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001




『――』

誰だ?


『約束しよう』

何を?


『もしも来世でお前が悲しい目に遭った時は、私が絶対に助けてやると』

何故?


『私にとってお前は大切な者だ。この約束は絶対に守ろう』

どうやって?


『お前の悲しい顔など見たくはないのだ。だから・・・笑え、――』

そんなの無理だ。

笑えるわけがない。


だって僕は・・・――







ガバッ

「・・・変な夢だ」


布団から起き上がった僕は、前髪をぐいっとかき上げ、ため息をついた。

嫌な夢ではなかったが、不可解な夢には変わりない。


ベッドを降りて洗面台で顔を洗う。

洗面台の鏡に映った僕の顔は、まるで死人のようだった。


「・・・滑稽だな」

昨夜は制服のまま眠ってしまった僕。


その制服の下にのぞくのは、気色の悪い色。そして真っ白な包帯。

どれもこれも僕自身じゃ到底つけられないような傷だ。

僕は僕にこの傷をつけた奴らのことを思い出しつつ、グッと奥歯を噛みしめた。



考えるな。心を殺せ。

まるで呪文のようにそう強く念じ、洗面所を後にする。



「ぁ・・・」

先ほどは気づかなかったが、部屋の窓に一羽の梟が止まっていた。


それがリリーの梟だと気づいた僕は、梟にお礼のクッキーを渡しつつ、届けられた手紙を見た。

そこに書いてあるのは、僕が元気にしているかどうか、ごはんはちゃんと食べているか、そして――





「【クラスの人とは上手くやれてる?】なんて・・・」


無理な話だ。と自嘲気味に呟く僕の手に、梟がすり寄ってくる。主人に似て、僕を気遣ってくれるのか・・・

僕はその梟をそっと撫でてから「すぐに返事を書く。少し待っていてくれ」とお願いした。


必要最低限のものしか置かれていない机の上に羊皮紙を広げ、羽ペンを取り出す。





「リリー・・・」

大丈夫。僕は元気だ。


こちらの学校では羊皮紙も羽ペンも使わない。だから最初は手古摺ったが、今ではもう慣れた。

リリーも元気でやってくれ。癪に障るが、何かあったらポッターたちを頼ると良い。

リリー・・・



「手紙、有難う」

最後の最後でそう締めくくる僕。




羊皮紙を梟の脚に結び付け「よろしく頼む」と言った。

窓の外へと羽ばたいて行った梟の後ろ姿に、僕はきゅっと口をつぐんだ。


「僕も・・・あんな風に飛び出せたらな」

なんて、無理な話だ。

だって僕は・・・



「・・・あぁ、そろそろ学校に行かないとな」

僕は・・・

















「お!“嫌われ者”のご登場だぁ!」

「アイツ、全然懲りないよねぇ」

「菜花に謝れっつぅーの」

「マジウザいよねそういうの」

「おーい、スネイプ。どうして死なないんだー?ギャハハッ」



「・・・・・・」

「おい、黙ってんじゃねぇぞ」

「シカトかよ。良い身分だよなぁ、お前」


ドスッ

「ぅ・・・」







僕は・・・

この学校の生徒に、随分と嫌われたらしい。


飛び出せるような羽なんて、当の昔に奪われていた。





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