004
「取りあえず一度死は体験したからわかるだろうけど、この街は死んでも生き返る、生死を繰り返す街だ」
「あぁ、そうだね」
・・・まぁ、本当は二度目の死だけど。
「昨日新しく此処の住人になったのは二人。お前と――□□っていう女の子だ」
私は大きく目を見開いた。
「ど、どうしたんだよ」
姿だけではなく名前も?
そんなことってありえるのか?
「フリッピーの知り合いだったらしくて、昨日からずっとフリッピーが看病してるんだ。フリッピーのあんなに嬉しそうな顔・・・ちょっと吃驚した」
小さく笑ったハンディ。
けど私の心は穏やかじゃない。
折角会いに来たのに、こんなのってあんまりじゃないか?
「ぁー・・・ぇーっと、今日はランピーがバイトでさ、代わりに俺が街を案内することになったんだ。どうだ?」
「・・・お願いしようかな」
「おぅ!」
ニカッと笑ったハンディに少し力なく笑い返し、私は少し乱れた髪を整える。
服装は昨日のままで、服にも汚れが少し付いていたが、コートが黒だったため特に気にする必要もなかった。
「行こうか、ハンディ」
そういって扉を開くと「おぅ」という返事が返ってくる。
ハンディの隣を歩きながら、街を観察する。
フリッピーはこの街のことをあまり詳しくは話していなかった。
何故かといえば、フリッピーも私も、お互いのことばかり話していたから。
たとえば好きな食べ物は何かとか、もし一緒に暮らせたら何がしたいか、とか。
フリッピーはチョコチップクッキーが好きで、もし一緒に暮らせたら一緒に作りたいと笑顔で言っていたなぁ・・・
「・・・会いたい」
「ん?何か言ったか?○○」
「いや、何でもない」
フリッピー・・・
早く気づいて欲しい。
君に絶対に会いに行くと約束をしたのは私だ。今君が看病している女の子じゃないよ。
「此処が公園。お、丁度遊んでるな」
ハンディが「来いよ」と言って私を公園へと導く。
そこに居るのは、数名の子供達だった。
「あ!ハンディ!」
黄色いパーカーを着た子供がこっちに気付き、声を上げる。
すると芋づる式のごとく子供達が次々にこちらに気付き、全員がよってきた。
「ねぇねぇ!誰、その人!」
「わぁ、大きい!ランピーみたい!」
「名前何て言うの?」
「甘いお菓子好きー?」
「付き合ってる人とかいるのー?」
・・・子供って好奇心旺盛だなぁ。
私は苦笑を浮かべながら彼らの目線に合わせるようにその場にしゃがみ込む。
「私は○○。昨日この街の住人になったんだ。甘いお菓子は結構好き。付き合っている人はいないけど、好き合っている人はいる」
ピンクの可愛らしい服装をした女の子が「まぁ!」と目を輝かせる。
顔にそばかすを散らした男の子が「ヒーローは好き?」と聞いてくるから、私は「結構好きだよ」と返事をした。
「あのね、あのね、僕はガドルス!」
黄色いパーカーの子がガドルスか。
「私はギグルスよ!」
ピンクフリルの子がギグルス。
「俺はトゥーシー」
そばかすの子がトゥーシー。
「イヒヒヒッ・・・僕はナッティだよぉ」
おしゃれなのかわからないが、髪の毛に飴とかをくっつけてる、全体的にちょっと甘い香りのするのがナッティか。
「僕はスニッフルズです。スニフとお呼びください」
眼鏡の知的そうな子がスニフ。
よし覚えた。そして・・・
「・・・君は?」
「ヒッ!・・・ぼ、僕はっ、その・・・」
びくびくと震える彼?いや、彼女?に私は出来るだけ優しく笑いかけた。
「慣れるのはゆっくりで良い。けど、名前だけでも教えてくれる?」
「ぅ、うん・・・僕っ、・・・フレイキー」
消え入りそうな声で自己紹介をしたその子ににこっとしながら「よろしく、フレイキー」と言った。
少しだけほっとした顔をするフレイキーに、内心私も安心した。
「よろしくね、皆」
出来るだけ優しく言えば、皆笑顔で返してくれた。
この街の子供たちは良い子そうだ。
「ねぇねぇ○○!皆でサッカーしようよ!」
「お。じゃぁ俺は審判な」
早速楽な仕事をしようとするハンディに苦笑を浮かべつつ、良いよと返事をした。
が、そこは私が軽率だったらしい。
「わぁぁぁぁあああ!?!!?!?!?」
「きゃぁぁぁぁあああああッ!!!!!!!!」
どうやら彼らの身体は私が思っていた以上に軟だったらしい。
私が蹴ったボールを受け止めたガドルスが骨折し、慌てて駆け寄ったトゥーシーがこけて内臓破裂、それを見て悲鳴を上げたギグルスが跳ね返ってきたボールでつぶれて、バウンドを続けるボールから逃げ惑うスニフとナッティーとフレイキーが潰れ・・・
一気に公園は地獄絵図を貸した。
「・・・気にすんな、いつものことだ」
「・・・今度からは、ボールを蹴るときはもっと注意するよ」
地獄絵図を見ながら呆然としていた私に、ハンディは慰めるような言葉をかけた。
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