002
「・・・よーっし、結構買えたな」
夕方、タイムサービスの時間をしっかり確認してからスーパーに行った俺は、戦利品という名の食材を手に歩いていた。
目的の肉はもちろんのこと、魚や野菜もしっかりキープ。
そんじょそこらの主婦の皆様には引けを取らない自信はある。
「あらぁー、○○君。今日も特売行ってきたの?」
「はい!今日も大漁でした」
声をかけてきたおばさんに笑顔で答えれば、おばさんは「良かったわねぇ」と笑った。
「そうだ!この間親戚から果物が沢山送られてきたの。いくつか貰っていって?」
「いいんですか!?助かります」
やばい。今日は本気で運が良いぞ。
「〜♪」
おばさんから袋いっぱいの果物をもらった俺は、ほくほくとした気分で帰路を進む。
あれ?
俺は前方を見て首をかしげる。
そこには見覚えのある後ろ姿。
「ん?おーい、先導」
「ぇ、ぁ・・・○○君」
やっぱり先導だ。
先導は俺に気付くと眉を下げて笑った。
コイツ、俺を見ると何時も眉を下げて笑うよな。
「買い物・・・?」
「おぅ。夕飯の買い出しにさ」
「沢山だね・・・」
「タイムサービスの戦利品だ。この量だと、一週間はもつかもな」
両手に持った買い物袋を見せて笑って見せる。
「お前はこんなとこで何してたんだ?」
「ぁ、ぇと・・・か、カードキャピタルに、行ってて・・・」
「へぇー。先導ってヴァンガードやるんだな。そんで?勝てたのか?」
「ぅ、うんっ」
「ふーん。やるなぁ」
ま、俺はヴァンガードやってないけどさ。
家計の切り盛りが大変で、カード買う余裕なんて、なーいない。
それにしても先導、相変わらず元気のないヤツだなぁ。
「ぁ、そうだ。コレやるよ」
俺は袋の中からリンゴを二つ取り出す。
突然リンゴを差し出した俺を見て、先導は「ぇっ、けど・・・」と同様した。
「お前、たしか妹ちゃんいただろ。その子と食べろ。美味いぞ、きっと」
ニッと笑って言えば、先導は「ぁ、有難う」と笑ってリンゴを受け取った。
「もっとシャキっとしろよ、先導」
笑顔でポンッと先導の肩を叩く。
「ぅ、うん・・・」
「んじゃ、俺は夕飯作らねぇーといけねぇし、もう行くから」
「うんっ、ばいばい○○君」
「おぅ、じゃぁな」
ひらっと軽く手を振り、俺はそのまま自宅へ帰った。
「ただいまぁーっと」
誰もいない家の中に俺の声が響く。
キッチンの床に買い物袋をドサッと置いてから、俺は制服から部屋着に着替える。
「はぁ・・・疲れた」
一日の疲れを感じつつも、夕飯を作るために俺はキッチンに立つ。
夕飯を終えたら、一旦風呂に入ろう。洗濯物も洗わないとな。
後は、今日出た宿題と・・・
「・・・カードなんて、やる時間ねぇしな」
先導がほんの少し嬉しそうな顔でカードを握りしめていたのを思い出し、俺は苦笑を浮かべた。
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