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002




顔の真横に突き刺さっている包丁。

それをボーッと見ながら、俺はカーテンの隙間から部屋を照らす光を感じていた。




「○○さん・・・朝ですよ」

「俺を起こす気ないだろ、司郎君。どちらかといえば、永遠の眠りにつかせようとしてるだろ」


俺の腹の上に跨っているのは、顔の真横に包丁をぶっ刺した張本人。――従兄弟の司郎君だ。

ドスッという音で目覚めた俺。もちろん、爽やかな朝とは言いがたい。




此処は何処だっけ。

そうか、此処は病院の近くにある司郎君のお家だ。


さて。何で俺は此処にいるんだっけ・・・

嗚呼、そうだ。司郎君に部屋を用意されてたんだ。勝手に。で、勝手に俺がこの部屋に住まうことが決定してしまっていた。


まぁ、俺が此処にいるのは休暇の間だけなのだから良いけれども・・・






「朝ごはん・・・出来てますよ」

何処か狂気を孕んだ目で俺を見つめてくる司郎君に「そっか」と言いながら起き上がろうとする。



「・・・とりあえず、腹の上からどいてはくれないだろうか」


「逃げませんか?」

「逃げない」

まぁ、逃げて良いなら全力で逃げたいのだが、それは口には出さない。

言えば、この包丁のぶっ刺された可哀相な枕のように、俺の身体にも穴が開けられてしまうだろうから。





俺の顔をジッと見てから渋々腹から降りた司郎君を見つつ、俺は起き上がる。


部屋から出ると、微かに良い香りが・・・

俺は誘われるように朝食の置かれているその場所へと近付き、席に着いた。





「食べて良い?」

「もちろんです・・・」


「いただきます」

手を合わせてから朝食を食べ始めた俺は、すぐに違和感を覚える。





「・・・・・・何入れたの?」

「・・・血を少し」


「だよね。ちょっと血なまぐさかった」

さも当然のように長袖に隠された自分の腕を見せてくる司郎君に溜息をつきつつ、俺は料理を食べた。





血なまぐさいといっても、ほんのちょっとだ。

司郎君も医者だし、こう・・・血液の病気とか?そういうのの検査はしてると思うし。


ん?俺って、ちょっとズレてるのか?






「美味しいですか?」

美味しいっていわないと何されるかわからないな。いや、美味しいけど。




「美味しいよ、司郎君」

「よかったです」

嬉しそうな顔をする司郎君に俺も笑う。






いきなり一緒に死んでください発言されて、しかもメスを振り上げられたのには驚いたが、間一髪でそれを避けれた俺。

司郎君も避けられたことで少し冷静?になってくれたらしく、俺は殺されることなく今を生きている。

生きてることが素晴らしいとはこのことか。



「司郎君。昨夜はお世話になってしまったが、今日は家に戻ろうと思うんだけ、ど――」



ドスンッと司郎君が机につき立てた包丁で、俺は言葉を止めた。

帰宅は許されないらしい。


・・・さて、家にどういう風に連絡すべきか・・・






「・・・○○さんの、ご両親には・・・俺から連絡しておきます。だから・・・」

「・・・わかったよ。家にはしばらく帰らない。だから、その包丁を片付けてくれ」


目を座っている司郎君をとりあえず落ち着かせようとする。

・・・ふーむ。これは、本気で自分の命を心配したほうが良さそうだ。



少しでも気を抜けばお陀仏なんて・・・

何時の間に、俺の人生はこんなデンジャラスになったのだろう。驚きだ。








「何処にも行かないでくださいね?○○さん」


包丁を机から引き抜き、そう小さな声で言った司郎君に、やっぱり俺は頷くしかなかった。





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