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※典型的なトリップ夢の主人公ポジションになっちゃったセブルスの話。
僕は本を読む。
教科書だったり文庫本だったり・・・ほんの少し禁書も。
昔から本を読んでた。
その本はマイナーで、僕が知っている人間の中には同じ本を知っているヤツはいない。
沢山の本を読んできて、たった一冊・・・どんなに年月が経っても忘れない本がある。
昔、小さい頃・・・毎日毎日仕事で忙しい母親が、ほんの少しだけくれたお小遣い。
それをちょっとずつちょっとずつ貯めて、古書店で買った一冊の本。
『 Other story 』
まるで吸い寄せられるように手に取ったその本は、当時の僕には年上の・・・今の僕には同世代の青年の話だった。
幼いながらに、本の世界に心奪われた。
それこそ、リリーと出会うまでは、それだけが世界と言っても過言じゃなかった。
ホグワーツに入学して、寮生活になるとき・・・その本は何時でも読めるように、枕元に置いていた。
この本の何処が好きなのか、なんて・・・
語ってしまえば、きっと随分かかってしまうだろう。いや、誰にも教えない。この良さは、僕だけが知ってれば良い。
自分でも、少しオタクっぽいなと思ったことはある。頭の中でポッターが僕をからかうのが鮮明に想像できて、イラっときたのはよく覚えている。
この本の主人公の青年は、とてもクールで・・・格好良い。
東洋の人で、髪と目の色は黒。僕と一緒だ!と子供の頃はよく浮かれたものだ。
本の内容は、軽く暗唱できるぐらい読み込んでいる。
何度読んでも、文字の中の彼は格好良くて・・・
実は僕の初恋は彼だ・・・なんて、リリーも知らない。教えられるわけがない。
同じ寮の先輩のマルフォイ先輩も知らないし、後輩のレギュラスだって。ましてやポッター達には知られるわけにはいかない。
ホグワーツ魔法学校・・・低学年から高学年へと成長していく僕は、現実を見るように見るようにと努力してきた。
けれどただ一つ・・・
彼だけは、どうしても忘れられない。
「・・・会いたいな・・・――○○」
歩く階段の上。
文字の中の彼の名を呼んで、ちょっとだけ上を見た。
それがいけなかったのかもしれない。
ガクンッと足場が無くなったのは、僕が踏み外したから。
ぁ、という小さな声しか上げられなかった僕の意識は、完全にブラックアウトした。
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