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心地良い風が吹いている。

鳴狐は髪を撫ぜるその風に目を細めながら、本丸に生えた大きな木の下で涼んでいた。



「おぉ、鳴狐じゃないか」

「・・・・・・」



葉の隙間から見えるきらきらした光を眺めていると聞こえた声。鳴狐はそっと視線を動かした。

見ればそこには自らの主である○○が微笑みながら立っている。



「御供はどうした?」

「・・・五虎退の虎と、遊びに行った」


「ほぉ!他の動物は苦手と言っていたが、やっと慣れてきたようだな」

はははっと笑いながら鳴狐の隣によっこいしょと腰かけた○○。鳴狐はそれを拒否するでもなく無言で受け入れた。


何か用?と目線で問えば、○○は「静かだなぁ」と見当違いの返事をする。

確かに此処は静かだ。遠くから短刀たちの笑い声が聴こえたりもするが、それ以外は時折鳥がさえずったり風が吹くばかり。





「お前の傍は静かで良いなぁ・・・賑やかなのも良いが、たまにこうやって静かな場所でゆっくりしたくなる」

「・・・・・・」


木の幹に背を預け、ふわぁっと欠伸をする○○の目の下には薄らと隈が浮かんでいた。

鳴狐には審神者の仕事がどれほど大変なのかはあまりよく理解出来なかったが、隈を作る程だ。楽ではないのだろうとは思う。


疲れているなら休ませてあげたい。鳴狐は小さな声で「・・・休んだら」と声をかけた。

○○はその言葉に目を細め「有難う」と笑った。





「鳴狐は優しいな」

「・・・・・・」

そんなことない、という意味を込めて首を振る。



「お前の傍は好きだ・・・心地良くて、穏やかな気持ちにさせてくれる」

まぁ、御供が居る時は賑やかだけどな。



そう言って○○は笑うけれど、正直鳴狐はそれどころではなかった。

お前の傍は好きだなんて、まるで告白みたいだと鳴狐は思う。





「・・・うん、まぁ、そうだな・・・鳴狐も休めと言ってくれているし、ちょっと寝ようか」

もう殆ど眠りかけているのだろう。眠たそうな顔してそう言った○○は、ゆっくりとその眼を閉じた。



主はきっと、自分のこの胸の高鳴りなど知らないのだと鳴狐は思う。

じゃなければ、こんなこと言うはずがない。自分を惑わすような言葉なんか。


一人ドキドキしていた自分をほんの少し恥じつつ、そっと○○の顔を覗き込む。

完全に眠ってしまったのか、穏やかな寝顔を浮かべた○○からは小さな寝息が聞こえ始めた。


そんな○○をじっと見つめ続けていた鳴狐は、きょろっと周囲を見渡して誰もいないことを確認するとそっと唇を動かした。






「・・・好き」

小さな小さな声で、でも確かに呟かれたその言葉。



鳴狐は恥ずかしそうに抱えた膝に顔を埋めた。







木洩れ日きらきら






数刻後目を覚ました審神者は、自分の隣で眠る鳴狐を見て穏やかに笑った。



あとがき

鳴狐はあまり喋らないから口調がなかなかわからず・・・
くッ!もっと勉強してきますっ!!!orz



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