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俺は何の取り得も無い男だった。


頭も悪いし運動もあまり出来ないし、唯一見出された才能は“審神者”とかいう訳のわからない職業への適性だった。

しかも審神者は一人きりじゃない。いろんな場所に数多くの審神者がいて、彼等と比べればやっぱり俺は何の取り得も無い男だった。


そんな無能な俺に最初の刀として選ばれたコイツは可哀相だと思う。





「・・・で、結局何が言いたいんだい」


「近々研修生がこの本丸にも来るらしい。ついて行ったらどうだ?」

名案だと手を叩いてそう言うと、歌仙があからさまに顔を顰めた。俺よりずっと顔が整っているから、顰めたって美人だ。




「それ、前の研修生が来たときも言っていたね。いい加減にしないかい?」

「歌仙が気に入る審神者はきっと来るぞ」

「気に入っている審神者ならもう目の前にいるんだけど」


美人はお世辞も上手だ。

そのお世辞に気を良くしてしまう俺も俺だな。











歌仙は初めて出会った時から良く出来たヤツだった。

俺を一目見るとにっこり微笑み「よろしく頼むよ、主」なんて言う歌仙はとてもとても美しかった。


え?俺がこの美人の主なの?と何度政府の役人やこんのすけに確認したことか。


こんな美人が自分に従ってくれるなんて、と半信半疑のままこんのすけの指示に従い歌仙を単騎出陣させ・・・俺は後悔した。

血塗れで返ってきた歌仙を見た瞬間、後悔したんだ。すまないすまないと謝りながら歌仙の手入れをして、その時俺は決心した。



・・・絶対歌仙を幸せにしてやる、と。





だが生憎、歌仙を幸せにするには俺の傍じゃ駄目だと思うんだ。

こんな何の取り得もない駄目男の隣なんて、雅な歌仙には相応しくない。


幸い何時の間にやら“ベテラン”となっていた俺のもとへは定期的に研修生が来る。

俺なんかよりずっと将来性のある研修生たちだ。俺なんかよりもずっと歌仙を幸せに出来る人材はきっといる。



まぁ、今はまだそれが見つかっていないのだが、きっと今回の研修生は歌仙も気に入る。書類に書かれていた経歴も素晴らしいし、貼りつけてあった写真に写っているのは花の髪飾りが可愛らしい可憐な少女だったから。






「歌仙、期待しててくれ。俺が絶対、お前を幸せにしてくれる審神者の元へと送り出すから」

「・・・僕には君だけだよ、主」


その言葉が嬉しくて笑ってしまう俺は、やっぱり単純だ。

けど歌仙、今回こそは大丈夫。俺、今回の研修生には今まで以上に期待してるんだ。



どうかどうか、歌仙を幸せにしてくれる審神者でありますように。

俺はまだ見ぬ研修生へと願った。







君の幸せを願う







「・・・僕はね、本当な研修生に迷惑しているんだ。僕は今の主を本気で愛しているのに、主だって僕を愛してくれているのに、なのに僕を尻の青い研修生なんかに下げ渡そうとする。研修生も研修生で主が僕を連れて行っても良いと言えば目の色を変えて僕に媚び始める。もううんざりしているんだよ。だからね、今回は先に釘を刺しておこうと思って・・・僕は死んでも主の傍を離れる気はない。君が変な気を起こそうものなら、君が37人目だ」


顔を真っ青にした可愛らしい花飾りの研修生に、歌仙はにっこりと微笑んだ。



あとがき

歌仙は異音の初期刀でもあるので、書いてて楽しかったです。
歌仙は文系ゴリラでも雅マスターでも可愛いです。可愛いよ歌仙!



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