001
僕はよく死んでた。
きっと誰よりも死んでた。
1000の位までは覚えてた。
けどそれを超えてから良くわからなくなってきた。
何が何だからからないけど、とりあえず死ぬ時は物凄く痛いし、物凄く怖いってのはよく覚えてる。
今思い出しても怖いし、ガタガタ震えてしまう。下手すると胃の中のもの全て吐きだしてしまいそうだ。
そんな僕に、ある日突然異変が起こった。
僕は・・・――死ななくなった。
驚いた。ある日を境に、僕は死ななくなったんだ。
別に、不死身になったとかじゃない。
僕の身に、危険が降りかかってこなくなったんだ。
毎日周囲が死にまくる中、僕は生きている。
それはそれで怖いけど、前までのように痛い死に方をしなくて良いのには、ちょっとだけほっとした。
皆は死んで、次の日には元の生活に戻ってる。
この世界はそう・・・
皆死んで、皆生き返ってる。
あれ?これじゃ語弊があるかな。
生き返ってるんじゃない。“無かったこと”になってるんだ。全てがリセットされてる感じ。
だからこの間僕の隣で死んだカドルスもさっき普通に道を歩いていたし、この間フリッピーに殺されてたフレイキーも、何時も通りびくびくしてた。
彼らは自分が死んだことを覚えているのに、まるで覚えてないような素振りをする。
まるで死ぬってことが何でもないような・・・
死の恐怖を常に感じているのは僕だけ?
もしかしたら、僕が異常なだけで、本当は誰一人死んでいないのかもしれない。けどあんなにリアルに目の前で何人も死んでいるんだ。あれを妄想で片づけられるわけもない。
じゃぁ何で?
何故皆、あれだけ死んだのに、そうやって普通に暮らしていられるの?
僕だって最初は疑問には感じなかったんだ。
死んだのに生き返る、それはまた神様がチャンスをくれたのだと、ほっとしてた。
死んで生き返って、死んでまた生き返って、また死んで・・・
それを繰り返し過ぎた僕は、疑問を感じたんだ。
何故死ねないの?何度僕は死の痛みを感じれば良いの?って。
きっと・・・そんな疑問を持ってしまったから、僕は死ななくなったのかもしれない。
なぁーんて・・・
「・・・ただの空想かもしれないけど」
僕は小さく笑いながら空を見た。
地面は見たくない。
だって・・・
――地面はさっき事故で死んだ皆の死体が散らばってるから。
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