大好きな子がいる。
同じ大学に通う子。
無口で他の生徒と関わろうとしない。
クールで格好良いって、女の子たちからの人気は高い。
けど、男の子たちからは疎まれてる。
僕も男の子ってヤツだけど、あの子のことは大好き。
「司郎くーん」
「ぁっ・・・」
大学内の中庭に設置してあるベンチに腰かけて医学書を読んでいるあの子に背後から抱きついてみた。
小さく声を上げた彼が、吃驚したような目で僕を振り返る。
僕はにこっと笑って「こんにちは」と言って見せる。
「・・・名前か」
「驚いた?」
「・・・あぁ」
小さく息をついた司郎君に「隣座るね」と言って笑う。
何時も一人で行動してるので有名な司郎君だけど、僕とは結構良好な関係を築いてくれてる。
僕は隣に腰かけるのを見て「レポートは終わったのか」と声をかけてくる司郎君につい笑ってしまう。
「何故笑うんだ」
「いや、司郎君が僕の心配してくれてるのが嬉しくて」
「・・・別に、レポートが終ったかどうかを尋ねただけだ」
「終わってないっていったら、手伝ってくれるでしょ?」
笑顔で言う僕に司郎君が呆れたような顔をした。
「・・・お気楽な頭だな」
「ポジティブなところが売りなんだ」
僕は大きく伸びをして、そのまま頭を司郎君の膝に乗せる。
「・・・おい」
「司郎君の膝、丁度良いから寝やすいんだよねー」
そう言って司郎君に笑いかけると、司郎君は呆れながらも僕を退かさずに医学書の続きを読み始めた。
僕は僕で「おやすみ」と言いながら目を閉じる。
それからどれぐらい経ったかわからないけど、目を開けたら司郎君がじっと僕を見つめていた。
「あ、ごめん。今何時?」
「・・・名前のせいで講義を一つ逃した」
「え!ホントに!?ごめん、起こしてくれれば良かったのに」
慌てて起き上がろうとする僕に「動くな」と言った司郎君。
やっぱり怒ってるよね・・・?と司郎君を見る。
けれど以外にも、その顔はいつも通り。
「・・・講義が一つつぶれたんだ。このままで良い・・・」
「ぇ、けど・・・」
「・・・どうせ、詰まらない講義だ」
ふいっと顔をそむけて行った司郎君に、僕は「そっか」と笑って再び寝の体勢に入った。
「司郎君は優しいなぁ。感謝感激」
「大げさだ」
呆れたような目で司郎君が僕を見る。
けれど僕はそれを気にせずに、にーっこりと笑った。
「僕のこと、ちゃーんと気遣ってくれるし」
「何時気遣った」
「僕のこと何も考えてないなら、僕をベンチに置き去りにして講義に行けば良いじゃん。それをしなかったのは、僕を気遣ってくれたからでしょ?僕嬉しいなぁー」
言葉を失っている司郎君に、続けざまに言う。
「司郎君のそういうとこ、僕好きだよ」
実は告白なんだけど、伝わったかな?
なんて、淡い期待を抱きながら、司郎君を見つめる。
司郎君はといえば、しばらく硬直して・・・
「っ!!!」
バッと顔を手で隠してしまった。
「司郎くーん?」
「ぅ、うるさい。今話しかけるな」
「その反応、僕のこと意識してくれてるって思ってもOK?」
「・・・・・・」
返事がない。
無言は肯定、かな?
「えへへ・・・そうだったら嬉しいな」
僕は一人満足になりながら、司郎君の膝を枕に再び目を閉じた。
次に目を開けた時、若干顔が赤い司郎君が「足が痺れたぞ、馬鹿」と僕の額を軽く叩いた。
しかも、何だかその手が優しくて、ついつい笑ってしまった。
お膝を貸して