001
私は目が見えない。
生まれたときから、目が見えない。
だから、世界というものがどんなものか、私は知らない。
今は亡き両親が残してくれたポケモン――エーフィも、手触りは分かるものの、その姿はわからない。
手で触れて・・・形は良く分かった。けれど、色が分からない。
人に尋ねたことがある。私のポケモンは、どんな色をしているのか。
人が教えてくれる色は、私の知らないものばかり。
君のエーフィは、薄紫で、とても綺麗な毛並みをしているよ。
わからない。
紫がわからないし、薄紫も分からない。
どんな色なのだろう。
その興味がなかったわけではないけど、見る事はできないとわかりきっていたから、その時の私は「そうなんだ」とだけ笑っていた気がする。
目が見えないから、私は旅に出る事は無かった。
両親が残してくれて家で、エーフィに助けられながら生活している。
目が見えなくても、音を自分で反響させるという方法で、私はなんとかやっていける。
外に買い物に行くときは、必ずエーフィが私の横を歩いてくれる。
私が危ないときは、鳴いて知らせてくれるんだ。
「エーフィ・・・何時も有難う」
私は見えないエーフィに向かって微笑んだ。
そんな私の手を、エーフィが優しく舐めた。
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