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※この小説は『君がいなきゃ成り立たない人生』の続編です。



○○と再会してしばらく。シリウスは目の前でお茶を淹れている○○をぼんやりと眺めていた。


再会した当初はお互いそりゃもう酷い有様だった。

無精髭はもちろん、髪はぼさぼさ目の下には黒々とした隈、アズカバンにいたシリウス並みに痩せ細った身体。悪いところを上げたらきりがないが、兎に角お互いボロボロだった。


今ではほんの少し回復し、目の前の○○の顔には無精髭なんてない。髪も綺麗に整えられている。・・・まぁまだ体系は痩せたままだが。




「そんなに見詰められたら照れるなぁ。もしかして顔になんか付いてる?」

「いや。髭剃って髪整えるだけでも結構変わるなって」


その言葉にくすくす笑いながら「それは君もだけどね」と言いシリウスの目の前のカップを置く○○。紅茶の良い香りが立ち込める。

カップを手に香りを味を楽しみつつも、シリウスは少しだけ気がかりなことがあった。




○○と再会してしばらく、二人が過ごす時間のうち殆どが室内だ。良くて人里離れた森の中、薄暗く埃っぽい地下道・・・


現在逃亡中の身であるシリウスは表立った行動は出来ない。

学生の頃のように一緒に出掛けることだって注意が必要だ。





「・・・なぁ、不満じゃないか?」

その問いかけだけでシリウスの言葉の意味がわかったのだろう。○○は穏やかな笑みを浮かべて首を横に振った。


「何を不満がる必要があるんだい。僕は、こうやってシリウスが隣に立ってくれているだけでも幸せだと言うのに」

シリウスが帰ってきてくれた、それだけで十分だ。そう言わんばかりの態度の○○にシリウスは照れくさそうに笑う。



本来なら逃亡する必要のない○○までシリウスの逃亡劇に付き添っているのだ。シリウスが連れて来たバックビークなんて、ものの数日で○○に懐いた。

今いるこの部屋だって、追われる身ではない○○が逃亡先で部屋を借り、こっそりシリウスを呼び込んでいる。この逃亡が成功しているのはだいたい○○のおかげと言っても良い。



だからこそ、○○にはあまり不自由な思いをして欲しくないというのが本音だった。

不自由させてしまうのは仕方ないとしても、せめて何か気分転換になることを・・・






「あ・・・あのさ、○○・・・お前に紹介したい子がいるんだ」

「紹介したい?・・・浮気?」


「っなわけねぇだろ!ハリーだよ!ジェームズの息子!」

「はははっ、冗談だよシリウス」




そうだ、ハリーに会わせよう。確か○○は赤ん坊の頃のハリーしか見た事がない。

シリウスがアズカバンへと収容されてからは俗世との関わりと切ったと言っても過言ではなかった○○だ。きっと成長したハリーの姿なんて全く知らないだろう。



「ハリーか・・・元気にしてるかな」

「ジェームズに良く似て勇敢な子だ」


「ジェームズに良く似たなら、悪戯も心配しないとね。出会い頭に糞爆弾投げられたら怖いなぁ・・・」

「・・・リリーにも似てるから、それはねぇよ」


冗談だよ、なんて言って笑う○○にシリウスもつい吹き出して笑った。

















それから数日後、ダンブルドアの許可を取り、リーマスに手引きして貰った二人の目の前には学生時代のジェームズそっくりな少年・・・ハリー・ポッターが立っていた。



「シリウス!」

嬉しそうに声を上げてシリウスに駆け寄るハリー。シリウスも嬉しそうにハリーを抱き留めた。



「・・・あ、えっとシリウス、その人は?」

シリウスの隣に自分の知らない人間がいることに気付いたのか、ハリーは慌ててシリウスから離れた。

そんなハリーに○○は優しげな笑みを浮かべる。



「シリウスの言うとおりだ。ジェームズに良く似てる・・・あぁ、目はお母さん似だね」

初めまして、と優しく微笑む○○にハリーは肩の力を抜く。




「ハリー・・・彼は私の、その・・・」


親友の息子を前に突然大人ぶるシリウスに笑ってしまいそうになりながらも、○○は黙って事の成り行きを見守る。

どう説明したら良いかわからないのだろう。「あー」だの「うー」だの唸ったシリウスは意を決したように「よし」と頷く。




「こういう関係なんだ」




ぎゅっと手を握って見せたシリウスに、○○は声を上げて笑いハリーはぽかんとした。












「ふふっ、す、すまないね・・・ふっ・・・」

「笑い過ぎだぞ、○○」


随分長い間笑った○○をじとっとした目を向けるシリウスに「ごめんごめん」と謝りつつ、何とか笑いを抑えようと努力する。


「あー、苦しい苦しい」

「えっと・・・大丈夫ですか?」


「あぁ、大丈夫だよ。一度ツボに入るとなかなか笑いが治まらないから大変だよ」

見苦しいところを見せたね、と眉を下げる○○にハリーは「いえ」と首を振る。



「じゃぁ改めて、僕は○○。シリウスの恋人だよ」

「恋人・・・」


「変だと思う?」

「いえっ、シリウスも何だか楽しそうだし、何か・・・家族みたいで良いなって思います」

少しだけ俯くハリーにシリウスと○○は顔を見合わせる。




「何を言っているんだハリー」

「えっ?」

「そうだよ。僕とシリウスが家族なら、君だって僕等の家族さ」


ハリーが何故俯くのかわからないと言った風な様子の二人にハリーは「そ、そっか」と笑った。嬉しそうに。





「あ・・・○○さんも、その・・・父を知ってるんですか?」

「もちろんさ。学生時代よく話していたよ・・・ところでハリー、僕には敬語を使うの?僕にも、シリウスにするように気さくに話してほしいなぁ」


「う、うんっ」

照れたように笑うハリーの頭を撫でているとシリウスが少し拗ねた顔をする。○○は笑いながらシリウスの頭も撫でた。





「僕は赤ん坊の頃のハリーしか知らないから、大きくなってて吃驚したよ。本当に、ジェームズそっくり」

「学生時代から、○○とシリウスは恋人同士だったの?」


「学生時代は違ったなぁ・・・卒業の時に僕が告白したんだ。まさか受け入れて貰えるとは思ってなかったから、吃驚したよ」

顔真っ赤にしてたシリウス、可愛かったよ。なんて言う○○の脇腹をシリウスが軽く殴る。



「ハリーの前で変な事言うな」

「ごめんごめん、シリウスはハリーの前では格好付けたいんだね」


「・・・ハリー、○○のことは『○○おじさん』と呼ぶと良い。しばらく見ないうちに、思考がおっさん化したらしい」


「酷いなぁ君は・・・あぁけど、確かに格好付かないなぁ・・・昔と比べると歳も取ったし・・・ハリーから見たら、しなびたオッサンかな?」

そんなことない!とハリーは首を振る。

確かに痩せすぎているように見えるが、顔立ちはシリウスの隣に立っても見劣りしないぐらい整っていて、それにとても優しげで・・・






「すぐにロンとハーマイオニー・・・友達に自慢したいよ」

「それは嬉しいことを言ってくれるね。今度会うときは、何か美味しいものでも作ってあげよう」


「ハリー、期待して良いぞ。○○は料理が上手いからな」

「代わりにシリウスは全然できないけどね」

「スクランブルエッグなら作れるぞ」


ハリーは二人の会話にくすくすと楽しそうに笑った。







君がいて初めて完成された幸せ







シリウスのスクランブルエッグ、食べてみたいな。

ハリーのその言葉に○○は「美味し過ぎて、ハリーのほっぺが落ちるかもしれないよ」と笑った。



あとがき

シリウスって料理出来るんでしょうか。
出来たとしても、男の料理!って感じなんでしょうか。いや、意外に出来たらそれはそれで美味しい・・・
まさかこの作品で続編希望してくださるとは思ってもみませんでした!有難う御座います!



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