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001




毎日夢を見ていたの。



『貴方は誰?』

『僕は・・・――』


『私は□□って言うの。ね、一緒にお話ししよう?』

『けど、僕は・・・』


『私と話すのは嫌?』

『ち、違うよっ、けど僕は・・・汚れてるから』

『そんなことない。まだ私、貴方のこと何にも知らないけど、貴方の目は優しいから好き』

『・・・有難う』




幼い頃から続く夢。

夢の中に出てくる彼は何時も悲しそうな顔をしていた。


けれど話し続けると、何時しか彼も少しずつ笑ってくれるようになった。

それが嬉しくて嬉しくて・・・





『ねぇ□□・・・』

『なぁに?』


『君はどうして、僕の夢の中にいつも出て来てくれるの?』

『これは私の夢でもあるから、私からしてみれば――が出て来てくれることが不思議だよ。嬉しいけどね』

『そうなんだ・・・でも、ちょっと残念』


『何が?』

『夢の中だけじゃなくて・・・現実でも会いたいよ。君に、ずっと一緒にいて欲しいから・・・』

『嬉しい。私も――とずーっと一緒にいたいわ』

『ほ、本当っ?』



『もちろん本当。私、――のこと大好きだから』

『ぼ、僕もっ!僕も好きだよっ』


何時の間にか夢の中の彼に恋をしていた。


夢の中での出来事は全て鮮明に覚えていて、それが当たり前になっていた。

夢の中の彼はあまり成長しないけど、私はどんどん成長していく。




高校生ぐらいになった時だ。


『□□・・・』

『なぁに?』


『僕、とある街に住むことになったんだ』

『引っ越し?へぇ、どんなところ?』

『凄い街だよ。不思議な街』


『近所の人とかと仲良くなれそう?』

『うん。皆優しい人で・・・けど、怖いんだ』



『何が?』

『僕の中にいる“彼”におびえて、皆近づかなくなるんじゃないかって』




“彼”という存在は知っている。

傷ついた彼の中にいる、やっぱり傷ついた人。





『もしもそんなことがあっても、私は――を怖がったりしない』

『うん・・・□□、その・・・好き』


『私は愛してるよ』

『〜〜〜っ、は、反則だよ』

『あははっ、――は可愛いなぁ』




誰よりも信頼している彼。

現実の世界で嫌なことがあろうとも、夢の中の彼と話すと全て忘れてしまうんだ。


愛おしい彼、可愛い彼・・・





『□□・・・会いたいよ』


ある日彼は夢の中なのに血だらけで立っていた。


私と彼しかいない空間が、真っ赤に染まっている。

彼はぽろぽろと涙を流しながら、私に手を伸ばしてくる。





『触れたいよ、□□。僕を抱き締めて欲しいっ、僕に触れて抱き締めて・・・ずっと離さないで欲しい』

『・・・・・・』


『お願いっ、会いたい!会いたいよ□□!!!!僕、□□がいてくれないとっ、じゃないと・・・』



その場に崩れ落ちた彼に触れたくて手を伸ばす。

けれどこれは夢だから、触れた感覚なんて存在しない。


全ては脳の中の映像なのだから。



映像には触れられない・・・

それを今更痛感してしまった。





『――』

『・・・□□』


『会いに行く』

『!!!!』



『約束する。どうにかして、――に会いに行く。それまで、待ってて?』

『ま、待つ!待つよ!僕も彼も、いくらでも待ってるから!だから・・・』

『うん。大丈夫、――のこと、絶対抱き締めてあげる』

『うん・・・□□っ、大好き』


幸せそうに笑う彼に、触れることも出来ない癖にキスの真似事をする。





『会えたら、本当のキスでもしようか』

『〜〜〜っ、□□の馬鹿っ』


『あははっ、――はやっぱり可愛い』

彼が照れて真っ赤になったのを最後に、今日の夢は終わる。

彼が名残惜しそうな顔をしているけど、きっと大丈夫・・・









私は笑顔で手を振り・・・目を覚ました。


「・・・・・・」

私はベッドからむくっと起き上がり、周囲をきょろきょろと見渡した。

部屋に広がっているのは・・・血。

血血血ちチ血血チ血血血血ち血ちちチチチちち血血血ちチ血血チ血血血血ち血ちちチチチちち血血血ちチ血血チ血血血血ち血ちちチチチちち・・・!!!!!!!!!!!!!







「会いに行くわ・・・――フリッピー」


私は血を流していた手首をちらりと見て嗤い、

止めを刺すように自分の喉を切り裂いた。





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