宮田先生は優しい。
「名字さん。ちゃんと風邪予防してくださいね。何か不調があったら、すぐ俺に言ってください」
普段から俺の体調を気遣ってくれるし・・・
「あぁ血がこんなに・・・農作業に精を出すのも構いませんが、刃物を使うんですから、十分気を付けてください」
俺がつい鎌で手を切ってしまった時なんて、逆に宮田先生の方が辛そうな顔をして、俺の手を丁寧に治療してくれた。
風邪を引いたときなんて、俺が連絡するとすぐ家に来てくれて、看病までしてくれた。
宮田先生って、ほんとに良い先生だと思――
「・・・名字限定じゃないの?ソレ」
「石田・・・お前、宮田先生のこと、何一つわかってねぇな」
「いやいやいや。わかってないのは名字の方だから。もはやそれは宮田先生じゃないよ。俺の知ってる宮田先生じゃない!」
友人の石田曰く、宮田先生は全然優しくないらしい。
普段から無表情で、雰囲気と眼光が物凄く怖いそうだ。
けどそんなのウソだ。
あんなに優しいのに。
手つきも目つきも優しい。そりゃもう、見ててほっとするレベル。
「むしろ名字以外の村人全員、俺と同じ意見だと思う」
「何だとっ!?」
宮田先生、そんなに村人から誤解されてたのか!
そんなっ!だって、あんなに良い先生なのに!それを、村人に誤解されてしまうなんて・・・
「ッ、宮田先生は俺が守る!」
「え!?どうしてそういう結論に!?」
「あんなに優しい宮田先生が怖いだなんて、そんなのあるわけない!」
俺はさっと石田に背を向け「じゃ!」と言いながら走り出した。
うしろで石田が俺を呼び止めようとしているが、完全無視だ。
そのまま真っ直ぐ宮田医院に向かう俺。
「宮田先生!!!!!」
「!・・・あぁ、名字さん。今日はどうしたんですか?」
「先生は良い先生です!」
「・・・え?」
唖然とする先生の手を握り俺は真剣に言う。
「先生はすっごく優しいし、すっごく温かいし!俺、先生のこと、すーっごく大好きです!」
ほんのり頬が赤く染まっている宮田先生が「っ、名字さん・・・?」と声を上げている。
「村の人たちが誤解してるんです!俺、先生を守りますからね!」
「ぇっ?ぁ、あぁ、はい」
「まかせてください!」
にこっと笑うと、宮田先生も小さく笑った。
ほら!無表情なんかじゃない!どちらかといえば、表情豊かだ!
「名字さん」
「はい!」
「・・・俺も、名字さんのこと・・・大好きです」
小さく微笑みながら言う宮田先生に、俺は胸の奥がギュッとなった。
こ、これは・・・!
「〜〜〜っ!!!宮田先生、大好き!」
「俺もです」
俺は「好き好き!」と言いながら宮田先生を抱き締めた。
そっと俺を抱き締め返した先生。やっぱり温かい。
石田も村人も、やっぱり誤解してるな。
俺はすりすりっと宮田先生に頬擦りして、笑った。
よし!絶対に俺が誤解を解いてやる!
そう思うのはお前だけ
(優しいのは名字さんにだけですよ・・・なんて、言わない方が良いか)