004
《スタージュンSIDE》
嘘だ。嘘だ。
そう言って膝を抱えてしまった青年をただ見つめる。
あの小松と言う料理人にグルメ細胞を移植した後・・・
一つの異変が起こった。
あの料理人は・・・――二人になった。
一人は私の記憶している姿の料理人。
もう一人は・・・
あまりにその料理人とかけ離れた容姿をしている、青年だった。
唯一同じなのは、髪の色ぐらいといったところか。
その髪でさえ、さらさらと艶やかだった。
まさかと思い、ジョージョーに分析された。
料理人の方には、グルメ細胞は・・・まったく存在せず、その代わりに青年は・・・――体の大半がグルメ細胞によって機能していた。
まさに、グルメ細胞の力をフルに活用し、その青年は存在したのだ。
もっと驚くべきことは、青年の頭には、あの料理人の記憶がそのままあるということ。
既に私の興味は、料理人よりもその青年に移され・・・
『この料理人を解放してやれ。おそらく、すぐに四天王が発見する』
そうジョージョーに命令し、料理人を解放。
青年だけをその場に残した。
目が覚めた青年は、案の定「帰してください」と言いながら泣いていた。
鏡を見せれば驚愕し、そして否定した。
「トリコさんッ、トリコさんっ・・・」
膝を抱え泣きじゃくる青年は、必死であの男の名前を呼ぶ。
「トリコさんっ、ココさんッ、サニーさん、ゼブラさんっ――」
次々と名前を呼んでいく青年を私はただ見つめていた。
「ど、ぅして・・・どうして、こんなことに・・・?」
涙に濡れた真紅の瞳に息をのんだ。
どんな宝石にも引けを取らないその瞳から目が離せない。
「帰してくださいッ、トリコさんたちのところへッ」
「それは無理だと思うぞ」
なぜなら・・・――もう、料理人は解放したのだから。
二人目など、本来いないのだから。
「・・・ぇ?」
「まぁ・・・いずれわかることだ」
「ま、待って!」
部屋から出て行こうとする私に手を伸ばした青年。
チラリッとその青年を見てから、すぐに私は部屋を出た。
バタンッ
閉じた部屋に鍵をかけ、私はゆっくり目を細めた。
「・・・良いものを手に入れたかもしれないな」
部屋の中から、泣きじゃくる声が聞こえる。
それを無視して、私はジョージョーに「監視を頼む」と言って、その場を離れた。
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