003
目が覚めたら知らない部屋にいた・・・何て、酷い冗談だ。
それが冗談ではないと僕に知らせたのは、目の前の机に置いてあるメモ用紙と【通帳】と書いてあるものだった。
机の隅っこに、申し訳程度に置いてある手のひらサイズの四角いもの。
これは知ってるぞ。確か本に書いてあった『けーたい』というヤツだ。
メモ用紙には、この部屋のことと通帳、携帯のことまで書いてあった。
読み進めれば読み進めるほど、僕は頭痛を感じる。
この家はマンションの一室で、僕のものらしい。
通帳には、生活に困らないだけのお金(凄い金額だった)が入っていた。
携帯に登録されている【めーるあどれす】は、どうやら今のところは神の分しか入っていないらしい。・・・あの神は、携帯を持っているのか。そっちの方が驚きだ。
確認のために玄関まで歩いて行って外の表札を確かめれば【Snape】と書かれていた。
冷蔵庫には食材が沢山入っている。・・・一応料理は出来るし、生活は出来るだろう。
クローゼットを開いて驚いた。
「この制服・・・!」
手に取ったのはブレザーの制服。
これも、本を読んだから知ってる。
これって・・・
「○○と同じ制服だ・・・」
ついついその制服を手に鏡の前に向かう。
自分の身体にぴたっと合わせて鏡を見る僕。・・・いや、柄じゃないのはわかってる。けど、どうしても見たかった。
ブレザーのポケットの中には、生徒手帳が入っていた。
生徒手帳の間には、何かの地図。おそらく学校への地図だ。
そこで気付く。・・・教科書は?
机を見ても無い。あるのはノート。
〜♪
「ぁ・・・」
たぶん『めーる』だ。
携帯を手に取って開けば【教科書は後日】という短い文章。
教科書が無いんじゃ、こっちの世界の勉強がわからないじゃないか・・・
小さくため息をついてから、ポストに入っていた新聞のようなものに目を通す。
「ぁ・・・読める」
どうやら神とやらは考えてないようで考えているらしい。
僕が読めないはずの文字は、見た瞬間に訳されたかのようにすんなり理解できた。
きっと、喋る言葉も同様なのだろう。
壁にかかっているカレンダーには今日の印が付いている。
明日は平日だから、きっと明日から学校に行くことになるんだ。
西洋の学校とは仕組みが違うから、気を付けなければ。
「・・・学校、か」
リリー達は、今頃どうしているのだろうか。
今の僕は意識不明の重体だ。
マルフォイ先輩は呆れてるだろうか。レギュラスに心配をかけているだろうか。
リリーは心配してくれているだろうか。ポッター達は・・・いや、あいつらはきっと僕がいなくてせいせいしているはずだ。
「・・・○○に会えるんだ。今はそれだけ考えよう・・・」
ギュッと唇を噛みしめた。
ブレザーを持ったままの手に力を込めてしまって、ブレザーにほんの少し皺が。
慌てて手で伸ばして、ハンガーにかけ直してからクローゼットに片付けておく。
窓の外は僕の知っている世界とはまったく違う世界。
短い間にいろいろありすぎたからか、疲れ切っていた僕は、風呂に入って適当に食事を取った後、そのまま寝てしまった。
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