「・・・?」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
何なんでしょう。この状況は。
朝の教会にやってきたのは、それはそれは幼い男の子でした。
5歳?いえ、それよりも少し幼い気がします。
近くに親御さんがいる気配はない。
私の視線に笑顔で首をかしげるその子。
私は無言で彼を見詰めることしか出来ません。だった混乱してるから!!!!!!!
「ぉ、お父さんかお母さんは・・・ぃらっしゃいますか?」
声が裏返らないように気をつけながら問いかけると、その子は笑顔で首を振りました。
・・・・・・・・・・・・・私はどうすれば良いんですか、八尾さん!!!!!!!!!!!!
残念なことに、今八尾さんはいません。
こ、此処は私一人でどうにかしなくては――
「ねぇ」
「ッ!?は、はぃっ!!!!」
「おにぃーさん、ここのきゅーどーしさまぁ?」
「ぇ、えぇ。そうですよ」
私が頷くとふにゃぁっと笑ったその子。
か・・・可愛いッ・・・!!!!!!
「きゅーどーしさまぁ、だっこぉ」
「ぇ?だ、抱っこ、ですか?」
こっちに細い腕を伸ばしてくるその子に私は驚きながらも抱き上げる。
小さくて軽い・・・
可愛いっ・・・。
その子は楽しそうに腕の中で笑っている。
その姿を見てるとなんだか私まで幸せになりそうな――
「牧野さん」
「ひっ!?みみみみみみ、宮田さん!?!!!?!??!?!」
「・・・こんにちは」
「こ、こんにちは」
背後から突然声をかけてきたのは宮田さん。
な、何故宮田さんが教会に!?
「彼は私の病院の患者です。引き取りに来ました」
「えっ!そ、そうだったんですか」
慌てて宮田さんにその子を引き渡そうと・・・
ギュッ
「・・・やっ!」
その子は私に抱きついて、首を大きく振った。
「えぇ!?」
「・・・・・・」
驚く私と、あからさまに顔をしかめる宮田さん。
その子は私に抱きついたまま「きゅーどしさまといっしょが、ぃー!」と声を上げる。
かっ、可愛い・・・
もうメロメロな私に宮田さんが「何デレデレしてるんですか」と呆れたような視線を向けた。
し、仕方ないじゃないですか・・・可愛いものは可愛いんですから。
「これから検査があるんですが」
イライラとした宮田さんの声が恐ろしい。
「ぇ、ぇっと・・・検査はちゃんと受けなきゃ。ね?」
「・・・きゅーどしさまは・・・ぼくといっしょに、いたくないの?」
「!!!!!」
ズキュゥゥゥウンッ!!!!!!
・・・えぇ、聞こえましたとも。
ハートを打ち抜かれた音が!!!!←
「い、一緒に居たいです!けど、検査はちゃんと受けなきゃ駄目ですよ?検査が終ったら、また会いに来てください」
むしろ私が会いに行きます!という勢いで言えば、彼はやっとうなずいてくれた。
私からゆっくりと離れ、渋々と言った感じに宮田さんの手を取った彼は・・・
「ばいばい・・・」
可愛らしい小さな手のひらをひらひら振って、去って行った。
「・・・よし」
今度彼が来た時のために、何かお菓子でも作ってあげよう。
私はそう決心した。
リトルキラー
「あざといですね」
「・・・せんせぇー、ぼく、こどもだからなにいってるか、わかんなぁーい」
その子と手を繋ぎながら歩く宮田は小さくため息をついた。
「・・・まったく。その歳で大した役者ですよ。――病院では餓鬼大将ばりの悪餓鬼なのに、牧野さんの前ではすっかり良い子になって・・・」
「先生うっさい。ってか、そろそろ手ぇ繋ぐのやめよっか。餓鬼じゃあるまいし、ダサいし」
突然名前は豹変し、宮田の手をさっと振り払った。
「・・・牧野さんに抱っこされてましたが?」
「あの手の人は、あぁやって甘えとけば、ころっとオちてくれるんだよ。覚えとけば?せんせ」
にやっと笑って見せた名前・・・
5歳児らしからぬほどのペテン師だった。