002
目を覚ますと、そこにはずば抜けて綺麗な顔してる、二次元キャラがいましたとさ。
・・・なんじゃそりゃ。
可笑しいのは目の前の光景だけではなかった。
頭翅と共に湖の近くへと行けば、そこに映し出されている姿は、俺の知っている自分の姿とは大きく異なっていた。
いや・・・頭翅が俺のことを『アポロニアス』と呼んでいたあたりから、可笑しいとは思っていたんだ。
湖の澄んだ水面に映された、紛れもなく・・・――アポロニアスという堕天翅だった。
いや、そっくりそのままというわけでもないっぽい。
長い赤毛だったり、何か過ごそうな翼は、まんまアポロニアスだけど・・・
顔の造形とか、ちょっと違う。こう・・・なんか目がへたれっぽい。
い、いやまて・・・人によっては『優しそうな目』って表現してくれるはずだ!!!!そう信じている!!!!
にしても・・・
まさか俺は、本当にアポロニアスに成り代わってしまったのか?夢オチという可能性は?
・・・笑い話にもならないな。
「アポロニアス?どうしたんだい?」
何時までも湖の水面を見詰めている俺を不思議そうに眺めている頭翅。
「・・・何でも無い、頭翅」
俺は力なく首を振った。
状況についていけないんだ・・・
「気分でも悪いのかい?大丈夫?少し横になる?」
「・・・ぃ、いや・・・大丈夫だ」
・・・なんか、頭翅が凄く献身的なんだけど。
いや、待てよ・・・
たしか、頭翅って、アポロニアスの・・・“許嫁”だったんじゃ・・・!?
えぇぇぇえええっ!!!???!?!
確かに目の前にいる頭翅って美人だけど、男だよな!?俺も男だよな!?
それって、許嫁として成立するのか!?大丈夫なのか!?
「やっぱり、今日のアポロニアスは可笑しい。ゆっくり休んだ方が良い」
心配そうに眉を下げながら俺の背中に手を添える頭翅に、俺は「・・・すまない」と謝った。
「いいんだよ。私に出来ることなんて、これぐらいなんだから」
小さく、そして優しく微笑んだ頭翅に俺は『何この堕天翅、可愛いぞ』と吃驚しながらも「有難う」と呟いた。
「そこの木陰で一先ず休もう」
頭翅に手を引かれるがままに木陰に行けば、俺はゆっくりと木陰に腰を下ろした。
正直、今の状況についていけていない俺は、出来ればこのまま夢オチを希望している。
きっと朝目が覚めたら「ははっ、変な夢だった」と笑って大学へいけるはずだ。
きっとそう。きっと・・・そう自分に言い聞かせないと、何だか心が折れそうだった。意外と、俺のハートは繊細なんだよっ!
「膝を貸してあげるよ、アポロニアス」
何処か愛おしそうに俺を見詰める頭翅の言葉を断ろうにも断れず、俺は頭翅の膝に頭を乗せて、目を閉じた。
男の膝なんて・・・と思ったが、意外にも頭翅の膝は暖かくてふんわりと良い香りもして・・・俺は、次第に睡魔に襲われた。
嗚呼、酷く眠い。
睡魔に逆らう気も起きず、俺はそのまま睡魔に身を任せた。
いっそのことこのまま、普段どおりの日常に戻れ。戻ってくれ。
「おやすみ、アポロニアス」
そっと撫でられた頬に、俺は完全に眠りについてしまった。
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