「名前さん、だぁーい好き♥」
「・・・へ?」
夜中、突然チャイムが鳴って仕方なく扉を開けば、満面の笑みを浮かべて宮田先生が抱きついてきた。
何故こんな夜中に宮田先生が?
というか、宮田先生、普段とキャラ違う・・・
軽くパニックになる俺に、宮田先生が「ちゅー♥」と言いながらキスしてこようとする。
「わわっ!?み、宮田先生!な、何なんですか一体・・・って、酒臭い・・・?」
「ふふふー♥名前さん名前さん〜♥」
「ちょっ・・・く、苦しいです、先生」
物凄い力で抱きついてくる宮田先生。
とりあえず、ご近所の人に見られたらいろいろ怖いし、宮田さんを部屋の中に入れた。
にこにこにこっ
「・・・ぇ、ぇっと」
普段全然笑わない宮田先生が、今物凄く笑ってる。
はっきり言おう。
・・・怖い。
いや、笑顔が怖いんじゃなくて、そこまでにこにこしてる宮田先生が怖いんだ。
この酒臭さからして、宮田先生は確実に酔っぱらっている。
さて、どうしたものか・・・
「名前さん、だぁーい好きですよぉ♥♥」
チュッチュッとほっぺにキスされて、俺は硬直した。
慌てて俺は宮田先生の肩を掴み、バッと自分から引っぺがす。
宮田先生は不服そうな顔で「何するんです、名前さん」と言った。
あぁ、頬まで膨らませて・・・
一体俺にどうしろというんだ。
「名前さんは、俺のこと好きじゃないんですか?」
お仕事中は『私』っていうのに、何だか新鮮。
「嫌いなんですかー?」
「ぇ、ちょっ、み、宮田先生っ」
ボロボロッと泣き出してしまう宮田先生におろおろする。
あぁ、酔っぱらいの扱いなんて、慣れてないのに!
「せ、先生・・・」
とりあえず宮田先生を抱き締めれば、宮田先生が俺の胸に顔擦り付けながら鼻をすすった。
「あぁ、ほら。吸っちゃダメですよ。先生、ほらティッシュ」
「ぅ、うっ・・・」
泣いている宮田先生にティッシュを渡すと、すぐに鼻をかむ宮田先生。
とりあえず俺はその頭を撫でながら「よくできました」と言って、ティッシュをゴミ箱へ。
・・・よし。出来るだけ宮田先生を刺激しないように、やんわりと接すれば良いんだ。きっとそうだ。
「名前さんっ、名前さんっ」
「はいはい。俺、先生のこと嫌いじゃないですからねぇ」
よしよしと先生の頭を撫でれば・・・
「本当に?」
「ぇ、えぇ」
何処までも嬉しそうな顔で笑う宮田先生に、俺は何だか胸がいっぱいになる。
「名前さん、大好きっ♥」
あぁ、何だというんだ。
相手は酔っぱらい。酔っぱらいの言葉を、真に受けてどうするつもりだ。
「宮田先生・・・酔っぱらいが外出歩いちゃ、ダメですよ。もしも先生に何かあったら、皆心配します」
「・・・だれも、俺のことなんて、心配しませんよ・・・」
ググッと宮田先生が俺の胸に顔を押し付け「名前さん・・・あったかい・・・」と呟いてみせた。
あぁ、何なんだこの人は・・・
「少なくても、俺はすっごく心配します。宮田先生のこと・・・」
「ん・・・名前さんっ、ほんと?ほんとに?」
「えぇ。本当です」
俺は自然と、宮田先生のことを抱き締めていた。
酔っぱらいの言葉なのに、俺はこんなにもドキドキと・・・
馬鹿みたいかもしれないが、今俺は・・・宮田先生が愛おしくてたまらない。
「名前、さん・・・」
宮田先生が幸せそうに笑って、ゆっくり目を閉じる。
「眠たいんですか?」
「ん・・・名前さんっ」
「眠って良いですよ」
小さく笑いながら言えば、宮田先生の口元にも笑みが浮かび「は、ぃ・・・」と返事が聞こえた。
「おやすみなさい、宮田先生」
しばらく静かになったと思えば、宮田先生は俺の腕の中ですやすやと眠りについてしまった。
そんな宮田先生をなんとか抱き上げ、少し前まで俺が寝ていた布団へと下す。
ギュッと握られたままの服にちょっと笑ってしまった俺は、フワァッと欠伸。
「眠い・・・」
俺の家には、ソファーなんて小洒落たものなんてないし、布団もこれ一枚。
「・・・まぁ、良いや」
俺はこてっと宮田先生の隣に倒れこむよう寝た。
おやすみ・・・
可愛い人。
酔っ払いレジェンド
翌朝、目を覚ますと・・・
「ぇ・・・あれ?えぇ!?」
宮田先生が俺の腹の上に跨っていました。
「責任とって結婚してください」
宮田先生の目が据わっていた。
こ、怖い怖い怖いって!!!!!
「えぇぇぇぇええええッ!?せ、先生!ま、まだ酔ってるんですか!?」
「酔ってません。あんな恥ずかしい姿を見たからには、俺の傍で一生黙秘してもらいます」
あぁ、何だか先生が可愛くて仕方ない。
「このまま、既成事実をつくるのもアリですが?」
「先生だめぇぇぇぇぇええッ!!!!!!!黙ってますから降りてぇぇぇぇえええッ!!!!!!」
しばらく必死に叫んだ俺に宮田先生がやっと退いてくれた後、何故あんなに酒を飲んでしまったのかと尋ねれば・・・
「石田さんの晩酌に無理やりつき合わされました」
「わかりました。ちょっとあの馬鹿殺してきます」
「いってらっしゃい」
殺しはしないまでも、半殺しにしてやる!
その後で、その・・・
み、宮田先生といろいろお喋りしよう。