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本気で好きになった人がいました。


けど、運が悪かったのか・・・その人は男だった。

それでも本当に好きで好きでたまらなくて・・・



とても悩んだんだ。とても、とても。


その人を見ているだけでドキドキして、嬉しくなったり悲しくなったり・・・

見ているだけでも十分だと思えた時期もあったけど、もう限界だった。




苦しかったんだ。言ってしまえば、きっと楽になると思った。


だから・・・






――好きです、宮田さん。





ずっと焦がれて、ずっと好きだった宮田さんにそう告げた。


一瞬、驚いたように目を見開いた彼は、すぐにゆっくりと首を振った。






『貴方とは・・・付き合えません。すみません』






小さく、けれどはっきりとした断りの言葉。

悲しかったけど、仕方なかった。

彼は男で、俺も男だったから。


真面目に返事をしてくれただけでも、もうけものだ。


そう言って自分を慰めた。




大丈夫。もう吹っ切れた。明日はまた笑っていられる。

そう思った。外ではちゃんと笑えてた。



でも・・・家では泣いてた。

玄関から一歩家に入った瞬間、泣いてた。





泣くたびに、あぁ俺って本気で宮田さんのことが好きだったんだなって実感した。


けれど宮田さんを想うのはもう終わりにしなくちゃいけない。




俺が告白したその後、宮田さんは同じ医院の恩田さんと付き合うことになったと近所の人から偶然聞いた。

あぁ、やっぱり最初からこの恋が報われることなんてなかったのか、と・・・また泣いた。





宮田さんに迷惑かけないように、俺は告白なんてなかったように接した。


宮田さんも、俺と同じように告白なんかなかったように接してくれた。




全部元通り。大丈夫、大丈夫。

そう思ってたけど、やっぱり悲しかった。




頭の中はぐちゃぐちゃで、本当は情緒不安定だった。


けれどそれでも平常を装ったのは、宮田さんに迷惑をかけたくなかったからだ。




宮田さんに嫌がられたら、俺はきっと死んでしまう。自ら死んでしまう。

宮田さん宮田さん・・・本当に、好きなんです。


その想いをぶつける相手はもう俺の手に入らない場所にいるから、俺の胸は何時だって重かった。








そんなある日の事だった。


家の外で何やら不穏な警報のような音がした。



何事かと思って外に出れば、何故か村の様子が変わり、赤い雨が降りしきっていた。

近所の人間は、まるぜゾンビの様な見た目になり、更には俺に襲い掛かってきた。


何とか逃げおおせた俺だったけど、頭に浮かんだのは宮田さんのことだった。




宮田さん、大丈夫だろうか。


もしもこれが村全土に起こっているなら、宮田さんだって大変なはずだ。いや、もしかするとさっき襲い掛かってきた村人のように・・・




いや。考えないようにしよう。

取りあえず、宮田さんを探そう。


そう思った俺は、村の中を探索した。





時には・・・胸が痛かったが、村人を倒した。

酷いかもしれないけど、村人よりも・・・宮田さんが心配だったんだ。


村が変なことになってしばらく・・・




俺はついに、宮田さんを見つけた。



「名前さん・・・」

「宮田、さん?」


真っ白だったはずの白衣を赤く染め上げ、金槌のようなものを手にした宮田さんがそこにいた。



宮田さんは俺を見ると、真っ直ぐと俺の方に歩いて来た。




俺はそんな宮田さんに聞きたかった。

お一人ですか?とか、無事だったんですか?とか・・・




美奈さんは、どうしたんですか?・・・とか。





やっぱり俺は酷いヤツかもしれない。

だって・・・美奈さんが隣にいなくて、こんなにもほっとしているんだ。






「宮田さん、無事で良かっ――」

「今更かもしれませんが・・・」


突然宮田さんが口を開いた。


何だろうと、俺は口を噤む。






「もし、よければ・・・」





――俺を愛してくれませんか?






その言葉に俺はごくりと息を飲んだ。

この短時間で、宮田さんに何があったのかはわからない。


けれど、美奈さんが傍にいないことから、二人の関係に何らかの亀裂が入ったことは明白。



しかもこんな状況だ。宮田さんは、もしかするとだけど・・・正常な判断が出来ていないのかもしれない。



「・・・・・・」

良いのだろうか。

愛してしまって、良いのだろうか。




「・・・駄目、でしょうか」

血にまみれた身体のまま、彼がそっと俺に身を寄せる。


その行動にどきりとして、俺の手は震えながら宮田さんの背に回された。






「だ、駄目なわけないですっ・・・け、けど、宮田さんの迷惑じゃないかっ、それが心配で・・・」



あぁヤバイ、泣く。

宮田さんに迷惑がかかるんじゃないかって思うと、泣けてきた。


俺の想いは重くないかって思うと・・・






「・・・最初から、素直に貴方の愛を受け止めていれば良かった」

ぽつりと呟いた宮田さんに俺は大きく目を見開く。



「貴方なら・・・きっと、俺のことをちゃんと愛してくれたはずだから」


「ぁ、愛します、当然ですっ」




だってこんなに好きなんだ・・・




「えぇ・・・」

宮田さんが小さく笑った。



「愛してますっ、宮田さん・・・俺、凄く、凄く宮田さんのこと・・・」

「司郎、で良いですよ」


「し、司郎、さん?」

「えぇ・・・名前さん」


俺の胸がいろんなもので満たされるのを感じた。


あぁ、嬉しい嬉しい嬉しいっ・・・




俺、何でいきなりこんなに幸せなんだろう。

さっきまで村人のゾンビっぽいものに殺されかけたりしてたのに。


こんなに幸せなんだ。




あぁッ・・・




「司郎さんっ、愛してます」

「えぇ・・・貴方に愛してもらえるなら、俺も貴方を愛してます」



ちゅっと唇に合わせられたのは司郎さんの唇で、俺は顔が熱くなるのを感じた。


司郎さんはくすっと笑い「一緒に来てくれますか?」と問いかけてきた。

その問いの答えはもちろん決まってる。




こくこくと頷いた俺は司郎さんをぎゅーっと抱き締めてついつい笑った。






こころがわり






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