすら覚えて・・・





「ッ、ぅ・・・ぁ・・・」

目の前がどんどん歪んでいく。


ずっと、泣かなかったのに・・・

泣いたら駄目だ。壊れてしまう――






「泣いても良い」



「ぁっ」

スープの皿が脇に置かれ、ギュッと抱き締められた。



「やだっ、離――」

「今まで、よく頑張ったな」

ツゥッと、頬を涙が伝った。


そんな僕の背中をぽんぽんっと優しく叩き「もう大丈夫だ」とその男は笑った。


笑った顔がとても綺麗で、安心できて・・・

何故僕はこの男にこんなに安心できるのか、不思議だった。







しばらく涙を止めることが出来なかった僕。

まるで、今まで押し込めていた涙が一気に流れ出したようだった。


男は僕が泣き止むまで、ずっと僕を抱き締めていた。

時折「大丈夫。大丈夫だ」と言いながら。





「・・・で、お前は・・・一体」

冷めてしまったスープを見ながら「また温め直さないとな」と言いながら男は笑う。


そっとスープに手をかざしたかと思えば、ふわりと湯気が出た。



「む、無言で魔法を・・・」

「魔法?あぁ、そうか。魔法に見えなくもないか」

くすっと笑った男が「ほら。食べるんだ」とスープの掬われたスプーンを差し出してくる。




「じ、自分で食べれるっ」

「そうか?残念だ」


バッと男からスープを奪い、飲んだ。

やっぱり美味しい・・・




「これ、お前が・・・?」

「あぁ」


「けど何で・・・そもそも、何故僕にこんな・・・」

「『助けて』と言っただろう」

僕は大きく目を見開く。





「それに私は約束した。“絶対に助けてやる”と」





強い瞳。

その目が僕を射抜く。


よくよく考えれば、その男の声は夢の中の声と酷く似ていた。

力強く、それでいて優しさに溢れた・・・




「私の最も大切な者を・・・助けに来ないわけがないだろう」

「ひ。人違いじゃ――」

「私を呼び出せるのは・・・もとよりお前だけだ」



呼び出す?

僕の頭には【神の召喚】の文字が浮かんだ。



「まさか・・・」

驚いた顔をする僕を、男は優しい目で見て、笑った。





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