003
ピピピピッ
「ん・・・」
枕元に置いてある目覚まし時計の音で俺は少しずつ意識を浮上させていく。
昨夜は昨日出た宿題に手間取ってしまい、結局寝るのが遅くなってしまった。
ふわぁっと欠伸をしながら目覚まし時計を止めて時間を確認する。
ぇーっと、今の時間は――
「やっべ!もうこんな時間かよ!!!」
バッとベッドから飛び出て、制服に着替える。
畜生ッ、寝坊するとか、マジねぇぞ。
朝食なんて食ってる時間ねぇぞ、これじゃ!!!
俺は朝食も食べずにカバンを手に家を飛び出す。
こんな時でも、戸締りはきっちりする。
家から学校まではそう遠くない。
全力疾走すれば間に合うか・・・
ギリギリで校門を通過。
後は教室まで直行!
「おぉ、□□。廊下は走るなよー」
笑いながら注意する先生に「すみませーん!」と謝りつつも、俺は足を止めずに教室まで走った。
ガラガラッ!!!!
「ハァッ、ハァッ・・・セーフ!!!」
「わぁっ!?ぉ、おはよう○○君」
「ん?おはよー、先導」
俺が勢いよく開けた扉の目の前にいたらしい先導が、吃驚した顔をしていた。
笑顔で朝の挨拶を済ませた俺は、自分の席について「はぁー・・・」と息をつく。
「だ、大丈夫?○○君」
「ん?あぁ、平気平気。ちょっと寝坊しちまってさ・・・」
「朝食は?」
「抜いた。時間なくって」
「ほ、本当に大丈夫?」
「平気だって。先導は心配性だな」
ははっと笑う俺に、先導は「ぉ、お節介だった?」と不安そうな顔をする。
「ばーか。そういう意味じゃねぇよ。心配してくれてサンキュな」
「ぅ、うん!」
少しだけ照れたような顔をして頷く先導を確認してから、俺は大きな欠伸をした。
「ぁ・・・この間はリンゴ有難う。エミも喜んでたよ。甘くて美味しかった」
「おぅ。それは良かったなぁー」
先導の妹、そういえばエミちゃんって名前だったな。
「エミが今度お礼をしたいって言ってるんだけど…」
「ぇー?別にお礼なんていらないって」
あのリンゴ、おばさんに貰ったヤツだし。
俺は再び欠伸をする。
「ご、ごめん。眠いのにこんなに話しかけて・・・」
「良いって、良いって。あんま、そういうの気にしなくて良いぞ。逆に、先導が喋りかけてくれたから、ちょっと目が覚めた。シャキっとしないとなぁ、シャキっと」
へらっと笑って大きく伸びをする。
ほっとした顔をした先導に俺は少しだけ苦笑を浮かべた。
「そういや・・・ヴァンガード、まだやってんの?」
「ぇ、うんっ!やってるよ」
「そっか。楽しい?」
「ぅん、楽しいよ」
そういう先導の目は輝いている。
「そぉか、それは良かった」
「○○君は・・・そのっ、やらないの?」
「んー・・・金と時間の余裕がなぁー」
「ご、ごめん・・・」
「いや。先導が謝ることじゃねぇって」
また俺に謝る先導に苦笑を浮かべつつ、今持ってる財布の中身を思い出す。
確か、今日のタイムセールのためのお金と・・・まぁ、カードパック一つ買うぐらいの残金はあるか。
けどまぁ・・・そんな余裕あるなら、貯金するし・・・
「ま。俺はカードゲームやる余裕はないってことで」
「ぅん・・・」
先導がちょっと残念そうな顔をしているのに気付いてはいたが、金がないのは事実だし、仕方ないことだ。
自分の席に戻って行った先導をチラッと見てから、俺は小さく息をついた。
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