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003




物語の主人公、モブ君との出会いは偶然だった。



同じクラスの影山茂夫、通称“モブ”の存在は前々から認識していた。

だが特に関わるようなこともなく、別に避けるわけもなく・・・ただのクラスメイトとしての関係を自然と保っていた。



そんなある日の放課後にあった掃除当番。


明らかに彼一人じゃ持ち切れないであろう量のゴミ袋を必死に引きずりながら教室を出て行くモブ君を見た。

どうやら他のクラスメイトにゴミ捨てを押し付けられてしまったのだろう。



別に手伝ってやる義理はなかったし、わざわざ手伝う程僕は人が良いわけでもなかったけど・・・

とりあえずその時手に持っていた箒を傍にいたクラスメイトに押し付け、教室を出た。





放課後の静かな廊下。モブ君の姿は見えなかったけど、足音がする方へと僕は駆けて行った。



「モブ君、手伝うよ――」



その時、僕は見た。

一人悠々と歩くモブ君と・・・“宙に浮く”ゴミ袋の姿を。


僕の声で振り返ったモブ君とバッチリ目があった。




「あ・・・」
「あ・・・」


お互いにその場で硬直する。

その間もふよふよと浮いているゴミ袋。




「え、えっと・・・」

明らかに挙動不審気味に視線を漂わせたモブ君は、しばらくの沈黙のあと「あ、あのね・・・」と口を開いた。







「 実は僕、超能力者なんだ 」







浮いていたゴミ袋が突然窓から出て行って、そこから見える場所にあったゴミ収集所へ音も無く置かれた。

それを視線で追っていただけの僕はゆっくりと口を開く。



「ふーん・・・そっか」

「えっ、それだけ?」


「まぁ、あるでしょ。そういうことも」




この頃既に、シミュレーテッドリアリティを患っていた僕は・・・この世界が二次元だと思っていた。

だから驚かなかったし、妙に納得していた。




彼が――“主人公”なんだと。




その後からだろう。

自然とモブ君と話す機会も増えて、何時しか“友達”という間柄になって・・・












「○○君、たこ焼き冷めちゃうよ?」

「あぁ、うん。食べる食べる」


「何だったら俺が食べさせてやっても良いぞ」

「モブ君、お茶貰っても良い?」

「うん。あ、師匠そこにある湯呑取ってください」

「おー。モブ、ついでに俺の分もな」

「はい、師匠」



とりあえず今の僕は、割と幸せな方なのかもしれない。







まぁ、所詮は二次元の話なんだけど。





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