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005




「食事だ」

目の前に差し出される料理。




「・・・いりません」

「食べるんだ。もう何日も食べてない」


あぁ、もう何日も経ったんだ。

毎日一日中、ずっと膝を抱えていたから、日にちの感覚なんかわからない。


薄暗い部屋の中じゃ、今が朝なのか昼なのか夜なのか・・・



この部屋を出入りするのだって、ジョージョーと呼ばれた人と、この人だけに限られる。





トリコさんの底なしの明るい笑顔を見たい。

ココさんの僕を気遣う優しい笑顔を見たい。

サニーさんの自信に溢れた笑顔を見たい。

ゼブラさんのちょっと怖いけど何処か安心する笑顔を見たい。


ホテルグルメの皆の顔も見たい。リンさんも、それにそれに・・・


あぁ、思い出せばきりがない。






「毒が入っているとでも思っているなら、それは大きな間違いだ」

「・・・別に、毒が入ってるかなんて、疑ってません」


殺すなら、もっと手っ取り早い方法があるだろうから。

・・・あぁ、何でトリコさんたちは助けに来てくれないんだろうか。苦戦してるのかな?


じゃぁ僕、もっと待つから。

早く助けてよ・・・トリコさんッ。






「食べないと、辛いだろう」

「・・・すぐに、トリコさんたちが助けに来てくれます。だから・・・それまで・・・」


締め切ったこの部屋の隅っこだけをジッと見つめる。


此処に連れてこられてから、この部屋を一歩も出ていない。

だから、外も景色も随分見てない。





「助けに来ないかもしれないとは、思わないのか」


静かに言った彼に、僕は動揺なんて一切しなかった。

だって、だって・・・




「・・・信じてますから。トリコさんたちのこと」

見た目が変わってしまっても、トリコさんたちなら、きっとわかってくれる。

だって、トリコさんたちは僕の大切な・・・






「・・・此処に置いておくぞ」

コトッと傍に置かれるトレー。


けれど、僕がそれに口をつけることはない。

たった一人だけになった部屋の中で、僕は小さな声で「トリコさん・・・」と呟く。





・・・それにしても、トリコさんたちは何時助けにきてくれるんだろう。


僕は、何時までこんな場所にいなければならないんだろう。

助けてトリコさん・・・

早く此処から出て、トリコさんと一緒にハントに・・・








「・・・トリコさん」

僕が今此処でこうやって心を保っていられるのは、トリコさんが助けてくれると・・・――信じていたからだった。





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