二人の子供がいた。
一人は少女。
一人は少年。
一人は目が見えない。
一人は耳が聞こえない。
だからお互いを使う。
少女は少年の目を借りる。
少年は少女の耳を借りる。
二人でやっと一人。
少女は花嫁。
少年は従者。
二人で一緒に、村の為に消えていく。
「美耶子。美耶子には、世界はどう聞こえる」
「くだらない音だ。きっと、名前が聞いている音と大差ない」
少年の問いかけに少女が答える。
「名前。名前には、世界はどう見える」
「くだらない景色だよ。きっと、美耶子が見てる景色と大差ない」
少女の問いかけに少年が答える。
「僕は美耶子かケルブがいないと、音が聞こえない」
「私は名前かケルブがいないと、景色が見えない」
お互いにそういった少年少女は、そのままゆっくりとお互いの手を握り締めた。
「「この村なんて嫌いだ」」
ゆっくりと動かされた唇は、まったく同じ言葉を紡ぐ。
「私の味方は名前だけだ」
「僕の味方は美耶子だけだ」
少女は見えない目で少年を見詰め、
少年は聞こえない耳で少女の声を聞く。
「・・・もう少しで儀式だ」
「そうすれば、私と名前は消える・・・」
「消えないで美耶子」
「消えるな名前」
何処か淋しそうな声。
「じゃぁ・・・」
「あぁ、そうだな」
「「一緒に儀式をぶち壊そうか」」
少年少女がそういった。
お互いの手を握り締めながら。
「もしそれでも駄目だったら・・・」
「最後まで一緒にいて、消えよう」
目の見えない少女。
耳の聞こえない少年。
部品が一つ欠けた二人は、お互いだけが世界だった。
欠陥だらけの双子